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緋色の奇術師  作者: オクヒロ
アンノウン編

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第32話 戦闘開始

 日本チームは対象の目視確認をする為、仮面を被り探知した聖気へと接近していた。周辺警戒をしながら、森を進む。すると、岩場の上から周囲を覗き込んだとき、糸成が100メートル先、木の影に座り込む2人の人影を見つける。糸成は、直ぐにハンドサインで真矢と界斗へ知らせた。それを見た真矢と界斗の2人が確認する。そこには、アジア系アメリカ人のリンとチョウの顔が確認出来た。事前に渡された顔写真3枚のうち2枚と同一人物であると判断した界斗は、対象発見の合図、無線のオンオフを2回入力し、ノイズでブレアへ知らせた。直ぐに、ブレアから折り返しの無線が入る。


「対象確認了解。こちらも、対象の術師を目視で確認。捕獲出来次第そちらへ向かうから、見つからないように監視を続けて」


 ブレアの指示どおり、日本チームは監視を続けた。


 対象発見から20分程が経った頃。対象の脱国奇術師と日本チームを囲む、大規模な結界が素早く展開される。


「界斗上よ!」


「おい嘘だろ! まさか、この距離で気づかれたのか⁉︎ いや、奴等も明らかに動揺してる。これをやったのは・・・・アメリカチームか!」


 ヒソヒソ声で話した真矢と界斗だったが、動揺で聖気を抑えるのが乱れた日本チームの聖気が、チョウに探知されてしまった。


「2人共避けて!」


 糸成が、真矢と界斗に覆い被さりながら岩場の後方へ飛ぶ。途端に、リンの皮グローブから放たれた黄色い電撃で、岩が木っ端微塵に吹き飛んだ。


「チョウ。やったか?」


「いや、まだ聖気が確認出来る。ギリギリで躱されたな。チッ、アメリカからの追手か?」


「いや、リン。アメリカじゃねぇ。さっきちらっと見えた。動物の仮面を被ってやがる。奴等、日本の術師だ」


 3人の上には崩れた岩が大量に被さったが、糸成の声掛けで瞬時に肉体強化を行なった為、皆無事だった。


「ありがとう糸成。助かったわ」


「間に合って良かったよ。今、岩を退かすね」


 糸成は、両手を背後に向けて『緋掌』を放ち、上に被っていた瓦礫を消し飛ばした。3人は起き上がり、臨戦態勢を取る。


「相変わらず、便利な技だなぁ糸成。助かったぜ。結界を張ったなら、アメリカチームも近くに居るはずだ。奇襲は失敗したが、やることは変わらねぇ。アメリカチームが来るまで、時間を稼ぐぞ」


「了解」


 そこへ、リンの両手にはめたグローブから電撃が走る。其々左右に避けた3人へ、電撃が3つに別れて追尾した。


「マジか! 電撃の追尾なんて超高等術式だぞ⁈ 真矢! 糸成! 俺の後ろに来い!」


 界斗の掛け声を瞬時に理解した糸成と真矢は、別れた電撃の軌道が1つに重なるように界斗の後ろへと立ち回った。


「2人共ナイスだぜ!」


 正面から迫る3つの電撃へ向かって、界斗が右手を前に突き出す。


『三重結界 三神楽(みかぐら)!』


 右中指の指輪が光ると、界斗の正面に三重の術式が浮かび上がる。3つの電撃が同時に結界に当たると、3枚の結界はバネの様に攻撃の威力を吸収し、リンとチョウへ向かって電撃をはじき返した。それを、リンとチョウは咄嗟に避ける。


「遠距離攻撃で時間稼ぎしようと思ってたが、リンの電撃は厄介過ぎる。糸成、接近戦でリンの気を引いて電撃を撃たせないように立ち回ってくれ。見るからに近接主体そうな斧使いのチョウは、俺と真矢で距離を取りながらやる。そっちは頼んだぞ?」


「オッケー。これ以上、2人に電撃は撃たせないよっ!」


 糸成は、リン目掛けて距離を詰める。それをチョウが斧で対応しようとしたが、真矢の矢に阻まれる。


「あんたの相手は私達よ!」


「チッ! 鬱陶しい! お前から先に切り裂いてやるよ!」


 チョウは真矢へ接近しようとするが、真矢と界斗は距離を取りながら攻撃し続ける。


「私の矢だけじゃ決定打に欠けるわ。糸成と引き離したら、広範囲術式を使いましょう。・・・・⁉︎」


『フレア・ラスレイト!』


 チョウの大きく振り下ろされた斧から、跳び回っていた真矢へ向かって炎の斬撃が飛び出す。それを見て、同じく跳び回っていた界斗が右手を真矢へ向ける。


『断隔』


 真矢の目の前に張られた結界は、斬撃を防いだ。


「界斗の『断隔』にヒビを入れるとは、流石上級クラスね。直撃は避けないとっ!」


『刹火の矢 撃』


 直接狙っても矢を落とされると判断した真矢は、狙いをチョウの足元へと変え、爆炎と衝撃波による消耗戦へと戦略を変更した。

 一方、引き離しに成功した糸成は、リンに電撃を撃たせないように接近戦をする。しかし。


「俺に接近戦とは。読み違いだぜぇ? 坊主!」


『ライトニングフィスト』


 リンの本来の戦闘スタイルは、その恵まれた体格と電気を纏った拳による近接格闘戦。放たれる電撃を上回る威力の電気を帯びた拳は、触れただけでダメージを与える。糸成は、その拳を捌いていた自身の手に違和感を覚え、一旦距離を取る。


「なんだ? 手が痺れる。あいつの電気か?」


 糸成の手は強力な電気で火傷を起こし、手先は痺れて力が入り辛くなっていた。


「小僧。お前、なかなか良い肉体強化してるな? 並みの術師なら、両手共吹き飛んでるぜ? それにお前、あの緋色の狼だろ? 手は触れさせねぇよ?」


「僕、英語分かんないんだよねっ!」


 リンの鋭い拳に、糸成は直人に鍛えられた体術で対抗する。拳の直撃は受けないが、徐々に両手にダメージが蓄積されていく。短期決戦をしたほうが良いと考えた糸成は、リンの拳に対し『螺旋白刃流し』で懐へ入った。


「ここだ!」


『緋掌』


 右手でリンの腹部に触れる。しかし、『緋掌』は発動出来なかった。手が電気によって痺れたことにより、手のひらで瞬時に聖魔融合が出来ず、赤核を作り出せなかったのだ。リンが振り払うのを、糸成は距離を取り回避する。

 そんな日本チームの戦闘を、少し離れた場所でアメリカチームは観ていた。



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