379話 6月25日#08〜オタクたちの戦い①〜
「……あー、かったりぃー!いつまで湧き出てくるつもりだ、こいつら?」
ミライが、ぶつくさ文句を言っている。
――ちなみに『こいつら』とは、ゾンビと忍者の分身のこと。わざわざ言わなくてもわかるかもしれないけど。
「おい、レオ!お前、この状況で何か使えそうなもの持ってねえのかよ?」
その質問に、あたしは恐る恐る答えた。
「……『ソーラーウィンド』で霧払いするくらいしか……」
「……は!?」
「『忍法:手裏剣の術』!」
ファールの分身たちが一斉に、変わった形の剣――手裏剣?――を投げつけてきた。
「『パワーガード』!」
――一応魔法盾張ったけど、間に合わなくて、いくつかミライに当たってしまった。
「いってえな!こいつらマジでウゼェ!」
ミライは、体に刺さっている『手裏剣』を全部抜いて、地面に叩きつけた。
――というか、血がぼたぼた落ちてるけど、『痛い』で済んでるの……?
「あー。めんどくせぇ」ミライは、また『鏡』から何かを取り出している。「……レオ。シールドの準備しとけ」
「……う、うん……」
――ミライは、何だかんだであたしのことを信用してくれているみたい。
防御は、完全にあたしに任せている。
ミライは、手に持った何かを空に向かって放り投げた。
それは、飛んでいく途中で大型化し、大きな音を立てて空へ舞い上がった。
「何か形がドラゴンに似てる……あれ何……?」
「『飛行機』だ。あと30年もすれば実用化される」
――律儀に解説もしてくれる。
「そろそろ爆弾が落ちるぞ」
「『パワーガード』!」
――ドオオオォォオォン!!
――すごい。音も大きいけど、爆発の大きさも半端じゃない。
しかも、その爆弾が、『飛行機』から何十個も落ちてくる。
周辺にいたゾンビと忍者が、あっという間にほぼ全て燃え尽きた。
「一昨日の戦いでも思ったでござるが、」唯一生き残ったファールの分身が話しかけてきた。「……おぬし、やるな」
「……お前なんかに褒められても、嬉しくねえし」
「うーむ……『褒めて油断している隙を狙う』作戦は、失敗に終わったでござるな」
「……つーか、鬱陶しいことしてねえで、早く『本体』出せ!……どうせ、ボコボコにやられるのが怖くて出さねーだろーけど!」
ミライは怒りに任せて、忍者を蹴り飛ばした。
「痛っ!……お、おぬしなんか、怖くないでござる!」
「なら、俺たちを攻撃してみろ!!」
「わかったでござる!!」
すると、あたしは目の端で、『1人のファール』が走ってくるのを確認した。屋根の上を走っている。
「『忍法:風車の術』!」
通りの向こうの方から、「ひゅー」と風が吹いてきた。
「……足場、作ってやる」
あたしが返事する前に、ミライが一歩前に出た。
「『ラインアウト』」
すると、あたしたちのいるところと、屋根の上の『ファール』がいるところを、1本の白い『線』が結んだ。
「……ありがと」
あたしは、『線』の上を走り始めた。強い風が吹き始めたけど、負けずに上を向き、走り続けた。
「おぬしでは、拙者に追いつくのは、無理でござる!」
そう言って、『ファール』――本物のファール――は、向きを変えて、あたしから遠ざかろうとした。
「……たああああ!!!」
あたしはゴーレムの足をまといながら、その場を飛んで片足を前に伸ばした。
ファールはゴーレムの足に蹴り飛ばされ、屋根から転げ落ちた。
あたしは、ゴーレムを素早く収納(つまり、本来の自分の足に戻)し、ファールのそばに着地した。ファールは、地面に伸びていた。
「あ……足を大きくさせるのは……反則でござる……」
「……これは、かけっこじゃない……」
「……おっしゃるとおりでござる……」
???:ところで、ファール君。君はなぜそんなに忍者が好きなのかな?コスプレまでして。
ファール:も、もしやおぬし……神マンガ『忍者大合戦!!』を知らぬでござるか?拙者は十歳の頃に出会ったでござるが……もしよければ、詳しく教えて進ぜようでござる!
???:……あ、あの、ファール君……?
ファール:あれは、しとしとと雨が降る午後、上様(『ふたご座の星霊』)に街の様子を見せてもらった時でござる。大通りにある本屋の店頭であのマンガの1巻目を見つけた拙者は、表紙を見ただけで衝撃を受けたでござる!……あの、黒装束に変わった形の武器!あのカッコよさときたら……!
???:……どうやら、大好きな忍者のマンガの影響みたいです。
ファール:あの、赤忍者隊と白忍者隊のぶつかり合いが、まず最初の見どころでござる!赤忍者隊の隊長、ショウゾウが敵のウラをかくために、相棒のカラス、サスケを敵のし……(以下略)




