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蒼空のルミナ遺跡  作者: ひろゆら


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中央管理塔

開いた扉の隙間から、冷たい風が吹き込んでいた。


探索隊の誰も、すぐには動かなかった。


その先に広がる光景が、あまりにも現実離れしていたからだ。


遥か上まで続く巨大空間。


空中へ浮かぶ白い回廊。


青白く輝く無数の結晶。


そして中央には、天井の見えない高さまで伸びる白い塔。


「……すご」


ノクトが呆然と呟く。


研究員たちも完全に言葉を失っていた。


セレナはしばらく黙ったまま、その光景を見つめていた。


やがて静かに口を開く。


「少人数で内部確認を行う」


研究員たちが振り向く。


「記録班はここで待機。護衛班は入口周辺を確保しろ」


「ですが隊長――」


「全員で動くには危険すぎる」


セレナの声は冷静だった。


「内部構造も不明だ。まずは先行調査を行う」


研究員たちは渋々頷いた。


セレナは振り返る。


「リゼ、ミナ、ノクト、ガルド。同行しろ」


「え、私たちも?」


「扉が反応した以上、リゼは必要だ」


反論の余地はなさそうだった。


やがて五人は、扉の隙間をくぐる。


その瞬間。


空気が変わった。


外側の遺跡より、ずっと静かだった。


足音だけが白い床へ響く。


床は磨かれたみたいに滑らかで、ほとんど崩れていない。


壁には青い光の線が流れていた。


まるで血管みたいに、塔全体へ光が巡っている。


「ここだけ別物みたい……」


ミナが小さく呟く。


リゼも同じことを思っていた。


今まで歩いてきた遺跡は“廃墟”だった。


でもここは違う。


まだ生きている。


そんな感覚があった。


通路の先には、巨大な広間が広がっていた。


天井は高すぎて見えない。


空中には結晶が浮かび、淡い光を落としている。


その下を、白い橋が幾重にも交差していた。


「古代文明ってレベルじゃないだろ、これ……」


ノクトが呆れたように言う。


ガルドも珍しく周囲を見回していた。


「……都市だな」


確かにそうだった。


塔というより、小さな空中都市みたいだった。


そのとき。


壁際の結晶が、突然淡く光る。


リゼは思わず足を止めた。


青い光が、順番に通路を灯していく。


まるで、導かれているみたいだった。


セレナが目を細める。


「また反応したか」


視線が自然とリゼへ集まる。


リゼは少し困ったように肩を縮めた。


「わ、私じゃないですよ?」


「だが君が入ってから動いている」


否定できなかった。


実際、遺跡はリゼへ反応しているように見える。


胸の奥が少しざわつく。


嬉しいというより、不安に近かった。


どうして自分だけなのか。


まだ何もわからない。


そのまま通路を進む。


途中の壁には、大きな壁画が刻まれていた。


リゼたちは自然と足を止める。


空に浮かぶ巨大都市。


白い塔。


光る結晶。


その下には、無数の飛空艇のような影も描かれている。


「これ……古代文明?」


ミナが呟く。


壁画の一部は崩れていた。


だが、中央付近だけは綺麗に残っている。


そこには、人々が空を見上げる姿が描かれていた。


さらに、その先。


空が黒く塗り潰されている。


「なんだこれ……」


ノクトが眉をひそめる。


リゼは壁画を見つめた。


不思議と胸がざわつく。


懐かしいような。


怖いような。


説明できない感覚だった。


セレナは壁画へ静かに触れる。


「記録に残っていた文明より、遥かに発展している……」


その声には、わずかな驚きが混じっていた。


さらに奥へ進むと、空間は少しずつ狭くなっていく。


白い階段。


静かな光。


どこまでも続く回廊。


誰もいないはずなのに、妙な気配だけが残っていた。


途中、床の一部には細い光の線が走っていた。


近づくと、その線はゆっくり色を変える。


青から白へ。


白から淡い金色へ。


「監視機構……?」


ミナが小さく呟く。


セレナは慎重に周囲を見回した。


「警戒は続けろ。まだ防衛機構が停止した保証はない」


ガルドが自然と前へ出る。


ノクトも軽く周囲を確認していた。


さっきの戦闘のあとから、全員少しだけ緊張している。


そのときだった。


通路の先で、ふわりと光が揺れる。


リゼは思わず立ち止まった。


空中へ、小さな光の粒が浮かんでいる。


青白い光。


雪みたいに静かに漂っていた。


「綺麗……」


リゼが呟く。


光の粒は、リゼの周囲をゆっくり回る。


すると壁の結晶が次々と反応し、通路全体が淡く光り始めた。


低い振動音が響く。


ゴゥン……。


「また起動したのか」


セレナが警戒する。


だが今度は違った。


敵意のようなものは感じない。


むしろ。


歓迎されているみたいだった。


リゼは無意識に胸元を押さえる。


頭の奥が微かに熱を持っていた。


また、何かが流れ込んできそうな感覚。


けれど今回は、言葉にはならなかった。


ただ。


遠い記憶みたいな感覚だけが残る。


やがて。


五人は、小さな円形の部屋へ辿り着く。


部屋の中央には、台座があった。


そこに埋め込まれていたのは、空みたいに青い大きな結晶だった。


「……綺麗」


リゼは思わず呟く。


結晶の内部では、淡い光がゆっくり揺れていた。


まるで生きているみたいだった。


その瞬間。


結晶が強く光る。


「!?」


全員が身構える。


低い振動音が響いた。


ゴゥン……。


同時に。


部屋の壁一面へ、古代文字が浮かび上がる。


青白い光が、静かに広がっていった。

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