外伝第1話:「完璧な数字の裏側で」
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本編では語りきれなかった、治臣が築き上げた年間二十二億五千万円の裏金を管理する「完璧な資産運用システムの裏側」に迫る経済サスペンスをお届けします。圧倒的な支配力を誇る主人公のダークな一面をお楽しみください!
深夜二時。西園寺グループ本社の最奥に位置するプライベート・ラボでは、冷房の冷気が静寂を支配していた。数面並んだ湾曲モニターのブルーライトが、治臣の端正な横顔を青白く照らし出している。
画面に映し出されているのは、スイス、ケイマン諸島、シンガポールなど世界各国の金融ハブに散らばる、幾重もの匿名口座のネットワーク図だった。
複雑に絡み合うマネーフローの先端には、かつて彼が「アルカトラズ・プロトコル」で屈服させた四十五社の企業名が、暗号化されたIDとして並んでいる。
「――よし、今月のトランザクションも綺麗に分散されたな」
治臣は滑らかな指先でキーボードを叩き、自動化された資金洗浄と資産運用のスクリプトの実行完了を確認した。各社から毎月振り込まれる五千万円の「コンサルティング料」は、合計して年間二十二億五千万円。
この莫大な裏金は、そのままではただのデジタル上の数字にすぎない。しかし、彼が構築した高度な暗号資産とペーパーカンパニーの多重構造を通すことで、いかなる国の税務当局や金融庁の監査であっても、その実態を暴くことは絶対に不可能となる。
完全にクリーンな西園寺グループの正当な利益とは別に、誰にも触れられない「絶対的な盾」としての巨額の私財。前世でわずかな借金の返済に追われ、冷酷な周囲に切り捨てられて首を吊った記憶が、この堅牢な富のシステムを作り上げる原動力だった。
「お金とは、単なる欲望の道具ではない。無力だった過去の自分を殺し、二度と誰にも支配されないための『自由の座標』だ」
治臣はグラスに注がれたミネラルウォーターを一口含み、モニターの隅に表示された資産総額のグラフを冷ややかに見つめた。
その時、画面の別のウィンドウがわずかに点滅した。松岡物産を含む数社の内部ネットワークから、定期的な自動スキャンパケットが送られてきている。
彼らは、自分たちが今なお治臣の描いた掌の上で踊らされており、毎月の巨額な上納金を支払うことでしか延命できないという事実を、身を削る思いで受け入れているのだ。逆らうという選択肢は、彼らの辞書にはもう存在しない。
「忠実な犬どもめ。せいぜい真面目に働いて、私の資産を潤すがいい」
治臣は低く呟くと、マウスを操作してネットワークのログを完全に消去した。裏社会と表社会の境界線で、すべてを完璧にコントロールする支配者の夜は、まだ始まったばかりだった。
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前世のトラウマをバネにして、世界規模の金融網を裏から完全に掌握していく治臣の冷徹な手腕を描きました。表の御曹司としての顔と、裏の巨悪を牛耳る支配者としての二面性が際立つエピソードとなりました。
次回、外伝第2話では、婚約破棄され転落していく元・婚約者三月の哀れな姿が描かれます。どうぞお楽しみに!




