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二人で漢字る感じ  作者: M


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14/16

【華】

【華】

訓読み:はな・しろ-い

音読み:カ・ケ

部首:艹

画数:10

意味

 1 花

 2 美しい、栄える

 3 白い、おしろい

 4 中国の自称



 幻想的にライトアップされた森の中を二人で歩く。

 夜の植物園。

 まるで、異世界のようだった。


 昼間に来ても、緑と茶色しか見えない植物園。木々に囲まれた癒やしの場所ではあるけれど、ただそれだけ。

 まあ、彼からすれば、この木はあーだ、この草はどーだと、学びを楽しめるんだろうけれど……。


「植物園じゃなくて、まるで美術館だね」


 彼の言うとおり、今夜の木々は、様々な色でライトアップされたアート作品だ。

 時間とともに照明の色が変わっていく様子は、ただ見ているだけでも飽きない。

 空いていたベンチに、二人並んで腰掛ける。


「不思議だね。花は咲いていないのに、華やかに見える」


 彼の呟きに、私は何となく違和感を覚える。


「なんで『花やか』じゃないんだろ。『花』と『華』ってどう違うの?」

「また、突然に」

「花が咲いたように美しいから『はなやか』なんでしょ。『花やか』で良いじゃん」


 ライトアップの光が彼の顔に当たり、その表情を前衛芸術のように際立たせる。

 どう説明しようかなと思案している時の顔が、絵画のようだ。


「あまり見ないけど『花やか』も使うよ。花形とか花道なんてのは、その意味だよ」

「でも、『花』より『華』の方が華やかな感じがするじゃない」


 彼は「そうだね」と言って、私の方を向く。


「元々『花』は、『華』の俗字だったんだ。カの音と同じ「化」を当てたとも言われてる」

「じゃあ、やっぱり同じ字じゃない」

「それが時代とともに意味が変わって、植物の花と、美しさの華として別々の字になっていったんだよ。君みたいに『華』の方が豪華に感じる人がいたのかもね」


 ライトアップが切り替わり、二人の顔を照らす色も変わっていく。


「私たちも、きっと変わっていくんだよね」

「君は豪華になって、二人が別々になっていくって?」


 彼の顔に照明の影がかかる。

 私は、彼の方こそ変わってしまうんじゃないかという不安を飲み込む。


「そうじゃないけど……」

「漢字の意味なんて、数百年、数千年の間に沢山の人が関わるから変わるんだよ。人間一人は、たいして変わらないよ」

「そうかしら?」


 彼はおもむろに立ち上がる。


「それに、君がどれだけ変わったとしても、君とは別々にならないよ」


 そして私に手を伸ばす。

 ここで「本当かしら」なんて聞くのは野暮ったいわ。

 私は、その手を取って立ち上がる。


「行きましょう。一緒に」


 私たちは手を繋いで、花のない華やかな並木道を歩いていく。

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