2.魔法とざわつき
「今日は講義もないし、久しぶりにゆっくり研究ができる」
今日は、剣術学科の生徒が王都の騎士団に遠征練習に行ってるので講義はない。ワーグナーは、恐らく騎士団長のシアーゼと交流を持ちたいのだろう。他の先生も生徒も、なんなら学園長ですら乗り気ではなかったが、ワーグナーが半分独断で強行したようだ。
だがそんなこと私には関係ないので、魔法の研究に専念させてもらう。
私は、学生時代に書いた論文が大きく評価され、それなりの資金を提供させてもらっている。
’’魔法発動とエネルギー利用の関係について’’
これが私の書いた論文。
魔法を発動するのに消費しているものはなにか。火を操り、岩を操り風を操りするのに何のエネルギーも必要にしないのならば、魔族は際限なく魔法を連発し簡単に人類は滅んでいるはずである。しかしそうはなっていない。
つまり、魔法を使うのにも様々な条件があるのだろうという考察が魔法学では基本にある。
私はとある魔族との戦闘現場を訪れた際、戦いとは別に樹木が枯れたりしているのを発見した。その戦いで生き残った兵士から話を聞くと、魔族は一度強力な風魔法を使い、その後姿を消したという。
明らかに魔法で傷ついたものではなかった。そこから私が導き記した論文は魔族が魔法を使うのには自然界に存在する我々人間がまだ発見できていないエネルギーを用いていること。そして恐らくそのエネルギーは植物なども保持している。今回の魔族は魔法を使う時に木からエネルギーを吸収した。そのエネルギーは植物が自身を構成するうえで必要なエネルギーであるということ。
不確定要素の多い論文だったが、魔法学自体が不確定で正解が分からない問題が多い学問であるため、魔法のエネルギー論に関しては私が第一人者ということになった。
なんて、たまたま書いた論文がうまく評価されてしまい、そのあと根も葉もない噂が独り歩きしだした。最終的には稀代の天才なんてあだ名まで付いてしまった。
魔法学には不確定な要素が山のように存在し、魔法を使うにはまだまだ調べて確定させなければいけないものが多く存在する。
そして私には一つの確信がある。それは、このまま研究室に閉じこもって研究していても恐らくこれ以上の魔法学の発展は望めないということ。そもそも、魔法学を研究している人間はとても少ない。そして、その中でも私ほど魔法学を熱心に研究している人間はそうそういないだろう。
ここには、たしかに多くの戦闘データが届くが所詮それは臨場感のないデータであり、そこからさらに深く研究したいとなれば自分自身が魔族と近い場所に行くしかない。
ただ、そんな事は数年前から分かっていた。けれど、いまだ安全なここに留まっているのは単純に勇気がないからだ。魔法が好きと言いながら、魔法に近い場所に近づけば近づくほど死にも近づく......その事を私は痛いほど理解している。
だからこそ昨日のヤング先生が言っていた「自分の足で」という言葉にうしろめたさを感じたんだと思う。
’’冒険者’’
近年、魔物被害が増加してきているため大陸規模で募集している職業。自分の腕っぷしのみで収入を稼ぐ。その仕事内容は、魔物討伐から街の掃除など様々。もちろん、仕事によって得られる収入もさっぱり違う。
そして何より、冒険者は場所を選ばない。今や、大陸中で冒険者という職業が普及し依頼は様々な国や街、果てには未開の地までもが含まれる。
冒険者が主に仕事としているのは魔物の討伐。魔物は魔族と違い知能が低い。魔族は基本的に人型をしていて魔法を使うのに対し、魔族には様々な姿がある。犬や狼などの動物のような姿をしているものもいれば、ゴブリンやオークなど比較的人型に近い姿の魔物も存在する。
冒険者になれば、魔族と戦えるかもしれない。冒険者になって冒険を続ければ魔法に関するヒントが得られるかもしれない。そう考えれば、冒険者という職業は魔法研究をするのにうってつけだろう。
だが、私は研究者であり戦いの術をしらない。これまでもずっと理系の学科で勉強してきて剣術などはからっきしである。
冒険者という仕事は自分の腕っぷしで戦えるのが大前提。私など、その日の日銭すら稼げないだろう。
だからといって、このまま比較的若い時間を研究室で費やすのはもったいなさすぎる。
「しょうがない。乗り気じゃないがあいつに相談してみるか」




