第13話:影の玉座の下に響く陰陽師の慟哭
#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス
無月家の庭は、今や地獄の法廷と化していた。壁に追い詰められた草薙小百合は喘ぐことしかできず、無月江戸は、伽椰子の無数の青白い手によって運ばれた古い木製の椅子に悠然と腰掛けていた。
江戸の隣には伽椰子が寄り添い、冷酷な眼差しを草薙兄妹に向けている。
――カチャ。
草薙新が意識を取り戻した。粉砕された足から激痛が走る。目を開けた彼が最初に見たのは、正気を疑うような光景だった。血に染まった妹の小百合、そして宿敵である江戸が、日本で最も恐れられる怨霊と共に自分を見下ろしている姿だ。
「ようやく起きたか、光のクズが」
江戸の声が静寂を切り裂く。冷酷で、鋭い。
「き、貴様……この怪物め……小百合を放せ!」
新は這い寄ろうとしたが、伽椰子の黒髪が瞬時に伸びて彼の首を締め上げ、江戸の足元まで引きずり戻した。
「助けてくれ……頼む……許してくれ……」
新はむせび泣き始めた。伽椰子の怨念と完璧に融合した無月の霊圧を感じ、エリート陰陽師としてのプライドは一瞬で崩れ去った。「俺たちはただの命令に……草薙クランは単なる道具に過ぎないんだ……」
江戸は身を屈め、新が自分の目を見るようにその髪を掴み上げた。
「道具? なら、お前らの高貴なクランは、どこの誰が飼っている犬だ?」
伽椰子が新を嘲笑う。涙と鼻水にまみれた新の顔に、底知れぬ恐怖が広がる。
「江戸くん……この男の舌を引き抜いてもいい? 命乞いの声が耳障りだわ」
伽椰子が、おぞましい声で囁いた。
江戸は冷たい目で新を見つめた。「少し待て。まずはこいつに喋らせよう。その後に、好きにすればいい」
その光景を見せつけられ、新は絶望に目を閉じた。
「お前の父親は……他人に裏切られたんじゃない……。草薙クランは、日本の無月家の長老たちと共謀して、インドネシアでお前の両親を抹殺したんだ! 彼らはお前が今持っている、その覚醒の力を恐れていたんだ!」
江戸が沈黙した。新の髪を掴む手に力がこもる。
「つまり……僕の親族こそが、両親の死を望んだということか?」
江戸の低い声が、屋敷の窓ガラスを震わせた。
「そ、そうだ……彼らがお前の父親を罠に嵌めた……あいつは『滅びの種』を運んでいると言って……」新は血の混じった涙を流しながら訴えた。「頼む、助けてくれ……俺たちはただ、お前が名頃に二度と戻らないように見張れと言われていただけなんだ!」
江戸は掴んでいた髪を放し、新の頭を地面に叩きつけた。彼は名頃の暗い夜空を見上げる。
「そうか。なら、あのクランすべてが僕の敵だ」
江戸は伽椰子を見やり、復讐を予感させる薄い笑みを浮かべた。「伽椰子、これからの都会への旅には、たくさんの『標的』が用意されていそうだ」
伽椰子は低く笑った。新の総毛を立たせるような、美しくも残酷な笑い声だった。
「どこまでもついていくわ、江戸くん……あの連中の世界を、すべて焼き尽くすまで」




