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役立たず猫テイマーの辺境もふもふ開拓記  作者: ゆもニャ
第五章 冬ごもり

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第33話:親バカのDIY

 爪切りを始めて最初に気づいた。

 ミィちゃんの前足が、手のひらに収まらなかった。


 以前は親指と人差し指で軽く持てた。

 今は両手で包んでも、肉球が少しはみ出た。ずっしりとした重みがあった。爪も、以前より太かった。


 アルトは爪切りを持ったまま、ミィちゃんの足を見た。


「……ミィちゃん、なんだか大きくなりましたね」


「ミィ」


 声が、以前より低かった。


 膝の上を見ると、ミィちゃんの体が太ももからはみ出していた。以前はすっぽりと収まっていた。今は後足が膝の外に垂れていた。それでも乗ってきた。収まる気でいた。


「重いですよ」


「ミィ」


 気にしていないようだった。


 ガインが台所から顔を出した。アルトとミィちゃんを見た。


「ああ、成猫になったな」


「成猫」


「子猫の時期が終わったんだ。神獣の成体、ということだろう」


 アルトはミィちゃんを見た。白くて、丸くて、目が青かった。見た目はそんなに変わっていなかった。ただ、全体的に大きかった。


「そういうものですか」


「そういうものだ」


 ルークが書類から顔を上げた。


「成体になったということは、神威もさらに増すということでしょうね」


「神威」


「まあ、アルトさんには関係ないですね」


 ルークは書類に戻った。


 アルトは爪切りの続きをした。爪が太い分、力が要った。一本ずつ丁寧に切った。ミィちゃんは大人しくしていた。途中でゴロゴロと鳴いた。


「気持ちいいですか」


 ゴロゴロゴロゴロ。


「そうか。よかった」


 翌日から、ミィちゃんがいない時間が増えた。


 朝起きると、膝の上がいなかった。


 コテージの屋根の上にいた。


 後ろ足を揃えて、尾を巻いて座っていた。春の風を受けていた。目が細くなっていた。


 昼になると、庭に出て百匹の猫たちの先頭に立って歩いていた。ゆっくりとした歩調だった。他の猫たちが後ろにぴったりとついていた。


 夕方になると、林の入り口で止まって、遠くを見ていた。


 アルトは膝の上が軽くなった感覚が、ずっと続いていた。


「反抗期でしょうか」アルトが言った。


「猫に反抗期はない」ガインが言った。


「でも前はもっと抱っこさせてくれたのに」


「成猫になっただけだ。諦めろ」


「諦めたくないですね」


 アルトはキャットタワーを見た。ミィちゃんが最近乗らなくなっていた。大きくなって、上の段が少し窮屈になったからかもしれなかった。


 次の日から、アルトは木を削り始めた。


 新しいキャットタワーだった。今度はミィちゃんの体格に合わせて、段を広くした。柱を太くした。一番上の台を、ミィちゃんが伸びをしても余裕がある大きさにした。


 それが終わると、大型の猫用ベッドを作った。


 神獣毛の端切れをバルカンに頼んで詰め物にしてもらって、ガインに木の枠を作ってもらって、アルトが魔力で仕立てた。


「なんで急に色々作り始めたんですか」キースが聞いた。


「ミィちゃんが快適に過ごせるように」


「それはそうですが、一日で三つ作るのは」


「手が動いてしまって」


 キースは手帳に何か書いた。


「ミィちゃんロス、深刻です」と書いたが、アルトには見せなかった。

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