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追放皇子の辺境都市計画~『箱職人』は魔法×現代工学で異世界に物流革命を起こします~  作者: 不健康法師
第1章 追放されたので、まずは最強の港湾都市を造ります
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第2話 帝国の道路事情

(ガタゴト、ガタゴト)


帝都を囲む、これでもかと頑強にそびえ立つ白亜の城門をくぐり抜けた瞬間、お尻の下から容赦ない振動が伝わってきた。


「──痛っ。……いやー、さすが帝都の外。門を数十メートル出ただけで、路面状況が完全に崩壊してやがるな」


俺は、激しく上下に揺れる御者台で、手綱を握る男の横顔を見て笑った。


「そう文句を言わないでくださいよ, ルシウス様。これでも一応、帝国が誇る『第一級執政官道路』なんですから。単に、ここ数十年ろくに補修予算が下りてないだけです」


呆れたように白い歯を見せて笑ったのは、俺の唯一の従者であり、乳母兄弟でもあるエルフ──ルーク・ファビウスだ。


エルフ貴族の次男坊であるルークは、俺とほぼ同時期に生まれた。俺の方が半年ほど早く生まれたので、立場上は主従だが、中身は気心の知れた悪友に近い。地頭は良いのだが、ノリが体育会系というか、どこか抜けたところがある憎めない奴だ。


通常、一般のエルフの寿命は三百年。だが、ハイエルフを通じて世界樹の加護を授かることができれば、その寿命は倍の六百年近くまで跳ね上がる。これは人間も同様だ。帝国の支配階級がその長寿の切符システムをどう握っているかはさておき──。


だからこそ、ルークは俺の追放劇が決まった際、他の貴族たちが憐れみの目を向ける中で、「大公国の第一号の家臣になれば、俺の寿命も倍っすね!」と笑って付いてきた。


「しかし、支度金として金貨を積んでくれたのはいいですが、あてがわれたのがこのボロ馬車一台とは、摂政殿下も徹底していますね。カシウス殿下なんて、門の陰からめちゃくちゃ嬉しそうに俺たちのこと見送ってましたよ」


「ああ、カシウス兄上な。式典中に私語をして、ティベリウス兄上に叱られてたな。まあ、泳がせておけばいいさ」


俺は馬車の荷台を振り返る。

中には、最低限の旅の道具と、いくつかの木箱。そして国庫から支払われた、大公国の初期予算である金貨の袋が詰まっている。


目的地である『大森林盆地』までは、ここから約二ヶ月の旅路だ。


俺たちがいるこの大陸は、前世のアフリカ大陸をさらに二回りほど大きくしたような超大陸だ。そこにオーストラリアサイズの大陸が衝突して亜大陸化したところに帝国の版図は広がっている。その大地の激突によって隆起したのが、大陸を縦断するヒマラヤ級の大山脈──全長三千キロ、幅にして二百キロから四百キロにおよぶ、世界の障壁である。


俺たちの目指す盆地は、まさにその大山脈のど真ん中に位置している。

太古の昔、山脈へ巨大な隕石が落下したことで、直径二百キロメートルもの巨大なクレーター盆地が形成された。そこが今の『大森林盆地』だ。山脈を真っ二つに割るように存在するその盆地は、もし開拓できれば、山脈の向こう側へと抜ける唯一の巨大なバイパスになる。


その盆地から流れ出る河川は、魔力を大量に含んでいるため、帝国を潤す豊穣の源泉となっている。だが、源流である盆地に近づくほど魔力濃度は濃くなり、人外魔境の未開拓地と化すのだ。


ちなみに、ここから東方へ向かうと徐々に高度が上がり、最終的には草木もまばらな乾燥地帯へと行き着く。そこには『まつろわぬ民』と呼ばれる遊牧民たちが跋扈しており、今も帝国に対して激しい抵抗を続けている危険地帯だ。


「ここから盆地までは、水路と馬車の併用でしたよね」


ルークが、手綱をさばきながら行く先を見据える。


「大森林から流れる大河を使えば船で一気に行けそうなもんだが、いかんせん水運の整備がまるで進んでいない。おまけに大河のあちこちに橋が架かっていないから、いちいち渡し船を待つハメになる。この路面状況と物流の滞りを見た時点で、担当部門の人間を全員集めて徹夜で問い詰めたいレベルだな」


「はは、ルシウス様のそのインフラに対する異常な執着、相変わらずで安心しますよ。宮廷の連中は攻撃魔法の威力にしか興味がないですけど、俺たちのオリジナル魔法の恐ろしさ、これから思い知ることになりますね」


ルークはニカッと不敵に笑った。

そう, ルークは俺の授かったギフト『箱職人』の真価も、俺が開発した魔法の理論もすべて知っている。なぜなら、宮廷内で無能と嗤われながら、俺と一緒に魔法の研鑽を積んできた唯一の理解者だからだ。


まあ、俺の頭の中にあるのが、現代日本の国家的な工学知識だということだけは、ルークにも秘密なんだけどね。


「よし、ルーク。適当なところで馬車を止めろ。二ヶ月の長旅だ、まずは『移動事務所』の設営からいくぞ」


「了解です! 待ってました、アレですね!」


ルークは嬉しそうに馬車を道端へ寄せた。

彼らは誰も知らない。俺の『箱職人』というギフトと現代工学が組み合わさったとき、このボロ馬車を──ひいては世界をどう作り変えてしまうのかを。


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