外伝第9話:「深夜のプライベート・ラボにて」
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誰にも侵入されない完全なる城塞「プライベート・ラボ」で、コーヒーを片手に世界中のネットワークを監視・管理する治臣の孤独で静かな日常を描くエピソードです。主人公の圧倒的な強さと、その裏にある静謐な世界観をお楽しみください!
外の世界が深い夜の帳に包まれ、すべての喧騒が眠りにつく頃。西園寺グループ本社ビルの最奥、重厚なセキュリティロックに守られたプライベート・ラボには、相変わらず無機質なブルーライトだけが静かに瞬いていた。
治臣は特注のエルゴノミクスチェアに深く身を預け、淹れたてのブラジル産コーヒーがなみなみと注がれたマグカップを片手に持っていた。
正面の巨大な湾曲モニターには、世界中の金融マーケットのリアルタイム・チャート、グローバル企業のサーバー群の稼働状況、そして彼が裏で掌握している四十五社のキャッシュフローを示す幾何学的なネットワーク図が、途切れることなく流れている。
(……静かだな)
誰一人として立ち入ることを許されないこの空間は、治臣にとって世界で最も安全であり、同時に最も心地よい場所だった。
前世の記憶が蘇って以来、彼が本当に心安らぐ瞬間は、この冷徹なデジタル世界と完全に一体化している時か、あるいは英美里と過ごす穏やかな時間のどちらかしかなかった。
表向きの「西園寺の御曹司」として纏わなければならない完璧な仮面も、ここでは完全に脱ぎ捨てることができる。
ふと、モニターの一角で小さなアラートが点滅した。
それは、彼が監視しているグローバルなサイバー犯罪グループの動向を捉えたものだった。ほんの一瞬、海外の闇市場で不穏なマルウェアの売買が検知されたのだ。
「……また小賢しい真似を考える連中がいるものだ」
治臣は冷ややかに呟くと、左手の指先で軽やかにキーボードを叩き始めた。
大げさな作戦など必要ない。彼は数行のスクリプトを記述し、それを闇市場のサーバーへと送り込んだ。
それだけで、世界を揺るがしかねなかったサイバー犯罪の芽は、音もなく完全に消し去られた。巨悪の企てですら、治臣の手にかかればコーヒーを一杯飲み干す間に片付く日常の雑務にすぎない。
処理を終えた彼は、マグカップをデスクに戻し、ふと窓の外へと目を向けた。
摩天楼の向こう側に広がる東京の夜景は遠くで小さく輝いている。そのどこかに、今頃は安心して眠っている英美里がいる。
裏の支配者として世界を裏から牛耳りながら、愛する者の温もりを守るためにこの城塞に座り続ける。孤独と絶対的な力が交差するこの深夜のラボで、治臣は静かに微笑み、次のデータの海へと再び視線を戻したのだった。
外伝第9話「深夜のプライベート・ラボにて」をお読みいただき、ありがとうございます!
世界の裏側で起きる脅威をコーヒーを飲みながら一瞬で消し去る治臣の圧倒的すぎる日常が描かれました。ダークヒーローとしてのカッコよさが際立つ回となりましたね。
次回、外伝第10話では、星月文庫に出入りするようになった治臣に対し、広報部の若い男性社員が英美里に話しかけたことで、治臣が無意識に機嫌を損ねる甘酸っぱい日常が描かれます。お楽しみに!




