第1章 第3話:仲間との出会い。
「それ、魔法だったのか?」
セレバーが感心したように尋ねると、金髪の男は首を横に振った。
「魔法じゃねえよ、兄貴。これは『術』だ」
「……なるほど」
セレバーは地面に倒れている傭兵たちを眺めながら答えた。
「この街の名前は?」
「ヒドラだ」
すでに日は暮れかけていた。空を見上げると、三つの月が三角形を描くように浮かんでいる。下に二つ、上に一つ。
『月が三つもあるなんて……どうなってんだ、この世界は』
「今日って何日だ?」
「十一月二十九日だよ」
二人は戻って報酬を受け取った。三十リリオスを山分けする。
この世界で初めて、セレバーは何も苦しみを味わわずに金を手に入れた。
「お前の名前は?」
「ブレンダン・アルノール。この街の防衛隊の一員だ」
「すげぇ! 俺はセレバー・デ・ラ・ロサ・ジェネシス」
「セレバー、お前はどこに住んでるんだ?」
「実はここらじゃなくて……住む場所もない」
「なら防衛隊に入れよ。そうすれば住む場所はできる」
「急だな」
「他に選択肢ねえだろ。それに、ちょうど一人足りねえんだ」
「……まあ、そうだな」
セレバーは頷き、二人は街の王の小さな邸宅へ向かった。
そこでセレバーは王アレノールに紹介された。王は二人を見下すような態度だった。
ブレンダンが切り出す。
「彼を最後の隊員にしてもいいでしょうか」
「構わんが……お前は術が使えるのか? それとも戦えるのか?」
「体術はそこそこできますが……最近は少し弱ってます」
王は一度拒否した。
だがブレンダンが食い下がる。
「お願いいたします、陛下。彼には住む場所がありません。それに我々には最後の一人が必要なんです」
王はセレバーを困窮者だと思い、憐れみから受け入れた。
「よかろう。だがしっかり訓練し、結果を出せ」
「あとは出ていけ」
「……で、どうする?」
「安心しろ。他の隊員に紹介してやる」
邸宅を出た二人は、街の中心を歩き始めた。
セレバーは持っていた弁当を取り出し、食べ始めた。
「ブレンダン、ここで武器はどこで売ってる?」
「あそこの屋台だ」
指さされた方向へ向かう。弁当を食べ終え、屋台の前に立った。
「一番強い銃はどれだ?」
「このマグナムだな。弾込みで十五リリオスだ」
「それにする!」
セレバーはポケットから金を出し、マグナムを購入した。腰に収める。
「これで危ない時は助かるな」
「術があるのに、なんで銃があるんだ?」
「まず、魔法じゃねえ。次に……本当に知らねえんだな、お前」
ブレンダンは少し間を置いて続けた。
「長い話だがな。人類が一時期、術を使わなくなった時代があった。それで自分たちを守るためにいろいろ発明したんだ。人間は人間を殺し続けるのをやめられないからな。こうなった」
「この街で銃が許されてるのは?」
「小さな街じゃ白兵武器も銃も持ちやすい、っていう意味不明な法律があるからだ」
二人は再び邸宅に戻り、防衛隊の部屋へ向かった。隊員たちが揃っている。
部屋の入り口近くにいた、黒い髪の浅黒い肌の青年が最初に声をかけた。
「よう、ブレンダン!」
「ようやくまた来れたな、カレブ!」
少し乱れた黒髪の青年も続ける。
「おかえり、兄貴」
「ケヴィン、聞いてくれ。最後の隊員を見つけたぞ」
ブレンダンがセレバーを指さす。
「よかった。見つかって」
ピンクの髪の少女が、優しい笑みを浮かべて言った。
「それが最後の一人?」
小柄な褐色肌の少女が、白い髪に金色の縁取りを持つ髪を揺らしながら、嘲るような声で言った。
「心配すんな、ダイアン。俺が鍛えれば怪物になるぜ!」
ブレンダンがセレバーの背中を叩く。
「本気? 全然強そうに見えないし、なんか落ち込んでる顔してるし」
ダイアンが皮肉っぽく返す。
「ちょっといじめすぎじゃねえか、お嬢さん」
セレバーが言い返すと、ダイアンは肩をすくめた。
「別に。名前くらい言えよ」
「セレバー・デ・ラ・ロサ・ジェネシスだ」
「綺麗な名前ね。私はハナ・アリレル」
ハナは身長およそ一メートル六十五センチ。短いピンクの髪に青い瞳、人を引きつけるような笑顔を持っていた。
「俺はケヴィン・アルノール」
身長は一メートル六十八センチほど。黒い髪に茶色い瞳、どこか気の抜けた表情。
「ダイアン・キッターよ」
身長一メートル六十センチ。褐色の肌に、白い波打つ髪と金色の縁取り。黄金のような黄色い瞳。すらりとした体躯と強い性格。惹かれやすい容姿の少女だった。
「カレブ・カルヴァーリョだ」
身長一メートル七十センチ。黒い髪に黒い瞳。真面目そうな顔つき。
「そのピンクの髪、地毛か? 染めてるのか?」
「地毛だよ」
ハナが答える。
「セレバー、お前の属性は何だ?」
ブレンダンが尋ねる。
「属性って何だ?」
別の世界から来たセレバーは当然知らなかった。
「俺が胸に手を当てればわかる」
ケヴィンが言う。
「どんな属性があるんだ?」
ダイアンが答えようとした瞬間、打断された。
「属性は――」
「全部で五つだ。火、土、水、風、そして魂。訓練次第で一部の属性は進化する。水属性なら氷の術を部分的に使えるようになるし、風属性なら雷の術を部分的に使えるようになる。土は進化しないが、バリエーションが一番多い。火も進化しないが、最も攻撃的な属性の一つだ。ただし生まれた時に一つしか持てず、一生それしか使えない」
長い説明を終えたブレンダンに、遮られたダイアンが肩を殴る。
「今度から私が話す時に遮るんじゃないわよ、バカ!」
「いてっ!」
ブレンダンが笑いながら言うと、ハナが口を押さえて笑った。
「ちょっと待ってくれ。実はもう少し違うんだ。術には二種類ある。属性術と、純粋な蓮の術だ。属性術の場合、『進化』というより、特定の属性を持って生まれた人間がその強化版を学びやすいってだけだ。一つの属性に縛られるわけじゃない。純粋な蓮の術は、かなり上級の術師しか使えない」
「俺の属性は?」
セレバーがケヴィンに尋ねる。
ケヴィンが胸に手を当て、少ししてから言った。
「……魂だ」
「強そうな属性じゃねえか!」
セレバーが期待を込めて言うと、ブレンダンが首を振った。
「正直、そこまで強くはない。魂属性はサポート向きか、聖職者向きだ」
「……落胆するなよ」
「でも体術の達人にはなれるぞ」
ケヴィンがフォローする。
「魂属性の能力って何だ?」
「敵を弱体化させたり、一時的に力の源を封じたり、味方を強化したり……訓練すれば、人の心を操ることもできる」
「……まあ、悪くないか」
セレバーは少し納得した。
「お前らの属性は?」
「俺は火だ」
ブレンダン。
「私は風」
ダイアン。
「私は水」
ハナ。
「俺は魂」
ケヴィン。
「俺は土だ」
カレブ。
「カレブ、珍しくここにいるね。滅多に顔出さないのに」
ハナが微笑みながら尋ねる。
「今は国の交渉をしてないからな」
カレブが答える。
「とにかく、本格的な訓練は明日からだが、早めに始めよう」
ブレンダンが言う。
「出る前に、年齢を教えてくれ」
セレバーが尋ねた。
「十八歳だ」
ブレンダン。
「十七歳」
ダイアン。
「十八歳」
ハナ。
「十七歳」
ケヴィン。
「十九歳だ」
カレブ。
「お前は、セレバー?」
「十六歳だ」
「ちょっと若くない? うちの仕事に耐えられるかしら」
ダイアンが心配そうに言うと、ブレンダンが笑った。
「大丈夫だ、ダイアン。十六歳ならもうほぼ大人だ。それに俺が鍛えれば、年齢なんてただの数字になる」
二人は防衛隊の訓練室へ向かった。
「すげぇ……」
セレバーが感嘆する。
「まずは自重訓練から始めて、その後俺と組み手だ」
セレバーは頷き、訓練を開始した。二時間後、雨に濡れた犬のような有様で訓練室を出た。
部屋に戻ると、彼は尋ねた。
「風呂はどこだ?」
「あそこよ」
ダイアンが指さす。
風呂を済ませた後、きれいな服がないか尋ねると、部屋に待っていた執事が防衛隊の制服を差し出した。
茶色の頑丈なブーツ、濃い茶色のズボン、白いシャツに茶色のベスト。
セレバーが着替えたところで、執事が王が呼んでいると伝えた。
会議室に向かうと、王が言った。
「隣町への物資運搬の任務だ」
セレバーは少し高揚した。皆が準備を始め、邸宅を出て厩舎へ向かい、馬車に乗り込んだ。
馬車の中でセレバーが尋ねる。
「兄貴、この辺は安全か?」
「いや、どこも危険だらけだ」
ブレンダンが窓の外を指さす。角のある狼たちが馬車を追いかけてきた。
「あれは『呪われた狼』だ」




