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あなたと漢字を偏愛する  作者: M


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5/5

【粂】

【粂】

訓読み:くめ

部首:米

画数:9

意味

 1 「久」と「米」を合わせて作られた国字。地名、人名に使われる。



「こんな苗字があるのね。『久米』が縦に合体してるわ」


 私は、引越業者にもらった名刺を彼に見せる。

 それを受け取った彼は「合字だね」と答える。


「合字?」

「二つの文字をくっつけて、一つの文字にするのさ。他の漢字だと『麿』も『麻呂』の合字だ。平仮名やアルファベットにも、合字はあるんだよ」


 説明しながらも、彼は引越の見積もりを読んで顔をしかめる。

 私は彼のハの字になった眉を眺めつつ、晩御飯の準備をする。


「へー。この『粂』って漢字、どんな意味があるの?」

「意味は無いよ。音読みも無い。ただ『久米』を合わせた文字ってだけ。ちなみに『久米』という姓は古事記にも登場する由緒ある……」

「そう、もったいない」


 彼は説明を中断されたことより、私の発言が気になったようだ。


「もったいない?」

「ええ。せっかく別の漢字なんだから、意味をつけてあげれば良いのに」

「意味を?」

「文字をくっつけただけなんて、寂しいじゃない。やっぱり漢字ごとに意味があった方がいいでしょう」

「そんなこと、思いつきすらしなかったよ。君のそういう考え、いつも素敵だと思う」


 私は人差し指を顎に当て、少し頭を巡らせる。

 今度は彼が、私の顔を楽しそうに眺めている。


「そうね。ずっとパンばかりで、『久しぶりに食べた米』という意味はどう?」

「どう……って、それは、うちのことじゃないか」


 彼はそう言って笑った。

 米価の高騰で、最近パン食やパスタが続いていた。やっとお米の値段が落ち着いてきたので、今日は久しぶりに炊飯器でご飯を炊いたのだ。


「久しぶりのお米のご飯。それが『粂』」

「そんなことに専用の漢字が要るかなぁ?」


 彼が首を傾げるので、私は茶碗にご飯を盛る。


「粂です」


 彼は腹を抱えて崩れ落ちた。

 二人で食べたご飯は、とても美味しく炊けていた。


名前に粂のつく皆様、ごめんなさい。

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