377話 6月25日#06〜相棒の名前②〜
『ゾンビ』と『忍者』……奇妙な取り合わせだが、2つが合わさると、厄介な相手となった。
「『忍法:撒菱の術』!」
地面に、棘状の道具がばらまかれた――踏むと痛いので、その場から動けない。
そしてそこへ、ゾンビがのろのろとやって来る。ゾンビは痛覚がないので、道具を踏んで血が出ても気にせずどんどん近づいてくる。
どうするべきか少しだけ考えていると、突然スターリアが後ろを向いて走り始めた。
逃げているのかと思ったら、頭上の霧の中から、逆さになった大きな水瓶が姿を現した。
「『ヘリオスフィア』!」
それに気づいたソラが、私とミライを魔法盾で守ってくれた。
「『フィーネクラッシュ』!」
水瓶から強い圧力が加わり、我々はシールドに押しつぶされそうになった。私とミライもシールドを押し上げ、圧力が消えるまで何とか耐えきった。
一方、水瓶の下にいたゾンビは粉砕され、忍者は次々とピンク色の煙を残して消えていった。
「……何をするでござる!」
スターリアの横に、忍者が現れた。おそらく、こいつも分身だ。
何やら言い争っている2人を横目に、私はソラとミライに向かって言った。
「私が、この場からスターリアを引き離す……後のことは、2人に任せる」
「……わかった……!」
「……チッ!やってやるよ!」
返事を聞いた私は『植物』の芽の先端に乗り、『ビーンストーク』でスターリアのすぐそばまで近づいていった。スターリアはこちらを見てから、どこかへ走り去っていこうとする。
――ズドーーン!!
後ろの方から爆発音が聞こえてきた。たぶん、ミライの『ロケット砲』か何かの攻撃によるものだろう。
私は『植物』の芽に乗りながら、ふとその『植物』についての記憶を思い出した。
――10年ほど前、魔法で初めて植物の芽を生やすことができるようになった時、義母がこんなことを言った。
「その『芽』に、名前をつけてごらん」
「……え?何で?」私は当然、そう訊ねた。
「あなたはこの先ずっと、その子を頼りに生きていくの。だから、その子を大切に育てるために、名前をつけてあげて」
私は、義母の言うとおりに名前をつけることにした。
――そして、考えに考えを重ね、最終的に『植物』に付けた名前は……
「……何しに来た」
ふと見ると、スターリアが宙に浮いていた。見えない足場に乗っているようだ。
「君を監視している」と、私は言った。「もし、戦う意思がないなら、すぐこの場を去って……」
「……確かに、アタシは何度も『痛い目』に遭ってきたから、やりたくなかったんだが……」
スターリアはギターを構えた。
「そう言ったら、ピスケスが『痛くならない』魔法をかけたとか言って……ま、確かにスコルピウスと戦って、痛くはなかった。キモかったけど」
――ここに来る前に、仲間内で戦っていたらしい。
――というのはさておき。
「……『あの魔法』か」
確かめるため、斧を1本スターリアに投げつけた。
――斧はスターリアの体をするりと抜けて、後ろの建物の壁に突き刺さった。
「……なるほど」
「どうせ、てめえはアタシから離れるつもりはないんだろ?……だったら、今すぐここで、てめえを始末する」
――結局、戦う意思があるということか。
私は、植物で地面に刺さった斧を拾い上げると、小さな声で植物の名前を呼んだ。




