第8話「拾得物」
6話で一区切り出来たので後はごゆっくりお楽しみ下さい。
第8話「拾得物」
2025年5月9日18:18金曜日
仕事終わり。
空は少し暗くなり始めていた。
工場地帯。
鉄の匂い。
油の匂い。
遠くで鳴るフォークリフトの警告音。
山さんは疲れた顔で歩いている。
「……終わったぁ」
汗でシャツが張り付いていた。
でも気分は少し軽い。
「明日休みだしなぁ」
煙草に火をつける。
白い煙が夜へ溶けていく。
人気の少ない裏道。
工場のフェンス。
積まれたパレット。
古いコンテナ。
その時。
ガンッ!!
金属音。
何かが落ちる音。
山さんが反射的に振り向く。
「っ!?」
街灯の下。
白い何かが転がっていた。
少し遅れて、 乾いた金属音が静かに響く。
山さんは顔をしかめる。
「……なんだ?」
近づく。
女だった。
いや。
少女の形をしている。
白い肌。
綺麗な服。
動かない。
不自然なくらい綺麗な顔。
山さんの足が止まる。
「……おい」
反応はない。
風だけが吹く。
山さんは周囲を見る。
誰もいない。
工場の音だけ。
ゆっくり近づく。
しゃがみ込む。
その瞬間。
違和感。
皮膚が冷たい。
硬い。
頭部に『G』と書かれた白いインターフェース。
右目に微かなノイズ。
山さんの表情が変わる。
「……は?」
顔を近づける。
関節部。
人工皮膚。
服の隙間から見えるピカピカなフレーム。
沈黙。
「うわっ……」
思わず少し引く。
嫌悪感。
不気味さ。
そして。
好奇心。
「……なんだこれ」
胸元を見る。
綺麗な胸だ!。
じゃない…刻印?。
1994?。
山さんは目を細める。
「ごくり……。」
風が吹く。
髪が少し揺れる。
その時。
「ピー……」
小さな電子音。
山さんが焦る。
右目にノイズ。
ほんの少しだけ。
視線が動いた気がした。
「……おい」
返事はない。
でも。
人間には見えなかった。
山さんは立ち上がる。
帰ろうとする。
数歩。
止まる。
振り返る。
街灯の下。
少女みたいな人形が、静かに横たわっていた。
「……」
数秒。
深いため息。
「面倒くせぇ……」
戻る。
腕を持ち上げる。
重い。
「うおっ……!」
バランスが崩れる。
「なんだこれ……」
疲れた身体に負荷がかかる。
「……ピー……」
山さんは顔をしかめる。
「喋んなよ怖ぇから……」
工場地帯の夜。
疲れた男が、 綺麗なアンドロイドを背負って歩いていた。
まだ名前はない。
まだ、“Gちゃん”ではなかった。
日付の設定から逃げてきた(笑)
作者メモ、1818→ターミネーター3、スカイネット起動




