380話 6月25日#09〜オタクたちの戦い②〜
ふと目線を動かすと、ミライがこちらへ走ってくるのが見えた。
何をするのかと思ったら、走った勢いでファールを思いっきり蹴り飛ばした。
「痛いでござるー!!」
「……お前な」ミライはファールを睨みつけた。「いい加減、状況を理解しろ。俺たちには、お前の遊びに付き合っている暇はないんだ!」
「これは『遊び』ではないでござる!」ファールは首を振った。「拙者が『遊んでる』なら、おぬしも『遊んでる』でござる!」
「……は?」
「拙者は『忍者オタク』である自覚があるでござるが、おぬしも『兵器オタク』だと思うでござる!『兵器』で遊んでるでござる!!」
「……あー!そうだよ!お前なんかと一緒にされるのは、癪だがな!」
――あたしは、自分がリアに『運動オタク』と呼ばれたことを思い出した。
「……とにかく、行くぞ!」と、ミライはあたしに言った。「こんなの相手にするだけ無駄だ」
ミライは、くるりとファールに背を向けて歩き出した。
その時、ファールが不穏な動きを見せた。
あたしは振り返ってシールドを張ろうとしたけど、こちらに戻ってきたミライが、突然あたしを横へ強く突き飛ばした。
あたしはよろけて、尻もちをついた。
「『ふたご座の感動』!!」
ファールは、そう叫んだ。いつもの『忍法:何とかの術』とは違う――星霊魔法の奥義。
ミライの周りに、5つの小さな竜巻みたいな旋風が取り囲んだ。
旋風は隙間なく円形に並んでいて、お互いに撚った糸みたいに絡みついている。
「ぐあああああ…………!!!」
強風のゴウゴウと吹く音に混ざって、ミライの叫ぶ声が、かすかに聞こえてきた。
――ミライは、あたしを守ろうとしてくれた。奥義にはシールドが効かないから、突き飛ばして代わりに犠牲になる以外なかった。
――でも、よくそのことに気づいたよね。未来の様子を見る力を使ったのかな?
旋風が弱まり、徐々に消えていくと、ミライは支えを失って地面に倒れた。体には、無数の切り傷がある。
「どうだ!ざまあみろ!」
ファールは、もう勝った気でいる。
あたしはざっと周りを見た。ファールの分身が、あたしたちの周りにたくさん現れた。
「……おぬしはレオであろう?おぬしの師匠の『しし座の星霊』と一緒で、1人ずつしか倒せないのであろう?……つまり、この勝負の勝者は拙者でござる!!」
「『グラビティシャックルス』!」
「悪あがきは、よす……う!動けない……!?」
「たあああああああ!!」
あたしは、ファールに向かって走った。ファールは、重くなった体を何とか動かそうとしている。
そして、重力が元に戻ったのと同時に、あたしはファールに抱きついた。
「え!?あの、おねえさ……」
「『スーパーノヴァ』!!!」
――あたしは、自爆した。
周辺の建物が吹き飛んでしまったが、ファールの分身も一緒に吹き飛んだ。
そして、本物のファールは……
「ぐは……も、もうダメ……でご……」
ピクリとも動かなくなった。
あたしは、ミライのそばへ駆け寄った。
ミライも気絶しているようで、全く動く様子がない。
「そうだ……傷を消毒する薬と包帯を……」
あたしが収納から『救急箱』を取り出していると、やがてミライがゆっくり目を開いた。
「……あー。気絶してたのか、俺……」
「起きてよかった……」
あたしは、ミライの腕にできた大きな傷に薬を塗りこんだ。
「いっっってっっ!その薬、めっちゃ染みるっっっ!」
「うん……でも、大丈夫……傷の治りも早くしてくれるから……」
「……お前、手慣れているな」
「修行中、たくさん傷作ったから……覚えた……」
「どんな修行してたんだ!?」
ミライの応急処置が終わり、あたしが救急箱を片づけている最中に、ミライが立ち上がった。
「……分身がいねえな」
「……本人が、気絶してるから……」
あたしがファールを指をさすと、ミライはそちらを向いて、目を丸くした。
「……お前、何した?」
「あとはゾンビだけ……空賊のキャプテンが来るまで、頑張らないと……」
「……質問に答えろ」
あたしとミライは、ゾンビを倒しながら、空賊の本隊が来るはずの方向へ進んでいった。
その途中で、ミライがぼそっとつぶやいた。
「……ありがとう……」
「……こちらこそ……」
あたしは、ミライの方へ顔を向けた。
その時初めて、ミライがふふっと笑ったのを見た。
ミライも一応未来がわかるので、たまーに『未来に起こる危険』を予知します。あとは、趣味で『未来の武器・兵器』を学ぶのに使っています。




