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緋色の奇術師  作者: オクヒロ
アンノウン編

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第23話 尋問

 糸成と真矢が戦闘に入る頃。特殊作戦群と界斗は森を順調に北上していた。アンノウンの非術師戦闘員が迎え撃つが、戦闘は一方的だった。森に、複数の銃声が鳴り響く。


「おい! 話が違うぞ⁉︎ 日本の軍は、人は殺せないんじゃないのかよ!仲間が、どんどん死んでいくぞ! む、無茶苦茶だぁ! ・・・・ぐあぁ! 痛ってぇ! ・・・・ま、待ってくれ! 慈悲を・・・・」


 柴原の無線に、連絡が入る。


「こちらチャーリー01。制圧完了、指示を待つ、送レ」


「こちらアルファ01。ラジャー。引き続き目標エ前進、終ワリ。・・・・結野術師、敵制圧完了。負傷者無し、目標への前進を再開します」


「わかりました。行きましょう」


 真矢が森を暫く進むと、爆発音が止み木々の向こうから緋色の閃光が見えた。森を掻き分け進んだ先で、戦闘が終わり立っていた糸成を見つける。


「糸成! 終わったみたいね・・・・って凄い怪我じゃない! 大丈夫⁈」


 真矢は糸成に駆け寄る。糸成は、苦笑いしながら言った。


「うん。なんとか。・・・・ハハハッ。僕もまだまだだね〜。ちょっと待ってね? 今これ抜くから」


 糸成は、腹に刺さったレイピアの柄を右手で握ると、息を整え始めた。その行動を、真矢が慌てて止める。


「バカ! 糸成、あんた既に血を流し過ぎてる。今ここでそれを抜いたら、さらに出血して出血多量で死ぬわ。だから、直ぐに界斗と合流して治療して貰うわよ。ほら、肩貸しなさい。足やられて、歩けないんでしょ?」


「ご、ごめん。ありがとね」


 御礼を言われた真矢は、糸成へ優しく感謝を伝える。


「それはこっちのセリフよ。あのとき、私にとって相性の悪い炎操(えんそう)系術師を、解ってて引き受けてくれたんでしょ? お互い様よ」


 2人は肩を組み、界斗のいる後方へと向かおうとした。そのとき、南の森から集団の人の気配を感じる。直ぐに、2人は臨戦体勢を取った。しかし、森から出て来たのは。


「糸成と真矢じゃねぇか! 敵の術師は、もう片付いたのか?」


 界斗と柴原を先頭にした特殊作戦群が、森を北上して来た。合流した2人は、界斗の『神産巣日陣かみむすびのじん』で治癒して貰うと戦線へ復帰する。その後、目標の施設への道中に接敵はなかった。先頭を進む糸成達3人の目に、半壊した敵施設が映る。


「遅かったなぁ、お前ら。遅過ぎて、うんこ2回出たぞ〜快便だ!」


 施設の瓦礫でできた山の上に、漫画を片手に腰を掛けた雷蔵が右手の親指を立てた。


「誰もそんなこと聞いてないわよ!」


 怒る真矢を笑う雷蔵へ、界斗が状況を聞く。


「先生のほうは、どうなったんだ? “叩く”って言ったってことは、生け取りなんだろ?」


 界斗の考察は当たっていた。アンノウン幹部の可能性がある上級術師、それもトップレベルともなれば組織の情報を多く持っていると考えた雷蔵は、自分でその奇術師を確実に確保し、残りの敵奇術師を弟子の修行に使った。その為、自分は“叩く”、糸成と真矢には“殺れ”と言ったのだ。それを、界斗は良く理解していた。よって、この作戦において非術師の捕虜は1人も居ない。


「界斗ぉ、流石だねぇ〜。正解! 捕虜の上級術師は、そこに転がってるぞ~。大丈夫、『封禁(ふうきん)』はしてある」


 拘束術式『封禁』。術式起動時に対象に術式札を貼った後、10分程聖気を流し続け発動する。貼り付けた人間の聖気を吸収、手足を拘束する。よって、一切の聖気操作が出来なくなり、身動きも取れなくなる術式である。術式発動後は、貼られた人間から吸収した聖気で術式を運用する為、貼られた人間が生きている限り発動し続け、貼られた者は寿命以外で死ぬことはない。国連により人権尊重の為、保護効果が設けられた術式である。第三者に聖気を使って剥がして貰うしか解除方法は無く、発動までの10分間は、貼られた人間でも簡単に剥がせるので、対象を無力化してから貼らないと意味が無い。


「柴原隊長。此処に敵はもう居ません。作戦完了の通信をお願いします」


 4時30分、呪嶽島制圧作戦終了。

 雷蔵が、作戦終了を宣言した。イージス艦と連絡を取ると、『隠』が解かれた。柴原は、施設の見張りと調査部隊を案内する為に隊を2つに別ける。奇術師4名は捕虜を連れて、調査部隊を出迎える隊員達と共に回収ポイントである浜辺へと向かった。


 同日、12時。東京奇術省庁舎、地下拘束施設尋問室。

 呪嶽島制圧作戦で捉えられた2名の奇術師が、別々の部屋で拘束椅子に座らされていた。自白剤の点滴終了後、服部特権術師立ち会いの下、尋問が始まる。

 得られた情報は、以下のとおりである。

 アンノウンの拠点は、世界各地に存在する。日本の拠点は、今回制圧された呪嶽島と東京都南方の無人島、神越島(かみごえじま)にある小規模拠点のみである。

全世界に潜伏する奇術師の構成員総数は、約500名。非術師の諜報員は1万を越える。中国国土内の何処かに奇術師育成施設があり、日々奇術師の構成員を増やしている。


 尋問の最後。“次のテロ目標は?”という質問に、自白剤で気分が高揚した捕虜が意気揚々と話した。


「もうじき、世界は奇術師を知る! 魔獣の脅威を知った世界は、奇術師を称え敬うだろう! 俺達は成し遂げる! 俺達が世界を変える! “その日”は、目の前だ!」


 世界の何処かで、大規模なテロを計画している。

 以上。


 日本は外務省を通して、この情報を各国に共有した。詳細な位置が分かっている拠点は、各国が近日中に攻撃を行うとのことだった。そして詳細は不明だが、世界規模テロの警戒を促す。

 奇術省は、神越島の調査を開始。情報整理を終えると、1週間後に神越島制圧作戦が決行される。そこでも捕虜を2名捕らえたが、新しい情報は得られなかった。


 呪嶽島制圧作戦同日、10時。服部邸へ帰還した糸成は、直ぐに布団へ倒れて睡眠を取る。夕方、帰還した雷蔵から尋問内容が知らされた。


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