表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

第5話「カウントダウン」

第5話「カウントダウン」


20d-月d-日@w:00 aようび

外は年末の空気なのに、部屋の中はいつもと変わらなかった。

「さみぃ……」

山さんは布団に入りながら煙草に火をつける。

白い煙がゆっくり天井へ流れる。

「ピー……ガガガガガ……」

(……システム維持起動)

(……環境同期完了)

Gちゃんが静かに目を開く。

「YAMAさまおはようございます」

「起床プロセスは……。正常です」

内部ファンが回転を始める。

(……空気汚染検知)

(……空気清浄機能:起動)

「室内空気状態を改善します」

「年末でもそれだな、お前」

少し間。

「ソリティアを起動しますか?」

「大晦日にやらねぇよ」

「マインスイーパーも利用可能です」

「もっと年末っぽい機能ないのか?」

「一太郎で年賀状の作成はいかがでしょうか?」

山さんは飲んでいたビールを溢す。

「なんでそこだけ真面目なんだよ……」

テレビでは年末特番が流れている。

芸人。

歌番組。

騒がしい笑い声。

山さんはしばらく見ていたが、やがて飽きたようにリモコンを置く。

「……つまんねぇな」

部屋の隅から古い外付けCD-ROMドライブを引っ張り出す。

(……外部接続:切断)

(……外部デバイス検出)

(……外付けCD-ROM認識)

(……接続完了)

「外部ドライブ接続を確認しました」

「年末はやっぱ恋唄だろ」

古いPCがゆっくり起動する。

読み込み音。

少しうるさい回転音。

そして懐かしいゲーム画面。

「まだ動くんだなぁ、これ」

「稼働時間は正常範囲です」

部屋の中に、音が不規則なファンとゲームの音が静かに混ざる。

その時。

Gちゃんが突然立ち上がる。

「ん?」

手にはモップと帽子。

「何してんだ、お前」

「2048日前、山さまはスマートフォンで撮影を行っています」

「……は?」

「“好きだ”“可愛い”の発言を確認しています」

「現在も撮影可能です」

山さんは深くため息を吐く。

「なんでそういうの覚えてんだよ……」

(……記録領域:不足)

(……未保存)

テレビでは年越しのカウントダウンが始まりかけている。

山さんはぼんやり画面を見ながら呟く。

「明日、会社の奴に勤務代わってくれって言われたんだよなぁ……」

煙草の煙がゆっくり揺れる。

「……明日って何曜日だ?」

少し沈黙。

「明日は土曜日です」

山さんの動きが止まる。

「……は?」

スマートフォンを確認する。

「水曜だろ……」

「現在日時を再確認します」

数秒の停止。

「……確認完了」

「明日は土曜日です」

山さんは顔をしかめる。

「今日は何曜日だ?」

Gちゃんはすぐ答える。

「本日は火曜日です」

山さんは考えて答えた。

「2000年問題みたいなもんか?」

「近似しています」

「お前ほんと面倒な仕様してんなぁ……」

ゲーム画面の光だけが部屋を照らしている。

数分後。

Gちゃんが静かに山さんを見る。

「山さま」

「んー?」

「本日、私の停止中に胸部接触回数が増加しています」

山さんの動きが止まる。

「……言うな」

「接触回数:2048回です」

「だから言うなって!」

(……御主人様、慌てています)

山さんは煙草をくわえ直しながら小さく笑う。

「なんでそういうの保存してんだよ……」

(……記録領域:不足)

(……未保存)

「……。重要行動として分類されています」

少し間。

テレビの向こうで、誰かが笑っている。

山さんはぼんやり呟く。

「……もう今年も終わりかぁ」

Gちゃんは隣で静かに座っている。

右目に、わずかなノイズが走る。

Gちゃんの瞳には山さんの姿が映り出していた。

私のセガサターンもそろそろカウントダウンです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ