第6話:朽ちた床下に眠る秘密
#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス
名頃の空が血のような赤色に染まり始めた頃、無月江戸は屋敷へと戻った。道端の案山子たちは、昼間よりも「生きて」いるように見えた。数体の位置は数センチほど動き、まるで江戸の影を追いかけるのをやめた直後のようだった。
屋敷に着くと、江戸はすぐには休まなかった。彼は階段の下にある、錆びついた鎖で固く閉ざされた小さな地下室へと向かった。
「ついてくるな」江戸は振り返らずに言った。
彼の背後、天井から長い黒髪が垂れ下がっていた。伽椰子がゆっくりと降りてくる。その身体はバキバキと骨が砕ける音を立てていた。だが、今回は襲ってこなかった。彼女は江戸の隣に着地すると、青白く冷たい手で江戸の腰を抱き、割れた頭を少年の肩に預けた。
江戸はそれを許した。いつもは燃えるように熱い伽椰子の呪いのオーラが、今は守護的な氷の抱擁のように感じられた。
「カ、ハ……ハ……(ハイッテハ……ダメ……)」伽椰子が、胸を締め付けるような掠れた声で囁いた。
「父さんがここに何を隠したのか、知る必要がある」江戸は淡々と答えた。
黒鉄の血を通わせた指先が触れると、鉄の鎖はガラスのように粉々に砕け散った。江戸は重い木の扉を押し開けた。
鼻を突く強烈な腐臭――古い死体と保存用化学薬品が混ざり合った臭いが立ち込める。湿った地下室の中には、作りかけの数十体の案山子に囲まれた古い手術台があった。
だが、江戸の目を引いたのはそれではない。部屋の中央に、黒ずんだ御札で覆われた巨大な姿見が置かれていた。
伽椰子が突如として激しく呻いた。彼女は江戸への抱擁を解き、鏡に向かって猛スピードで這い寄ると、折れた爪でその表面を掻きむしろうとした。彼女はひどく動揺しており、まるでその鏡が自分の牢獄であり、苦しみの源であるかのようだった。
江戸が近づく。鏡の枠に父の筆跡を見つけた。
『無月の血は封じ、黒鉄の血は断つ。もしそれが目覚めれば、魂を闇に捧げよ』
突如、鏡の表面が水面のように波打った。反射の中に、江戸に似た男の姿が現れた。だが、その瞳は完全に白濁している。その影が鏡の中から手を伸ばし、江戸の首を掴もうとした。
「江戸くん!」
伽椰子が叫んだ。それは、彼女が長い沈黙を破って発した最初の「人間の声」だった。恐ろしい速さで伽椰子が江戸の前に飛び出す。彼女は鏡の中から伸びた手が、自分の死んだ胸を貫くのを許した。江戸を守るために。
黒い返り血が江戸の顔に飛び散った。
江戸の目が細められた。冷徹な顔に、初めて感情の閃きが宿る。――怒りだ。
「僕の『盾』に、よくも触れたな」江戸が囁いた。
江戸の右腕の脈が浮き上がり、濃厚な深紫色の光を放つ。彼は鏡から伸びた手を、コンクリートをも粉砕する力で掴み取った。
彼の中の無月と黒鉄の血がついに同時に共鳴した。地下室が激しく震える。江戸の霊圧が爆発し、周囲の案山子たちが塵となって崩れ始めた。
江戸は鏡の中の影を強引に引きずり出した。その間、伽椰子は江戸の足にしがみつき、恐怖と崇拝、そして深い執着が混ざり合った瞳で彼を見上げていた。
その夜、名頃で数十年間封印されていた何かが解き放たれた。そして江戸は悟った。真の敵はこの屋敷に住む幽霊などではなく、自分の家族が背負った血塗られた歴史なのだということを。




