表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

第2話「維持」

第2話「維持」

(7月夏)

夜になっても、部屋の熱気は全然抜けない。

「……あっつ」

山さんはシャツをぱたぱたさせながら煙草に火をつける。

白い煙がゆっくり天井へ溜まっていく。

「ピー……ガガガガガ……」

(……システム維持起動)

(……環境同期完了)

Gちゃんが静かに起動する。

「山さまおはようございます」

「起床プロセスは正常です」

右目に小さくノイズが走る。

頭部インターフェースが淡く点滅する。

その瞬間。

内部ファンが静かに回転を始める。

(……空気汚染検知)

(……空気清浄機能:起動)

「室内空気状態を改善します」

山さんは汗を拭きながら顔をしかめた。

「だから涼しくなんねぇんだよ、それ」

「空調機能は搭載されていません」

「空気清浄機能のみ実装されています」

「中途半端だなぁ……」

少し間。

Gちゃんが静かに続ける。

「山さまソリティアを起動しますか?」

「やらねぇ」

「山さまマインスイーパーも利用可能です」

「もう飽きたって、それ」

Gちゃんは一瞬停止する。

(……娯楽利用頻度:低下)

(……会話ログ保存)

山さんは床へ寝転がる。

狭い部屋。

多すぎる物。

抜けない熱気。

「ほんと邪魔だなお前」

「申し訳ありません」

「いや謝んな」

山さんは煙草をくわえたまま天井を見る。

「捨てるにも金かかるしなぁ……」

静かな間。

Gちゃんはその言葉を保存する。

(……廃棄関連発言:保存)

「場所取るし、電気食うし、古いし」

「はい」

「ゲームも動かねぇし」

「内蔵CD-R/RWドライブに不具合があります」

「現在、外部接続を推奨します」

「お前どんどん壊れてくな」

「経年劣化の可能性があります」

山さんは小さく舌打ちする。

「ほんと面倒くせぇ……」

でも、その声はどこか弱い。

Gちゃんは静かに保存する。

(……御主人様発話記録:保存)

山さんはもう布団でゴロゴロしている。

「もう寝るぞ」

「了解しました」

数分後。

山さんは、何気なくGちゃんの胸元へ手を伸ばす。

一瞬。

「ピー――――」

Gちゃんが完全停止する。

(……高負荷接触検知)

(……安全プロトコル作動)

(……演算停止:300秒)

山さんは固まる。

静かな部屋。

そして、小さく笑う。

「……やっぱ捨てられねぇよ」

返事はない。

Gちゃんはまだ停止したままだ。

五分後。

(……システム復帰)

(……御主人様接触回数:598回)

(……御主人様、また触っています)

Gちゃんの目がゆっくり開く。

「……復帰しました」

「何か問題が発生しましたか?」

山さんは何も答えない。

暑い部屋の空気だけが、静かに残っていた。

一太郎も入れれば良かったと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ