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緋色の奇術師  作者: オクヒロ
アンノウン編

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第36話 WOO

 雷蔵を先頭に、4人は指定された席へ着く。周りの奇術師達も続々と席に着き、暫くすると会議室は暗転し正面スクリーンへ映像が映し出された。4人は、奇術省受付で渡されていたイヤホンを耳に着けた。すると、1人のヨーロッパ系のスーツを着た男が登壇する。彼は、英語で話し始めた。


「皆さん。世界各地からお集まり頂き、誠にありがとうございます。私は、今回のアンノウン掃討作戦の説明をさせて頂きます、WOOのスミスです。よろしくお願い致します」


 スミスは一礼した。


 WOO。世界神秘機関(World Occultism Organization)。国連の秘密機関で、世界の人々を魔獣の脅威から護る為、互いに他の国々と協力する目的で設立された。奇術の共同研究や、魔獣の生態調査などを行う機関である。今回、アンノウンという世界的脅威に立ち向かう為、WOOが全世界に奇術師動員を訴えかけ、今回の作戦を考案した。

 会議の内容は、WOO職員がリアルタイムで翻訳し、事前に配布されたイヤホンに流れる。


「それでは、アンノウン掃討作戦の詳細について説明させて頂きます」


 任務内容。

 ロシア領内にあるモンゴルと中国との国境隣接州、ゴル州にある山岳地帯、リョカ山脈麓に発見されたアンノウンの本拠地を包囲、殲滅することである。偵察隊の情報によれば、敵本拠地は要塞となっており、恐らくサーモセンサーが本拠地の砦を中心とした約2キロを探知し、一定値以上の熱源を探知すると全方位に配備された30ミリガトリング砲が、熱源へ向けて火を吹く仕組みになっている。よって、聖気を抑えて接近すれば肉体強化を用いていない身体はバラバラに吹き飛ばされる。このことから、地上からの奇襲は困難であると考えられる。加えて、要塞を包み込む形で張られた、出るもの拒まず、入るものを拒む『護封結界(ごふうけっかい)』を確認。地上からの強行突破は困難である。

 そこで、今回作戦に参加する日本の特権術師、服部雷蔵氏から提案があった。特権術師の高高度降下低高度傘開、通称“HALO降下”による奇襲。降下中の高高度から、高出力破壊術式により『護封結界』を破壊し、敵の注意を上空へ向ける。その攻撃を合図に、約1000名の奇術師による包囲殲滅戦。WOO作戦本部は、この案を採用した。包囲部隊の奇術師は、敵要塞半径3キロ圏内まで聖気を断ち接近し待機。HALO降下部隊による術式発動を合図に、一斉に肉体強化で敵要塞まで距離を詰める。偵察隊の聖気探知によれば、特権クラスの奇術師が2名、上級以下の奇術師が300名程いる模様。よって、降下した特権術師2名が特権クラスの奇術師の討伐を担当。その他の奇術師を、包囲部隊が殲滅する。以上が、今回のアンノウン掃討作戦となる。


 ブリーフィング終了後。同日夜。

 英気を養う為、立食パーティーが開かれた。これまで、国の為に争い殺し合ってきた奇術師達が、アンノウンという共通の敵に対し世界の為に1つになる。ブリーフィング時の張り詰めた空気が、パーティーが終わる頃には国同士の(わだかま)りは薄くなり、作戦へ向けての士気も上がっていた。


「先生。また飛ぶんだな」


 世界のありとあらゆる肉料理を平皿にてんこ盛りにし、ハムスターのように口いっぱいに頬張りながら界斗が話し掛ける。


「先生、案外ハマってたりしてね? 私は、二度とごめんだけど。・・・・! このドレッシング、凄く美味しいわ」


 真矢は、サラダ多めの食事。そこへ、日本食を選んで取ってきた雷蔵が2人に答える。


「あぁ、わりとハマりそうだな。まぁでも、今回は嫌がらせもあるかなぁ、ハハッ」


「え? それってどういう・・・・」


 界斗に引けを取らない程肉料理へがっついていた糸成が、背後から迫る殺気に気付き振り向く。そこに居たのは、静かに怒りをあらわにするエペルだった。


「やぁ、Mr.服部。やってくれましたね? 作戦が終わったら、覚えておきなさい」


 にこやかな顔で背筋の凍る殺気を漂わせるエペルに、周囲の奇術師達が困惑する。


「なんの話だぁ? エペル。俺がしたのは“提案”。決めたのはWOO作戦本部だ。文句があるなら、そっちに言ってくれるかぁ? ププッ」


 雷蔵の憎たらしい笑顔に、エペルは呆れて言葉も出なかった。エペルが去って行くと、エペルの殺気で食事を喉に詰まらせた糸成が、胸を叩きながら雷蔵に聞き直した。


「おじさん。あれってどういうこと?」


「ん? あぁ、エペルのことか? あいつ、真矢と一緒なんだ。これで、何となく想像つくだろ? あいつの怯える顔が目に浮かぶぜぇ! プププッ」


 悪巧みをする子供のような顔をする師に、弟子達はドン引きしながらエペルのことを少し可哀想に思ったのだった。

 パーティーが終わると、雷蔵が3人に話をする。


「いいか? 明日、俺はお前達を見てやれない。だが、お前達を信じている。絶対に死ぬな。そして今回の作戦において、俺達のアドバンテージは何か分かるな?」


 雷蔵が界斗の目を見ると、界斗は答える。


「数的有利」


「正解。俺達は、圧倒的に数で勝っている。だから、明日の作戦で単独行動は禁止だ。チームで動き、他のチームと連携して確実に勝て。そして生き延びろ」


 真剣な眼差しで念を押すと、雷蔵は3人の頭を順番に激しくワシャワシャと撫でた。


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