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イケメンでモテるけど直ぐ振られる男子と、地味目だけどモテてすぐ振る女子のお話  作者: tosa


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16/26

夏休みの前日②

 教室の開かれた窓からは、時折風が吹きカーテンを揺らしていた。人気の無い教室内は、昼間にも関わらずどこか寂しい雰囲気が漂っていた。


  優仁の練習風景を見る為に自分のクラスに来た筈のまひるは、普段会話を交わす事のない相手と向かい合っていた。


「······戸室坂さん。私ね。以前よりだいぶ前向きにはなったの。こんな面倒臭い私を必死に笑わせようとする麻痺棚君や、クラスで孤立している私に話しかけてくれる東魁君。他人に興味なんて無かったけど、こんないい人達もいるんだなって」


「······そ、そうなんだ」


「両親にも迷惑かけっぱなしで本当に申し訳ないとは思っているの。でも。やっぱり全てに優先して人生って長い時間が私には煩わしいの」


「さ、佐為北さん。わ、私ね。これまで人に序列をつけてイケメン男子と付き合ってきたんだけど、本当の意味で好きな人なんていなかったの。ううん。違う。人を心から好きになった事なんてなかった。 でも。でもね。今私は好きな人が出来たの。自分でも驚いてて、この気持ちをなんなら世界中に叫びたいくらいのテンションなの。人って恋一つでこんなにも変われるって分かったの。だから佐為北さん。佐為北さんも誰かを好きになったら今の考えが変わるかも」


「······戸室坂さんの雰囲気が変わった理由が分かったわ。今の戸室坂さん。とっても素敵な顔をしている」


「あ、ありがとう。そ、そうだ。麻痺棚君もね。佐為北さんをたくさん笑わせる為にキャラじゃないお笑い路線を目指して必死に勉強しているよ? 図書当番中もお笑いの勉強で夢中でね。仕事もしないでこっちはいい迷惑って言うか」


 まひるが額に汗粒をつけながら必死で説明する。すると、楓は手を口に添えて小さく笑った。


「笑ってごめんね。麻痺棚君の全滑りの笑えない話を思い出したら少し可笑しくなって」


「そ、そうだよね? はっきり言って麻痺棚君ってお笑いのセンスはちょっと厳しいよね?」


  まひるは心の中で麻痺棚に謝罪しつつも、この場は韓国系アイドルイケメンを肴にして楓との会話を繋げようと試みる。そして、夏休みの間に自分と遊ばないかと楓に提案する。


「······戸室坂さんが私と? でも。どうして?」


「い、いや。その。恋に浮かれた脳内お花畑の女子を横で見てたら佐為北さんが面白いんじゃないかって。ど、どうかな?」


「どうして戸室坂さんがそこまで心配してくれるの?」


「······嘘は言いたくないから本当の事を言うね。ごめんだけど佐為北さんの為じゃないの。麻痺棚君の為。麻痺棚君はいつの間にか私の友達になってて。その友達が慣れない事を必死で勉強して貴方を変えようとしている。だから、友達の為に私も何かしたいの。私が佐為北さんにいい影響を与えられるなんて不遜な事は思ってないよ。でも。私に出来る事はそれくらいしかなくて」


  まひるの言葉を黙して聞いていた楓は、クラスメイトの言葉の重さを感じ、まひるの中に誠実さを見いだしていた。


「······ありがとう。戸室坂さん。このクラスって、本当に優しい人達が多いね。私といても退屈だと思うけど、良かったら連絡先を教えて貰える?」


  楓の思いも寄らない友好的な態度。まひるは戸惑いつつも胸の中で狂おしいほどの感情が渦巻いていた。


 自らが心を開いて他人と関わり、相手がそれを受け入れてくれた時のこの歓喜は、まひるの心の肥やしになって行く。


「う、うん。一つ隣の駅前に、とっても美味しい和菓子があってね。そこの塩大福がめちゃくちゃ美味しいの。良かったら今から食べに行かない? 佐為北さんはつぶあん派? それともこしあん派?」


  逸る心の忙しなさをそのままに、まひるは早い口調で楓を買い食いに誘う。


「特に好みは無いけど。戸室坂さんのお勧めを食べてみようかな」


「よし! 行こう。今すぐ行こうよ佐為北さん。暑いから塩大福食べたら塩分も補給出来るよ」


「熱中症予防に?」


「そう。熱中症予防。あ、でもこの暑い中駅まで歩いて行ったらそれこそ熱中症になりかねないよね。こう言うのって何て言ったかな?」


  まひるは首を傾げて真剣に考え込む。一方、楓も唇に指を当てて思案する。


「本末転倒だ!」 「本末転倒。かな」


  窓の外から運動部員達の掛け声が聞こえて来る中、2人は同時に正解を導き出し、その声は見事に重なった。


  まひると楓は自然に表情が緩み、互いに笑みを浮かべ相手を見る。二人は視線を合わせた後、声を出して同時に笑い合った。




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