375話 6月25日#04
「では、ここで分かれよう」
ウェヌスを覆う霧との境目に近い、高級住宅街らしき場所の一角で、俺たちはピエール号から降りた。
それとほとんど同時に、ピエール号とモルガンが、ピエールネックレスとドラゴンの姿に変身した。
「こう、家と並んだ姿を見ると……めっちゃデカいわね」
リアはそう言って、モルガンを見上げた。
「……これ、どうやって乗るのぅ?」
ミィも、心配そうな顔をした。
「……あ。鞍には私が乗せようか?……カイト以外」
レイがそう提案したが――なぜ俺は抜きなんだ?
「……フツーに乗れそうだから」
「まあ……乗れるけど」
そんなわけで、リア、カヤ、ミィの3人は、レイの魔法で鞍に乗せてもらった。
一番前の席に座った俺は、後ろの3人にサスペンダーの付け方と、ゴーグルをかけることを教えた。
「……そろそろ準備はできたか?」
「……ああ。モルガン、頼む」
モルガンは立ち上がると、大きな翼を広げた。
俺たちは『街で戦う組』の5人に見守られながら、大空へと飛び立っていった。
『わー!さすがレジェンダリさん……!』ピエールネックレス|(カヤが身につけている)が、大きな声で叫んだ。『すごくいい眺めです!』
「……きゃああ!」俺のすぐ後ろにいるリアも声を上げた。「け、結構スリルある!!」
「貴様ら、我に振り落とされるな……しっかり掴まれ!!」
モルガンはさらに高度を上げた。飛空艇『ピエール号』よりも高く飛んでいる。
『モルガンさん!左手に『川』があるのが見えますか!?』
ピエールネックレスが、風に負けない大きな声で叫んだ。
「ああ」
『その上流にある『滝』が目的地です!ちょっと離れてますけど、頑張ってください!』
「……わかった」
突然モルガンはスピードを上げ、川を見つけてその上を飛び始めた。
しばらく川を遡るように飛んでいたが、次第に川の周囲に急斜面が現れ、川がその合間を縫って蛇行している様子が見えてきた。
やがて、川の周りは建物ではなく木が取り囲むようになった。
その時、あることに気づいた。
「あれは……?」
「兵士の生き残り……かしらね?」
木に隠れるようにして、兵士らしき人がぽつぽつ見つかった。全員ひどい怪我をしていて、頭上を飛ぶ俺たちの姿をぽかんと見つめていた。
「何もしてこないといいんだけど……」
「……そうもいかぬようだな」
人が乗っているのが見えているのか、いないのか。
兵士たちが銃や魔法で攻撃してきた。
「『ウォーターシールド』!」カヤが叫ぶと、モルガンの腹の下に、水が膜のように広がった。
すると銃弾や魔法が、水に弾き返されてこちらに届かなくなった。
「……なかなかよい技を持っているな」
「お褒めいただき、ありがとうございます」
俺たちはシールドに守られながら、どんどん上流へと遡っていった。
それから結構長い時間が経った後、俺たちは『滝』を見つけた。
『滝』は、思っていた以上に大きかった。
今は暑い時期で、水量はそこまで多い方ではないとは思うが、それでもかなりの量の水が100メートルくらいの高さから流れ落ちていた。
モルガンは地面に降り、俺たちが降りるまであたりの様子を見渡していた。
「すごいところだねぇ」ミィが感嘆の声を上げた。
「だが、目的の『神殿』とやらは、一体どこにあるのだ?」
『あ!『滝』の方ではありません』ピエールネックレスの声が聞こえた。『その右手に行ったところに、祠があります。茂みがあって見つけづらいとは思いますが……』
「あ……みんな、ストップ!」
俺が大きな声を上げたので、全員がその場で動かなくなった。
「何だ、『脳筋』?」
「……何か来る」
――ズン、ズン。
低い音と振動が伝わってきた。
「しかも、こちらに近づいてきていますね……」
全員で、互いに背を向けあって、全方位を見渡した。
「な、何が『近づいて』いるの……?」
リアの震える声が聞こえてきた。
「これは……」
あたりに、張り詰めた空気が満たされていくのを感じた。




