第12話:王の逆鱗に触れた侮辱
#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス
古びた家屋の障子がゆっくりと開き、底冷えする黒い霧が溢れ出した。無月江戸が一歩外へ踏み出す。彼は一人ではなかった。その右手は、傍らに凛と立つ伽椰子の指を固く握りしめていた。白い装束を纏う彼女の姿は、おぞましくも、どこか幻想的な花嫁のようだった。
草薙小百合は釘付けになった。心臓が激しく鼓動する。これほどまでに異様で、同時に圧倒的な光景を彼女は見たことがなかった。
「兄さんを放しなさい、無月江戸!」小百合は叫んだ。震える声を必死に抑えつける。「呪いと共にあるなんて……正気じゃないわ!」
江戸は答えなかった。代わりに伽椰子を自分の側に寄せ、小百合の目の前で強い絆を見せつけた。伽椰子は江戸に寄り添い、冷ややかな眼差しで小百合を見つめた。
「僕たちの結びつきは、君たちのクランには理解できないだろう」江戸は淡々と告げた。その態度は小百合に強い拒絶感と恐怖を抱かせた。
「許せない……! あなたたちを止めてみせる!」
小百合は自制心を失い、背負っていた木箱から『草薙の封印鏡』を取り出した。「天なる光よ、闇を焼き尽くせ! 『天照の光』!」
鏡から放たれた眩い白光の奔流が、伽椰子を狙って放たれた。しかし、江戸が前に踏み出し、片手をかざすだけでその光を遮った。彼の血脈が共鳴し、紫色の結界を展開する。聖なる光は、その結界に吸い込まれるように消えてしまった。
「僕の守るべき者に、何をするつもりだ?」江戸の声が重く響き、名頃の地を震わせた。
江戸の怒りが、凄まじい力を引き起こした。彼の足元の影が広がり、庭全体を飲み込んでいく。影の中から無数の手が現れ、それぞれが黒い剣を構えていた。
「江戸くん、この子をどうする?」伽椰子が囁いた。小百合にはそれが死の宣告のように聞こえた。
「好きにしろ。だが、真実を語るまでは逃がすな」江戸は静かに答えた。
戦いは圧倒的だった。小百合は術を唱えようとしたが、影の力に抗えず、瞬く間に拘束された。彼女は壁際まで追い詰められ、身動きを封じられた。
江戸は歩み寄り、苦しげな表情の小百合の前に立った。伽椰子もまた、冷酷な眼差しで彼女を見下ろしている。
「さあ」江戸は強い口調で問い詰めた。「父さんのことを話せ。隠し事は許さない。君が真実を語るまで、この影からは逃れられないぞ」
小百合は江戸の瞳を見た。そこにはもはや慈悲はなく、冷徹な銀色の光が宿っていた。江戸の背後では、村の案山子たちが静かに立ち並び、彼女を監視していた。
重苦しい静寂が村を包む。無月家の巨大な秘密が、ついに暴かれようとしていた。




