最終話:「星降る夜の、ふたつの誓い」
最終話をご覧いただきありがとうございます!
すべてのしがらみを断ち切った治臣が、英美里と共に新しい出版社「星月文庫」を立ち上げ、穏やかで温かな未来へと歩み出す感動のフィナーレです。前世の絶望を乗り越えた主人公が掴み取った真実の愛と幸福の結末を、ぜひ最後までお楽しみください!
旧華族との絶縁、そしてすべてのしがらみを断ち切ってから数ヶ月が過ぎた。
西園寺グループの圧倒的な権力と、裏で築き上げた巨万の富。それらを手に入れた治臣の足取りに迷いはなかったが、彼の日常は以前のような冷え切ったものではなくなっていた。
都内の静かな一角に、新しく小さな明かりが灯った。
看板に掲げられた名は「星月文庫」。かつて英美里が心から愛し、しかし経営難で潰れかけていた小さな出版社を、治臣が全面的にバックアップして再立ち上げした会社だった。
「治臣さん、見てください! 今回新しく刊行する書籍の初版分、予約だけですでに目標数を突破しました!」
「星月文庫」の真新しいオフィスの一角で、英美里は嬉しそうに一冊の校正刷りを掲げて見せた。その瞳には、かつて雨のバス停で見せた不安や怯えの色はなく、自らの夢を生きる者の確かな光が宿っている。
治臣はデスクから顔を上げ、彼女の満面の笑みを見つめた。冷徹な財閥の御曹司としての仮面を外し、彼女の前でだけは、自然と穏やかな笑みがこぼれる。
「君が妥協せずに出版し続けた結果だ。当然だろう」
「もう、すぐそうやって褒めるんですから……。でも、治臣さんが支えてくれなかったら、私、とうに諦めていました。本当に、ありがとうございます」
英美里が少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら頭を下げる。
計算や利害関係、他人の目を気にして生きることが当然だった世界において、彼女だけは純粋に一人の人間として自分に向き合い、温もりをくれた。前世の絶望と孤独のなかで凍りついていた治臣の心は、この温かな日常に触れるたび、ゆっくりと解きほぐされていなかった。
(お金や権力で守れるものは多い。だが、本当に守りたかったのは……こういう温もりだったのかもしれないな)
治臣は静かに立ち上がり、英美里の隣へと歩み寄った。外はすっかり日が暮れ、夜空には美しい星が瞬いている。
「英美里」
「はい?」
「これからの未来も、ずっと隣にいてくれるか?」
思いがけない直球の言葉に、英美里は息を呑み、そしてあふれそうなほどの幸福を湛えた涙を浮かべながら、強くうなずいた。
「はい、ずっと一緒です……!」
窓の外に広がる星空の下、かつてすべてを失い絶望の底を生きた青年は、二度目の人生で手に入れた絶対的な力と、かけがえのない真実の愛をその手にしっかりと抱きしめていた。
もう二度と迷わない。彼女と共に歩む未来こそが、彼が自らの手で掴み取った本当の「幸福」だった。
最終話「星降る夜の、ふたつの誓い」をお読みいただき、ありがとうございました!
借金地獄と絶望の死から始まった物語が、圧倒的な知略と復讐を経て、最後には温かな愛と絆にたどり着く形となりました。冷徹なダークヒーローでありながら、英美里の前だけで見せる治臣の優しい表情に癒やしていただけたなら幸いです。




