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外伝第10話:「広報部の日常と、小さな焼き餅」

外伝第10話をご覧いただきありがとうございます!


星月文庫にやってきた若い男性社員が英美里に親しげに話しかけたことで、治臣が無意識かつ盛大に焼き餅を焼いてしまう甘酸っぱい日常のエピソードです。最強の主人公が見せる意外な可愛らしい一面をお楽しみください!

「星月文庫」の真新しいオフィスに、軽やかな足音が響いた。

今日の本社との合同プロジェクトの打ち合わせのため、広報部の若手社員である木村が資料を抱えてやってきた。彼は明るい笑顔を浮かべると、編集長である英美里のデスクへとまっすぐ歩み寄る。


「英美里さん、次回のプロモーション企画のスケジュール案、こちらでファイナルで大丈夫ですか?」


「ありがとう、木村くん。どれどれ……うん、完璧ね。これなら予定通りに進められそう!」


英美里が嬉しそうに微笑みながら資料を受け取ると、木村は少し照れくさそうに頭を掻いた。

「いやー、英美里さんがいつも丁寧に教えてくれるおかげですよ。今度、そのお礼に美味しいコーヒーでも奢らせてくださいよ!」


その和やかなやり取りを、少し離れた応接ソファの席からじっと見つめる視線があった。

西園寺グループの次期当主として、普段はどんな巨大な敵や難題を前にしても微動だにしない治臣の眉間が、わずかに、しかしはっきりと険しく歪んでいた。


(……あの男、妙に距離が近くないか?)


ふと、治臣がソファからスッと立ち上がり、無言のまま二人の間へと歩み寄ってきた。背後から漂ってきたただならぬ冷気と圧倒的なプレッシャーに気づき、木村はピタリと動きを止めて振り返った。


「っ……、し、治臣さま……! お疲れ様です!」


木村は、グループの最高実力者である治臣の姿を認めるやいなや、青ざめて直立不動の姿勢をとった。治臣は冷ややかな、しかしどこか威圧感のある瞳で木村をじっと見据える。


「……何の用だ。広報部の仕事はそんなに暇だったか」


「い、いえ! ただ次のプロモーションの確認で……!」

「用事が済んだなら、自分の部署に戻ったらどうだ。彼女は私の妻であり、君が個人的にコーヒーを奢る必要性も、仕事以外の会話をする理由も一切ないはずだが」


低く抑えられた声には、冗談の一切混じらない本気の独占欲と冷徹な嫉妬が滲み出ていた。木村は恐怖で顔を引きつらせながら「し、失礼します……!」と叫び、脱兎のごとくオフィスから逃げ出していった。


静まり返ったオフィスで、英美里は呆れたような、しかしどこか嬉しそうな複雑な表情で治臣を見上げる。


「ちょっと、治臣さん……! 木村くんはただ後輩として挨拶してくれただけなのに、そんなに威圧しなくてもいいじゃないですか」


治臣はフッと視線を逸らし、不機嫌そうに腕を組んだ。

「……私以外の男が君に馴れ馴れしくするのは気に食わない。それの何が悪い」


普段は世界を裏から完璧にコントロールする冷酷な支配者でありながら、英美里のことになると途端に子供のような独占欲を見せる治臣。そのギャップに、英美里は思わずふき出し、彼の袖をそっと引っ張るのだった。

外伝第10話「広報部の日常と、小さな焼き餅」をお読みいただき、ありがとうございます!


冷徹なダークヒーローでありながら、英美里の前ではただの「独占欲の強い一人の男性」になってしまう治臣のギャップが描かれた癒やし回でした。


次回、外伝第11話では、グループ傘下の一社で起きたうっかりミスによる情報漏洩の危機を、治臣が驚異的なスピードで隠蔽・解決するプロフェッショナルな手腕が描かれます。お楽しみに!

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