第3話「外の空気」
登場人物
山さん(御主人様)仕事は建築業
アンドロイド(Gちゃん)御主人様の記録を保存するのが大好き
コロッケ屋のおばちゃん、いつも元気に声をかけてくる
犬を散歩する人、Gちゃん犬が苦手です…
ジョギングのおじさん、挨拶を返す前に走り去っちゃうの今度あった時は返そうと思ってる
学生、凄くジロジロ見てくる
第3話「外の空気」
20d-年5月d日11:45土曜日
風が気持ちいい日だった。
「飯、買いに行くかぁ」
布団でゴロゴロしていた山さんがそう呟く。
Gちゃんが静かに反応する。
「……外部インターフェース接続」
「外出モードを開始します」
玄関。
帽子。
薄手の上着。
スニーカー。
山さんは帽子を軽く押さえる。
「ちゃんと深く被っとけよ」
「了解しました」
軽やかな接近メロディ。
駅から抜けた川沿いの道。
風がゆっくり流れている。
Gちゃんは山さんの半歩後ろを歩く。
その距離も自然だった。
犬の散歩をしている人。
ジョギングする人。
ひややかな目で見る学生。
右目にノイズが走る。
誰もこちらを気にしていない。
山さんは少しだけ空を見上げる。
「……平和だなぁ」
「周辺環境は安定しています」
「そういう意味じゃねぇよ」
少し歩く。
川の音。
風の音。
靴がアスファルトを擦る音。
お店のBGM。
階段を降りる。
コロッケ屋が見えてくる。
「いらっしゃい!」
いつもの明るい声。
「あら、お兄さん達また来たのねぇ」
山さんは軽く手を上げる。
「どうも」
おばさんはGちゃんを見る。
「今日も可愛いわねぇ」
Gちゃんは小さくお辞儀する。
「ありがとうございます」
「ほんと礼儀正しいわねぇ」
山さんは苦笑する。
「まぁ、変なとこだけ真面目なんで」
コロッケを受け取り、階段を登り店を出る。
接近メロディ。
その時。
強い風が吹く。
帽子がふわりと浮く。
Gちゃんの手が少し遅れる。
だが、その前に。
山さんが自然に帽子を押さえていた。
「危ねぇ危ねぇ」
「補助行動に感謝します」
「お前ほんと風に弱いな」
「重量設計に問題がある可能性があります」
山さんは吹き出す。
「自分で言うなよ」
帰り道。
二人は並んで歩く。
会話は少ない。
でも沈黙は重くない。
Gちゃんは静かに内部ログを更新する。
(……外出回数:保存)
(……御主人様同行記録:保存)
山さんはコロッケの袋を揺らしながら呟く。
「まぁ……こういうのでいいんだよな」
Gちゃんは少しだけ間を置いて応答する。
「現在の生活環境を良好と判断します」
Gちゃんの動きが、ほんの少しだけ遅れた。
山さんはそのままGちゃんの手を取る。
風が流れる。
2人は、手を繋いでゆっくり歩いて行った。
「素敵な事です」
Gちゃんは小さく呟いた。
伏線回収して見ていただけると作者冥利につきます。




