外伝第13話:「プロポーズの準備」
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英美里との未来を確信した治臣が、誰にも知られず最高級のプロポーズとリングの準備を水面下で完璧に進める、裏の苦労と甘い決意を描くエピソードです。最強の主人公が見せる不器用なまでの真剣な姿をお楽しみください!
西園寺グループ本社ビルの最奥にあるプライベート・ラボ。モニターの青白い光に照らされた空間で、いつものように冷徹な表情でコードを打ち込んでいた治臣の手が、ふとピタリと止まった。
画面に映し出されているのは、世界中の金融データでもサイバーテロのログでもない。都内の最高級宝飾店が保有する、世界に一つだけの特注エンゲージリングの3Dデザインデータだった。
(……これで、本当にいいのだろうか)
普段、数千億規模の買収や組織の解体、裏社会のコントロールなど、どれほど複雑で巨大なプロジェクトであっても、治臣は一瞬の迷いもなく完璧に遂行してきた。
しかし、今彼が頭を悩ませているのは、「英美里にどのような形で永遠の愛を誓うべきか」という、人生で最もパーソナルで甘美な難問だった。
妥協は一切許されない。かといって、財閥の御曹司としての過剰な権力を前面に出しすぎれば、英美里の本質的な優しさと純粋さを引かせてしまうかもしれない。
彼女が本当に心から喜び、安心できるシチュエーションとは何か。治臣は頭の中で数十通りのシミュレーションを構築し、そして全て消去した。
「……面倒なものだな。ビジネスの交渉より遥かに難易度が高い」
独りごちながらも、その口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。
彼はすでに、水面下で完璧な準備を進めていた。
星月文庫の業務スケジュールから、彼女の好みの花、記念すべき日に訪れるべきロケーションの選定、そして彼女の両親への挨拶に至るまでのすべてのリスクヘッジとスケジュール管理を、誤差一秒の狂いもなくプロトコル化していたのだ。
だが、どれほど完璧なデータを用意しても、肝心の「自分の言葉」だけはプログラムで代用することはできない。
(あの時、雨のバス停で震えていた君を救うと決めた日から、私の未来はすべて君のためにある)
治臣はマウスを動かし、リングの最終発注ボタンを押した。
数日後に届くその小さな箱には、彼の全人生と、前世からのすべての絶望を乗り越えた「真実の愛」のすべてが詰まっている。
誰にも知られず、しかし誰よりも熱い決意を胸に、治臣は次の瞬間から再び完璧な次期当主の仮面を纏い、しかしその眼差しには確かな温もりを宿して立ち上がったのだった。
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世界を裏から動かす治臣が、恋人へのプロポーズの計画には大真面目に頭を悩ませているという、人間味あふれるギャップが描かれた心温まる回となりました。
次回、外伝第14話では、本編最終話で描かれたプロポーズの夜の直後、裏で起きていた世界規模の脅威を治臣が一瞬で消し去るダークヒーローの一面が描かれます。お楽しみに!




