【華】
【華】
訓読み:はな・しろ-い
音読み:カ・ケ
部首:艹
画数:10
意味
1 花
2 美しい、栄える
3 白い、おしろい
4 中国の自称
幻想的にライトアップされた森の中を二人で歩く。
夜の植物園。
まるで、異世界のようだった。
昼間に来ても、緑と茶色しか見えない植物園。木々に囲まれた癒やしの場所ではあるけれど、ただそれだけ。
まあ、彼からすれば、この木はあーだ、この草はどーだと、学びを楽しめるんだろうけれど……。
「植物園じゃなくて、まるで美術館だね」
彼の言うとおり、今夜の木々は、様々な色でライトアップされたアート作品だ。
時間とともに照明の色が変わっていく様子は、ただ見ているだけでも飽きない。
空いていたベンチに、二人並んで腰掛ける。
「不思議だね。花は咲いていないのに、華やかに見える」
彼の呟きに、私は何となく違和感を覚える。
「なんで『花やか』じゃないんだろ。『花』と『華』ってどう違うの?」
「また、突然に」
「花が咲いたように美しいから『はなやか』なんでしょ。『花やか』で良いじゃん」
ライトアップの光が彼の顔に当たり、その表情を前衛芸術のように際立たせる。
どう説明しようかなと思案している時の顔が、絵画のようだ。
「あまり見ないけど『花やか』も使うよ。花形とか花道なんてのは、その意味だよ」
「でも、『花』より『華』の方が華やかな感じがするじゃない」
彼は「そうだね」と言って、私の方を向く。
「元々『花』は、『華』の俗字だったんだ。カの音と同じ「化」を当てたとも言われてる」
「じゃあ、やっぱり同じ字じゃない」
「それが時代とともに意味が変わって、植物の花と、美しさの華として別々の字になっていったんだよ。君みたいに『華』の方が豪華に感じる人がいたのかもね」
ライトアップが切り替わり、二人の顔を照らす色も変わっていく。
「私たちも、きっと変わっていくんだよね」
「君は豪華になって、二人が別々になっていくって?」
彼の顔に照明の影がかかる。
私は、彼の方こそ変わってしまうんじゃないかという不安を飲み込む。
「そうじゃないけど……」
「漢字の意味なんて、数百年、数千年の間に沢山の人が関わるから変わるんだよ。人間一人は、たいして変わらないよ」
「そうかしら?」
彼はおもむろに立ち上がる。
「それに、君がどれだけ変わったとしても、君とは別々にならないよ」
そして私に手を伸ばす。
ここで「本当かしら」なんて聞くのは野暮ったいわ。
私は、その手を取って立ち上がる。
「行きましょう。一緒に」
私たちは手を繋いで、花のない華やかな並木道を歩いていく。




