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あなたと漢字を偏愛する  作者: M


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6/6

【日】

【日】

訓読み:ひ・か

音読み:ニチ・ジツ

部首:日

画数:4

意味

 1 太陽

 2 昼間

 3 一昼夜

 4 七曜の一つ

 5 日本



 私は、三角にカットされたスイカをかじり、そして呻いた。


「一昨日もスイカ、昨日も今日もスイカ。明日も明後日もスイカ、スイカ……」

「福引でスイカ四玉を引き当てたのは君じゃないか」


 彼はそう言いながら、スイカを切っている。


「甘くて美味しいんだけど、さすがに毎日だと飽きるわ」

「傷む前に食べなきゃ、もったいないよ」


 私は、一口かじったスイカを見つめる。


「ねぇ。一昨日、昨日、今日、明日、明後日って、『日』って漢字の読みが全部違うよね」

「それは、熟字訓って言って、その熟語だけの特別な読み方なんだ。『日』という漢字の読みとは少し違うよ」

「そうなんだ」

「雪崩とか、田舎とか……今食べてるスイカも、西瓜っていう熟字訓だよ」


 彼はスイカを細かい四角形に刻み、袋に入れていく。凍らせてスムージーにしてみると言っていた。


「でも、『日』の読みは多いよ。例えば、『本日三日日曜日』って、ほん『じつ』、みっ『か』、『にち』よう『び』で、全部違う読みなんだ」

「あ、すごい」

「『生』という字はもっと多くて、生きる、生む……」


 私は食べかけのスイカを彼の口に押し込む。


「同じ字なのに、いろんな読みがあるんだね」


 彼はスイカを味わうと「君みたいだね」と呟く。


「なんで?」

「同じ君なのに、いろんな表情があるだろう」


 私は笑った。


「あなたにも、いろんな読みがありそうね。そんなキザっぽい一面があるなんて」

「良いじゃないか」


 彼は恥ずかしそうに下を向いて、スイカの袋を冷凍庫に片付ける。


 今日みたいな日常が、日々続いて欲しいと私は思った。

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