【儚】
【儚】
訓読み:はかな-い、くら-い
音読み:ボウ、モウ
部首:人
画数:15
意味
1 束の間であっけない
2 あてにならない
3 暗い。ぼんやりとした
彼はイヤホンで音楽を聞いていた。
私は右手のカップを彼の前に、左手のグラスを自分の前に置く。
「何聞いてるの?」
「『強く儚い者たち』って歌」
「……へー、強くて儚いんだ」
彼は少しだけ笑った。
「タイトルだけで無理に反応しようとしなくても良いよ。知らない曲でしょ」
「うん、ごめん」
「良い歌だよ。聴いてみる?」
彼はスマホを、イヤホンからスピーカーに切り替えた。
「とても美しい曲ね。伸びやかで綺麗な声」
「好きな歌手なんだ」
音楽が終わり、彼はスマホを片付ける。
「感想ある?」
「夢みたいな雰囲気の歌なのに、現実を突きつけられたような怖さがある」
彼は微笑んだ。
「人は、強くて儚いだろ?」
彼の言葉に、私は頷いた。今度は心からそう思った。
儚い。
あっと言う間に終わってしまうイメージ。
「人の夢と書いて『儚い』って、皮肉っぽいよね。将来の夢なんて、儚いものなのかな」
「『夢』が将来の夢として使われるようになったのは明治以降なんだ。寝ている時に見る『夢』の方は、虚しくて儚いものって考えがあったのかもしれないね」
私はその考えに違和感を覚える。
「うーん。でも、儚いものって美しいイメージあるよね」
「え、そうかな?」
「桜や線香花火、シャボン玉とか。儚いからこそ美しいみたいな」
彼は「あー」と言いながら納得する。
「つまり、人の夢は美しいってことじゃないかしら。それは将来の夢も含めて」
「そういう君のポジティブな感じ方、大好きだよ」
「そう?」
褒められて、ちょっと嬉しい。
「きっと、どんな夢だって美しいんだろうね」
「私の夢も美しいかな?」
彼は座り直して、軽く頬杖をつく。
ちょっと砕けた格好だけど、彼が聞き上手になるのはこの体勢。
「その夢、聞かせてよ」
「うん」




