第1章 第6話:二人の強力な味方
まだボール遊びの疲れが残る体で、二人は土の道を歩いていた。
広場の前を通り過ぎる。今はすっかり空っぽだ。
「この街に学校はあるのか?」セレバーが尋ねる。
「二校ある。広場の近くに一校と、王の邸宅の裏に一校だ」とブレンダン。
「まあ、少なくとも学校はあるってことか」
そう言った直後、セレバーはごく当然の疑問を頭に浮かべた。
『待てよ……サッカー? テレビ? こういうの、俺の世界のものだろ。なんでここにあるんだ?』
答えは得られず、彼はその疑問を胸にしまった。
さらに歩いてアレノール王の邸宅に到着し、そのまま防衛隊の部屋へ向かった。
扉を開けると、ダイアンとハナが並んで本を読んでおり、ケヴィンは眠っていた。
「どこ行ってたの? こんなに遅くまで」ダイアンがスリッパをセレバーの頭に向かって投げつける。
セレバーは避け、ブレンダンが浴室へ向かいながら答える。
「下の広場でボールしてたんだ」
「おい、何すんだよ」セレバーが不満そうに言う。
「勝手に消えないためのお仕置きよ」ダイアンがもう片方のスリッパで威嚇する。
「そんなに心配すんなよ」
「……戦闘能力も術も、あなたが一番弱いからよ」ダイアンが視線を逸らして答える。
「……まあいい。風呂入ってくる。ぐったりだ」
セレバーは浴室へ行き、三つの個室のうち最初の一つに入った。隣の個室ではすでにブレンダンが体を洗っている。
服を脱ぎながら、セレバーは声をかけられた。
「セレバー、術を覚えるつもりはあるか?」
「難しくなきゃな」シャワーを開きながら答える。
「安心しろ。努力すりゃ誰でもできる」ブレンダンが自信たっぷりに言う。
「そうだといいがな」
しばらくしてブレンダンが個室から出ると、真剣な声で言った。
「セレバー、部屋に戻ったら話がある」
さらに時間が経ち、セレバーも風呂を終えて服を着替えた。部屋に戻ると、皆が二段ベッドに集まっている。
「こっちへ来い、セレバー」とブレンダン。
セレバーが隣に座ると、話が始まった。
「なあ、セレバー……俺たちのこと、本当のことを話さなきゃならねえ」ブレンダンが肩に手を置く。
「俺たちは、ただの街の防衛隊じゃない」とケヴィン。
「実際は傭兵団なんだ」とダイアン。
「はあ? 金で人を殺してるってことか!?」セレバーが驚いて声を上げる。
「落ち着け、兄貴」ブレンダンがなだめる。
「ええ。でも悪い奴しか殺さないわ」とダイアン。
「それに、ほとんどの場合は捕まえるだけよ」ハナが空気を和らげようとする。
部屋に長い気まずい沈黙が落ちた。それを破ったのはセレバーだった。
「……そもそも、なんでそんなことしてるんだ?」
「アレノールは金で払ってくれねえからな。もっと過激な仕事をせざるを得ねえんだ」とブレンダン。
「どうしてあいつがまだ王なんだ?」セレバーが衝撃を受けた声で尋ねる。
「正直……俺たちにもわからねえ」ケヴィンが答える。
「……何て言えばいいのかわからねえ」セレバーが床を見つめる。
「もう八時半だ。寝よう。お前も頭を冷やせ」ブレンダンが肩に手を置く。
「……ああ」
グループでの会話が終わると、ケヴィンが部屋の明かりを消した。
セレバーはダイアンが使っていない二段ベッドの上段を選んで横になった。
「おやすみ」とハナ。
「おやすみ」全員が答える。
眠りに落ちたセレバーは、夢を見た。
真っ赤な花畑が広がっている。青い空に白い雲。
『ここはどこだ……?』
答えはない。
バラの畑を歩いていると、奇妙なものを見つけた。
『何だ、あれは?』
宙に浮かぶ鏡。近づくと、人の影のようなものが映っている。
「休ませてくれ」
「助けて」
「止めてくれ」
影たちがそう訴えている。
セレバーは何が起きているのか理解できなかったが、その鏡に触れようとした。
だが指が触れる前に、足元に白い穴が開き、彼は落下した。
「待て!」地面に掴もうとするが、それでも落ちてしまった。
――朝。
セレバーが目を覚ますと同時に、二段ベッドからバランスを崩して落ちた。
「うわっ!」
「セレバーが落ちた!」ケヴィンが大笑いする。
「大丈夫?」ハナが尋ねる。
「ああ、平気だ。サンキュー」
ブレンダンとダイアンが部屋に入ってくる。
「今の音は何だ?」
「セレバーがベッドから落ちたんだ」ケヴィンがまだ笑いながら答える。
「大丈夫?」ダイアンが近づいて腕に触れる。
「大丈夫、大丈夫」
「ダイアン、レオとネコを迎えに行かなきゃ」とブレンダン。
二人は部屋を出て行った。
「レオとネコって誰だ?」セレバーがケヴィンに尋ねる。
「防衛隊の残りの二人だ」
「今どこにいるんだ?」
「隣町だ」
「何しに行ったんだ?」
「レオは体術の訓練、ネコは付き添いだ」
「なるほど。あいつらが来るまで、ジョンじいさんのとこで訓練してくる」
セレバーは部屋を出て、防衛隊の訓練室へ向かった。
入った瞬間、ジョンじいさんの不意打ちの拳が飛んできた。セレバーは本能的に避ける。
「驚かせたな、小僧」
「もうやるなよ」
「訓練だ、小僧」
セレバーは構えを取り、ジョンは両手をポケットに入れたまま立っている。
セレバーがクロスを放つと、ジョンは軽くかわして脛に蹴りを入れた。
セレバーが後ずさりし、二人は睨み合う。
こうして約一時間、武術の訓練が続いた。
セレバーが疲れて地面に座り込むと、ジョンが手を差し伸べた。
「まだ終わってねえぞ」
「今度は何だ?」
ジョンはウエイトを指さした。
さらに一時間、ウェイトトレーニング。
終わった頃には、セレバーは雨に濡れた犬のような有様で訓練室を出た。
部屋に戻り、浴室へ向かう。
セレバーが風呂を浴びている間、ハナとケヴィンが話していた。
「セレバーの目、気づいた?」ハナがケヴィンに尋ねる。
「どうした? 惚れたのか?」ケヴィンがからかう。
「そういうんじゃないの。彼、笑顔なのに……」ハナが声を落とす。「目だけは、もう色々見すぎた人の目だと思う」
「……言われてみりゃ」ケヴィンが足を止める。「昨日の馬車の中でも、何か変だと思った」
「そう! 特にあの、血を吐いて痙攣した時」
「今でも何が起きたのかわからねえ」ケヴィンが腕を組む。
二人が部屋に入ると、シャワーの音が止まった。
セレバーが着替えて浴室から出てくると、ハナとケヴィンがいた。
「街の入口で待ってよう、セレバー」ハナが誘う。
「その服、街に来た時と同じじゃないか?」ケヴィンが尋ねる。
「ああ。気に入ってるんだ」
三人は部屋を出て、邸宅の外へ歩き出した。
街の出口へ向かい、ベンチに座って待つ。
やがて一台の馬車が近づいてきた。
「あいつらじゃねえか?」セレバーが尋ねる。
馬車が近づくと、運転しているのはダイアンだとわかった。
彼女は厩舎の近くで停車し、降りてくる。
「男の子たちは?」ハナが尋ねる。
「先に来たの。あいつら、街を出るのに時間がかかりそうだったし、予備の馬車もあったから」ダイアンが答える。
ダイアンがセレバーの隣に座る。
セレバーは彼女が少し様子がおかしいことに気づいた。
「大丈夫か、ダイアン?」
「え……うん、大丈夫よ。……どうして?」ダイアンが少し焦った声で答える。
「……そうか」
ダイアンが何か言おうとした瞬間、街の入口の方から音がした。
見ると、別の馬車が近づいてきている。運転しているのはブレンダンだ。
ブレンダンも同じ厩舎に停車し、降りる。
馬車の扉が開き、二人の人物が姿を現した。
最初に降りたのは、身長およそ一メートル六十センチの少年。白い髪をジャマイカ風に結い、暗い肌に緑色の瞳。鍛えられた体躯と、鋭い表情。
次に降りたのは、猿の獣人。身長およそ一メートル七十センチ、黒い目、洒落た服装に黄色い杖を背負っている。
三人がセレバーたちのところへ歩いてくる。
皆が立ち上がり、迎えた。
暗い肌の少年は壁に寄りかかった。
「お前がセレバーか?」獣人が手を差し出す。
「ああ。ブレンダンから聞いてるだろ」セレバーが握手する。
セレバーはダイアンが自分の目をじっと見つめていることに気づき、振り返った。ダイアンは視線を逸らす。
「本当に大丈夫か、ダイアン?」セレバーが彼女の肩に手を置く。
「だ、大丈夫よ」
その時、壁に寄りかかっていた少年の鋭い視線に気づいた。
「ダイアン、なんで弟がそんなに睨んでるんだ?」セレバーが居心地悪そうに尋ねる。
「わからないけど……走った方がいいわ」
「え、なんで……」言い終わる前に、少年が弾丸のように突っ込んできた。
「姉ちゃんから手を離せええええ!!」
炎を纏った拳がセレバーに放たれる。セレバーはぎこちなく避ける。
「ダイアン、助けてくれ!」
少年は攻撃を続け、セレバーは必死にかわし続ける。
「やめなさい、レオ」ダイアンが悲しげな声で言う。
だがレオは拳と蹴りを止めない。セレバーも避けきれず、顔面に一撃を食らった。
「やめなさい、馬鹿!」ダイアンが叫ぶ。
レオは瞬間的に動きを止めた。
「でもこいつの……」レオが言いかけたところで、ダイアンが遮る。
「黙りなさい!」
「……ちっ」レオが小さく舌打ちする。
腹いせに、レオが指を弾く。小さな火花がセレバーの頭に飛び、髪の一部に火がついた。
「うわっ!」セレバーが慌てて火を消そうとする。
「俺が消してやる、兄貴!」ブレンダンがセレバーの頭を思い切り叩く。
その間、ケヴィンとネコは笑いすぎて倒れそうになっていた。
「悪いな、その一撃」ブレンダンがセレバーの頭を撫でる。
「大丈夫?」ダイアンが尋ねる。
「……たぶん」セレバーが答える。
そして内心で思った。
『……少なくとも、また死ななくてよかった』




