【冷】
【冷】
訓読み:つめ-たい・ひ-える・さ-ます
音読み:レイ
部首:冫
画数:7
意味
1 温度が下がる
2 薄情
3 さびしい。活気がない。
雲のない青空。私たち二人に、強い日差しが容赦なく照りつける。
「暑いねぇ」
「今年一番暑いんじゃないかな」
最近、週末は決まって雨だった。
久しぶりに晴れたので、少し遠くにお出かけした。それがこの結果である。
「かき氷だって! あのお店入ろ」
凝った造りの喫茶店の軒下に吊るされた、赤い「氷」の文字の旗を見つけた。
私は彼の腕を掴んで、半ば無理やりに店へと連れ込む。
「いらっしゃいませ」
「あぁ、涼しい。エアコンって最高」
程なくして、抹茶のかき氷とアイスコーヒーがやってくる。
私はかき氷を一すくい、口へ運ぶ。
「んー、美味しい」
抹茶の香りが鼻腔をくすぐり、甘みが舌を蕩かし、さらに、冷たさが身体の火照りを冷ましていく。
もう一口食べると、頭も冷えて、少し冴えてきた気がする。
「ねぇ、『冷たい』の部首って、『さんずい』の点が一個少ないやつよね」
「そうだよ。『にすい』って言って、寒さや氷に関する漢字に使われるんだ」
「『水』に点を足して『氷』でしょ。なんで、水を表す『さんずい』から点をとったのに、氷を意味するのかしら? 逆じゃない?」
「その発想はなかった」
彼は、アイスコーヒーに溶けていくミルクを見つめていた視線を、私の方へと移した。
「でしょ。氷を表すんだから、点を足して『よんすい』にするべきなのよ」
彼は窓の外のかき氷の旗を見て、アイスコーヒーを一口飲む。
「ははは。確かに、その方が氷っぽいかもしれないね」
「私、ちょっと凄くない?」
「これだけ暑いのに、よく頭が回るね」
「かき氷で頭が冷めたからね」
私はかき氷を大きめにすくって、彼の前に差し出した。
「ありがとう」
彼はそれを食べてすぐ、こめかみを押さえた。
「あら、大丈夫?」
「ん……キーンとした」
「どうして冷たい物を食べるとこめかみが痛むのかしらね……」
私は疑問を口にしつつ、彼よりも大きな一口を食べた。
「ハックション! ズビッ」
盛大にくしゃみをしてしまった。恥ずかしい。私は鼻を押さえながら飛び散った氷を拭いていく。
「急な気温差で体が凍えちゃったんだね」
「そうかも……ズッ」
彼はアイスコーヒーを飲み干す。
「そうだ。君を見て思い出した。『よんすい』ではないけれど、さんずいに四と書いて『泗』という漢字がある」
「どんな意味? 私を見て思い出したんでしょ。クールビューティとか?」
私は座り直して、凛々しい顔をしてみる。が、鼻をすすってしまう。
彼が答えを告げる。
「はなじる」
「な……ちょっと! ひっどーい!」
「ごめんごめん」
「もう許さないんだから!」
「本当にごめん」
「許して欲しいなら、これ食べて」
私は、彼に残りのかき氷を差し出す。彼はキョトンとした。
「ねえ、もう寒くて食べられないの」
「そういうことか。仕方ないな」
彼は笑ってかき氷を平らげた。
そして、くしゃみを一つした。




