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第27話 戦力増強

毎日正午の更新を頑張っています!


読んでくださる人が増えるよう、SNS等でのご紹介がいただけたら幸いです。

落成なったばかりの新離宮『川辺の離宮ヴィラ・フルミニア』の謁見の間は、真新しい白大理石のような硬化石の香りと、若い騎士たちが放つ独特の緊張感に包まれていた。


「──汝を大公国、騎士爵に叙する。子々孫々にわたり、我が藩屛はんぺいとなりて土地を治めよ」


「はっ! この命、大公殿下に捧げます!」


剣を若い騎士の肩に当て、叙爵の儀式を進めていく。

大公国を本格的に開拓し、確固たる国家として機能させていくためには、俺と強固な主従関係を結んだ「領地貴族」の存在がどうしても欠かせない。


今回の帝都滞在において、俺は主に『世界樹派』の貴族たちと熱心に交流を持っていた。そして彼らの実家のうち、家を継げない次男坊以下の、いわゆる「余り物」を家臣として積極的に迎え入れることにしたのだ。


一代限りの近衛貴族とは違い、領地貴族には世代を超えて大公国の地を治めてもらう必要がある。となれば、必然的に一定水準の教養や、いざという時に動かせる独自の家臣団をあらかじめ抱えている者でなければ務まらない。


その点、貴族家の次男坊以下なら申し分なかった。彼らは子供の頃から実家で一流の貴族教育を受けているし、譜代の家臣や、有能な側近を個人的に引き連れてくる場合が多いからだ。


ちなみに世界樹派は、帝国元老院においては全体の二割に満たない少数派だ。だが、主流派におもねる必要のない独自の背景を持つからこそ、あえて俺に好意的な態度を示してくれる者が多く、しかもその大半が歴史ある有力諸侯だった。


彼らに与える爵位は、当面は騎士爵が基本となる。だが、原則として彼らの「実家の家格」が反映されるため、帝国の貴族社会の秩序をいたずらに破壊せずに済む、という政治的なメリットもあった。主流派の貴族たちも、これなら文句のつけようがない。


もちろん、中には実家の家柄を笠に着て、自分を偉いと勘違いしている鼻持ちならないボンボンも混ざっていた。そういった輩には、今後の活躍を心からお祈りしつつ、丁重にお帰りいただいている。俺の国に、アホは必要ない。


―――儀式を終えた俺は、窓の外を眺めながら思考を巡らせる。

来年の秋には、南方への出征が予定されている。それまでに、大公国としての軍勢を整えておく必要があった。


そのため、採用した騎士たちの根性を叩き直すべく、彼らをもれなくナルセス将軍のブートキャンプへと送り込んでいる。どんなもやしっ子でも、あの鬼将軍に半年もしごかれれば、前線で使い物になる立派な戦力へと生まれ変わるだろう。


「ルシウス様、ナルセス将軍から報告書が届いているっす」


控えていたルークが羊皮紙を差し出してきた。目を通すと、思わず笑みがこぼれる。

どうやら獣人の少年、サリウスは相当に筋がいいらしく、早くも将軍から免許皆伝を言い渡されつつあるようだ。最近では近衛騎士としての戦闘技術だけでなく、戦場における兵法の手ほどきまで受けているらしい。


さらに面白いことに、サリウスは短いスラム生活の間に、その実力で若者たちの間でかなりの存在感を示していたようだ。今や彼を慕うスラム出身の若者たちが、「飯が食える」という動機も手伝ってか、大挙して志願してきているという。


『貴族の甘ちゃんどもをこねくり回すより、腹をすかせた野良犬を鍛える方がよっぽど楽しい』


報告書の最後には、ナルセス将軍のそんな嬉しそうな──いや、他の若者にとっては絶望的な一文が添えられていた。


「騎士団の編成が済み次第、開拓の速度を加速しないといけないね。ルークも頼んだよ」


「お任せあれっす、ルシウス様! ファビウス侯爵領の開拓もガンガン進めるっすよ」


近衛騎士団の編成に合わせて、侯爵軍の構築を進めているルークは、自身の領地開拓も必要になる。来年には、大公国軍は、近衛騎士団と諸侯軍を合わせて十分な規模の軍勢を整えることになるだろう。


俺の魔法は特殊だ。大公国において、魔法使いはいくさのためだけの存在ではない。彼らは前線に立つ貴族であると同時に、工兵隊であり、農地整備の担い手でもあるのだ。


大公国の場合、開拓を進めていく上で主役となるのは農民ではない。貴族だ。

貴族は、俺から叙爵を受けることで、俺が創造した『農地整備』や『地盤改良』、『道路敷設』といったインフラ魔法が行使できるようになる。これらの魔法があるからこそ、今まで誰もなしえなかった大森林盆地の開拓に成功したと言えるだろう。


逆に、だからこそ領地貴族を増やすことが重要であり、彼らが軟弱者では困るのだ。若い貴族のボンボンには過酷かもしれないが、魔境の開拓を押し進めるためにも、ナルセス将軍のブートキャンプにはどうしても耐えてもらう必要があった。


俺は、軍の維持にかかる経費を計算しながら、彼らをさらなる過酷な訓練に投入すべく、将軍への返信をしたためるのであった。

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