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第5話:死を呼び覚ます接触

#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス

 休み時間を告げる鐘が、不協和音を奏でて鳴り響いた。まるで鐘の鉄そのものが呪いによって錆びついているかのようだ。無月(むげつ)江戸(えど)は席に座ったまま、複雑な魔術図形がびっしりと書かれた父の古い手帳を開いていた。


 先ほどまで怯えていた三人の人間の生徒たちが、今はひそひそと囁き合っている。好奇心が恐怖を上回り始めたようだ。その中の一人、顔に不気味な痣があるケンジという少年が、意を決して近づいてきた。


「おい、無月くん」ケンジが震える声で話しかけた。「あんた……インドネシアからの転校生なんだろ? なんでこんな呪われた村に戻ってきたんだ? ここには未来なんてないぜ」


江戸は顔を上げず、指先で手帳をめくり続ける。「両親の家に帰ってきただけだ」


「あの屋敷は……あの屋敷は普通じゃない!」短髪の女子生徒、ミオが言葉を遮った。「うちの親が言ってたわ。あそこに住む者は、最後には案山子になるって。あんた、感じないの? あの家に漂う死の臭いを」


 江戸の手が止まった。彼は静かに手帳を閉じた。その小さな「パタン」という音が、三人を変に怯えさせた。


「その臭いは、僕の邪魔にはならない」江戸は冷淡に答えた。


 無視されたことで自尊心を傷つけられたケンジは、友人同士でよくやるように、江戸の肩に手を置こうとした――だが、ここではそれは致命的な過ちだった。


「聞けよ、俺たちはただ警告してやってるだけ――」


 ケンジの肌が江戸の制服の布地に触れた瞬間、何かが起きた。


 ――バチッ!


室温が一気に氷点下まで急降下した。ケンジは目を見開いた。制服の下に人間の肌を感じる代わりに、底なしの深い井戸の表面に触れたような感覚に襲われたのだ。


 ケンジの視界が突如として暗転し、江戸の背中から数千もの小さな黒い手が溢れ出し、自分の腕に這い上がってくるのが見えた。そして教室の隅では、静止していた案山子たちが一斉に大きく口を開け、頭の中にしか響かない高い悲鳴を上げた。


「あ……あああああぁぁぁ!」


 ケンジは尻餅をつき、突如として青白く変色した自分の腕を抑えた。まるで全身の体温を一瞬で吸い取られたかのようだった。


「許可なく僕に触れるな」


 江戸が言った。彼の瞳は今、鋭い銀色に輝いている――黒鉄(くろがね)の血が身体接触に反応し始めたのだ。


 ミオともう一人の女子生徒が短く悲鳴を上げた。彼女たちは、教室の壁に映る江戸の影が変貌するのを見た。その影はもはや江戸の形を追わず、長く垂れ下がった髪をなびかせて直立していた――江戸の背後に立つ伽椰子(かやこ)のシルエットそのものだった。


 伽椰子が刹那、姿を現した。青白い手が背後から江戸の首に巻き付き、白目だけの瞳で三人の生徒を凝視した。彼女の存在は、江戸が何者にも冒されない守護下にあることを示していた。


「失せろ」江戸が命じた。


 二度言われる必要はなかった。ケンジは這うようにして逃げ出し、ミオたちを連れて教室を飛び出していった。彼らは一つの恐ろしい事実に気づいた。無月江戸は単なる「幽霊屋敷の住人」ではない。彼は、名頃に存在するあらゆる闇の中心なのだ。


 江戸は再び手帳を開いた。溜息をつく。教室の隅、教卓に座っていた教師の案山子が、ゆっくりと首を江戸の方へ向けた。そして案山子の手がぎこちなく動き、鋭い爪で木の机に文字を刻み込んだ。


『――オカエリナサイ、若様。』


 江戸は無表情にその文字を一瞥した。「騒がしいな」


 彼は埃を払うかのように、手のひらでその文字を消し去った。


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