第11話:「忍び寄る悪意と、零れ落ちる涙」
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英美里の前に現れた嫉妬に狂う婚約者・三月。彼女の冷酷な言葉によって、英美里は深く傷つき涙を流します。しかし、その裏で治臣の逆鱗に触れた瞬間、物語は一気に加速していきます。激動の展開をお楽しみください!
西園寺グループ本社ビルから少し離れた静かなカフェ。午後の柔らかい日差しが差し込む窓際の席で、英美里は目の前に立つ人物を見て息を呑んでいた。
そこにいたのは、洗練された高級ブランドのスーツを纏い、冷ややかな美貌を歪ませた三月だった。彼女は音を立てずにカップをソーサーに置くと、氷のように冷たい視線を英美里の顔に突き刺した。
「あなたが、最近治臣さまのまわりをうろついている広報部の平社員、英美里さんね」
「あ……あの、私は……」
唐突な呼び出しに戸惑う英美里に対し、三月は容赦なく言葉を重ねた。その声音には、隠しきれない敵意と見下すような響きが満ちている。
「身の程をわきまえなさい。治臣さまは西園寺家の次期当主であり、私の婚約者よ。あなたのような、どこの馬の骨ともわからない女が釣り合う相手じゃないわ。ただの『気まぐれな優しさ』を本気にしたのかしら? みじめね」
突きつけられた言葉は、英美里の胸に深く突き刺さった。治臣が自分に優しくしてくれたこと、そして一緒に過ごす時間がどれほど大切だったか。
自分と彼の間に横たわる身分の壁は、他でもない三月という「正規の婚約者」によって残酷なまでに突きつけられたのだ。
「私は……ただ、治臣さんとお仕事を……」
「言い訳はいらないわ。これ以上、彼の前に関わらないことね。もしこれ以上コソコソと近づくようなら、この会社にいられなくしてあげるわよ」
三月は冷ややかな笑みを残すと、英美里の返答すら待たずに席を立ち、優雅な足取りでカフェを去っていった。
残された英美里の目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。彼女の言う通りだ。自分が西園寺の御曹司の傍にいることなど、分不相応な夢物語にすぎなかったのだ。英美里は震える手でカップを握りしめ、深くうなだれた。
その頃、西園寺グループのプライベート・ラボ。
いつも通りモニターに向かっていた治臣の胸騒ぎは、異常なまでの強さで彼の神経を逆撫でしていた。
(……なぜだ、胸が落ち着かない)
ふと、英美里のデスクトップに仕込んでおいた安否確認用の端末が、微かなエラー信号を伝えているのに気づいた。治臣の瞳の色が変わる。彼は瞬時に社内の監視カメラネットワークと位置情報をハッキングし、数分前に英美里が近くのカフェで三月と接触していた事実を突き止めた。
モニターに映し出された、三月に冷酷な言葉を浴びせられ、一人で涙を流す英美里の姿。
治臣の中で、冷え切っていたはずの理性のタガが、音を立てて外れた。
「……よくも、英美里に手を出しやがったな」
前世で大切なものをすべて奪われた絶望の記憶と、今の彼女を傷つけられた怒りが混ざり合い、治臣の纏う空気が凍てつくような殺気を帯びる。
もはや、形式だけの婚約関係を続ける必要など微塵もなかった。治臣は立ち上がり、冷徹な復讐と、すべての呪縛を断ち切るための最終決戦へと動き出した。
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英美里を泣かせた三月の傲慢さと、それを知った治臣のブチギレ具合が描かれた緊迫の回となりました。冷徹な仮面を剥ぎ取られた治臣が次にとる行動とは――?
次回、第12話では、いよいよ治臣が三月との婚約破棄、そして彼女の背後にある旧華族の不正を暴く容赦のない断罪劇が幕を開けます。どうぞお楽しみに!




