第11話:赤い糸の影に潜む愛の巣
#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス
固く閉ざされた屋根裏部屋の中では、世界は二人だけのものだった。伽椰子の長い黒髪は部屋全体を繭のように包み込み、外界の音を遮断する静寂な空間を作り上げていた。
江戸は伽椰子の傍らで目を覚ました。冷たくもどこか懐かしい空気が彼を包み込んでいる。
「起きたのですか?」
伽椰子が静かに囁いた。その声にはかつての恐ろしい響きはなく、穏やかな響きを帯びていた。彼女は青白い指で江戸の頬に触れる。
江戸はその手を見つめ、静かに答えた。「お前がそばにいるなら、外の世界などもう必要ない」
伽椰子は満足そうに微笑んだ。その瞳には深い執着が宿っている。彼女の長い髪がカーテンのように二人を包み込み、この世のものとは思えない絆を深めていく。
「あなたのすべては私のものです、江戸くん」伽椰子が告げる。「私たちを邪魔する者は、決して許しません」
江戸は彼女をしっかりと受け止め、その存在を確かめるように抱き寄せた。「もし誰かがお前を連れ去ろうとするなら、僕はどんな犠牲を払ってでも阻止してみせる。お前こそが、僕の闇を照らす存在だ」
その時、静寂を破るように屋敷の外の空気が震えた。
――チリン、チリン、チリン!
村の入り口から、鋭い鈴の音が響き渡る。赤と黒の巫女装束を纏った若い女が、迷いのない足取りで現れた。背中には呪符で固く封印された大きな木箱を背負っている。
彼女の名は草薙小百合。新よりも遥かに鋭い霊感を持つ、彼の妹だった。
「新兄さん、どこ?」小百合が叫ぶ。彼女の視線は、村の案山子たちが一斉に頭を垂れている一軒の屋敷へと向けられた。
小百合は無月家の無残な庭の前で立ち止まった。倒れている兄の姿に驚愕しながらも、彼女の感覚は屋敷を覆う禍々しくも美しい紫のオーラを捉えていた。
「無月の血筋が、禁忌の力と一つになったというの……」小百合は戦慄しながらも、その光景に目を奪われた。
部屋の中で、江戸は外の気配を敏感に察知した。
「新しい客が来たようだ」江戸が冷たく言い放つ。
伽椰子は江戸を離そうとせず、背後から彼を包み込むようにして扉を睨みつけた。その瞳は再び鋭い赤色に染まっている。
「江戸くん、行かないで……私が終わらせてきます」
江戸は彼女を落ち着かせるように優しく応じた。「待つんだ。彼女には聞きたいことがある。父の遺した秘密を解き明かすまでは、まだ遊ばせるわけにはいかない」
江戸は立ち上がり、伽椰子と共に扉へと歩み出した。変異した愛の力を背負い、新たな侵入者を迎え撃つために。




