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二人で漢字る感じ  作者: M


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7/12

【冷】

【冷】

訓読み:つめ-たい・ひ-える・さ-ます

音読み:レイ

部首:冫

画数:7

意味

 1 温度が下がる

 2 薄情

 3 さびしい。活気がない。



 雲のない青空。私たち二人に、強い日差しが容赦なく照りつける。


「暑いねぇ」

「今年一番暑いんじゃないかな」


 最近、週末は決まって雨だった。

 久しぶりに晴れたので、少し遠くにお出かけした。それがこの結果である。


「かき氷だって! あのお店入ろ」


 凝った造りの喫茶店の軒下に吊るされた、赤い「氷」の文字の旗を見つけた。

 私は彼の腕を掴んで、半ば無理やりに店へと連れ込む。


「いらっしゃいませ」

「あぁ、涼しい。エアコンって最高」


 程なくして、抹茶のかき氷とアイスコーヒーがやってくる。

 私はかき氷を一すくい、口へ運ぶ。


「んー、美味しい」


 抹茶の香りが鼻腔をくすぐり、甘みが舌を蕩かし、さらに、冷たさが身体の火照りを冷ましていく。

 もう一口食べると、頭も冷えて、少し冴えてきた気がする。


「ねぇ、『冷たい』の部首って、『さんずい』の点が一個少ないやつよね」

「そうだよ。『にすい』って言って、寒さや氷に関する漢字に使われるんだ」

「『水』に点を足して『氷』でしょ。なんで、水を表す『さんずい』から点をとったのに、氷を意味するのかしら? 逆じゃない?」

「その発想はなかった」


 彼は、アイスコーヒーに溶けていくミルクを見つめていた視線を、私の方へと移した。


「でしょ。氷を表すんだから、点を足して『よんすい』にするべきなのよ」


 彼は窓の外のかき氷の旗を見て、アイスコーヒーを一口飲む。


「ははは。確かに、その方が氷っぽいかもしれないね」

「私、ちょっと凄くない?」

「これだけ暑いのに、よく頭が回るね」

「かき氷で頭が冷めたからね」


 私はかき氷を大きめにすくって、彼の前に差し出した。


「ありがとう」


 彼はそれを食べてすぐ、こめかみを押さえた。


「あら、大丈夫?」

「ん……キーンとした」

「どうして冷たい物を食べるとこめかみが痛むのかしらね……」


 私は疑問を口にしつつ、彼よりも大きな一口を食べた。


「ハックション! ズビッ」


 盛大にくしゃみをしてしまった。恥ずかしい。私は鼻を押さえながら飛び散った氷を拭いていく。


「急な気温差で体が凍えちゃったんだね」

「そうかも……ズッ」


 彼はアイスコーヒーを飲み干す。


「そうだ。君を見て思い出した。『よんすい』ではないけれど、さんずいに四と書いて『泗』という漢字がある」

「どんな意味? 私を見て思い出したんでしょ。クールビューティとか?」


 私は座り直して、凛々しい顔をしてみる。が、鼻をすすってしまう。

 彼が答えを告げる。


「はなじる」

「な……ちょっと! ひっどーい!」

「ごめんごめん」

「もう許さないんだから!」

「本当にごめん」

「許して欲しいなら、これ食べて」


 私は、彼に残りのかき氷を差し出す。彼はキョトンとした。


「ねえ、もう寒くて食べられないの」

「そういうことか。仕方ないな」


 彼は笑ってかき氷を平らげた。

 そして、くしゃみを一つした。


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