外伝第3話:「星月文庫の新人作家」
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星月文庫で大人気の天才新人作家の原稿遅延トラブルに対し、治臣が裏の技術を使って華麗(かつ強引)に解決へと導くエピソードです。主人公の知略がビジネスの現場でも光る瞬間をお楽しみください!
「星月文庫」の編集部に、ひときわ異様な緊張感が漂っていた。
デスクの山積みにされた資料の奥で、英美里は頭を抱えていた。
彼女が数ヶ月前に発掘した新人作家――天才的な才能を持つ一方で、極度の人間嫌いで知られる気鋭のミステリー小説家、御厨レイ。
彼の新作原稿の締め切りが刻一刻と迫っているにもかかわらず、本人は連絡すらつかない状態だったのだ。
「また連絡が取れないなんて……。このままでは今月の刊行スケジュールがすべて狂ってしまうわ」
ため息をつく英美里の背後に、いつの間にか黒いスーツを纏った治臣が静かに歩み寄っていた。彼は英美里の肩に優しく手を置き、落ち着いた声で語りかける。
「心配いらない。彼が締め切りを飛ばす理由など一つしかない。行き詰まっているか、あるいは自分の完璧主義に縛られているだけだ」
「でも治臣さん、御厨先生は編集者の出入りを一切拒絶しているんですよ。どうやって原稿を出させるんですか?」
治臣は冷徹ながらもどこか楽しげな笑みを浮かべ、ポケットからスマートフォンを取り出した。
「力づくでドアを破る必要はない。彼が今、自宅のパソコンでどのデータベースにアクセスし、どの資料を血眼になって探しているか――それさえ分かれば、動かすのは容易い」
数分前、治臣は自らの裏ネットワークと「アルカトラズ・プロトコル」の応用技術を使い、御厨の自宅のパブリックIPを特定。彼が執筆に行き詰まり、参考資料を探しているその瞬間を正確にハッキングしていた。
治臣は御厨のデスクトップに、彼が喉から手が出るほど欲していた未公開の警察犯罪データベースのアクセス権を、そっと「特別な招待状」の形式で送り込んだ。
数秒後、英美里の携帯電話が激しく震えた。
画面に表示された発信者の名を見て、英美里は目を見開く。御厨からの直接の電話だった。
『編集長……! いま、奇跡的に資料の全データが手に入った! これなら書ける、今夜中に完結させる!』
電話の向こうで興奮気味に叫ぶ作家の声を聞き、英美里は唖然としながらもホッと胸をなで下ろした。そして、目の前ですべてを裏で操っていた治臣を、呆れと尊敬が入り交じった複雑な眼で見上げる。
「治臣さん……まさか、あなたがこれを?」
「私はただ、優秀な作家の創作意欲を少し後押ししただけさ。ビジネスとは、相手の『欲しいもの』を適切なタイミングで提供することだからね」
治臣は微笑み、英美里の髪を優しく撫でた。
表の出版事業の成功の裏にも、治臣の冷徹で完璧な裏の技術力がしっかりと息づいているのだった。
外伝第3話「星月文庫の新人作家」をお読みいただき、ありがとうございます!
妻である英美里の仕事のピンチを、治臣が裏のハッキング技術でスマートに(しかし裏技的に)解決してしまう鮮やかな手口が描かれました。
次回、外伝第4話では、父・重光が息子である治臣の底知れぬ才覚と冷徹さを初めて目の当たりにした、過去の日の本当の心境に迫ります。どうぞお楽しみに!




