374話 6月25日#03
『みなさん!ウェヌスが見えてきました!』
ピエール号の言葉に、全員が船内から甲板へ飛び出した。
「……ん?あれが……ウェヌスか?」モルガンが眉をひそめた。
「う、うそ……ちょっと待って!」
ミィが、船の舳先まで走っていった。
「な、何で……」
ウェヌスは、黒い霧に完全に覆われていた。
しかも、いくつもの煙が立ち上っており、霧も煙も、全体が風に乗って、ゆっくりと回転していた。
「これは……?」
「……一番大変なパターンですね」カヤは、鋭い目で街を見つめた。「あの煙は、『軍』と『星霊使い』が戦った証拠です」
「『戦った』って、今はどうなの?」
リアが訊ねると、カヤは目を伏せた。
「今は……おそらく、兵士で逃げられた方以外はゾンビに……しかも彼らは、武器をそのまま持っていると思います」
「それはつまり……」ソフィアがゆっくり口を開いた。「『武装したゾンビ』がいるってことか?」
「そのとおりです」
「敵の星霊使いは4人全員いるってことだな?」
「それも、そのとおりです」
俺の質問にカヤがそう答えたので、俺は全員をざっと見つめた。
「……星霊使いと対峙する奴と、『月の神殿』へ向かう奴に分かれよう」
「そうだな」ソフィアはこくんと頷いた。
「……では、わたくしは神殿へ参ります」と、カヤは言った。「神殿への入り口を開けるには、わたくしが必要ですので」
「神殿までは我が連れてってやろう」と、モルガンは言った。「鞍にはあと3人乗れるが、どうする?」
「……俺も神殿へ行くか」と、俺は言った。「すぐに『儀式』の準備するなら、俺も行ったほうがいい」
「私は街に残る」と、ソフィア。「アクアリウスは、私が倒す」
「……じゃあ、私も残ろう」と、レイ。「もう1回スコルピウスを焼き焦がす」
「ゲミニは俺がぶっ飛ばす」と、ミライ。「ついでにゾンビも俺の兵器でぶっ飛ばす」
「じゃあ、『ゾンビ製造機』は、僕が2回目のお仕置きするね!」
――テンの明るい声が、逆に何か怖い。
「……んー。じゃ、あたしは『神殿組』だねぇ」ミィは、残ったソラとリアを見つめた。「2人はどうする?」
「あたしは、ここに残る……」と、ソラは言った。「空賊のキャプテンが来たら、2つの石を神殿まで届ける……」
「……じゃ、あたしは残り物の『神殿組』ね」リアは、ふうと息を吐いた。「大丈夫!ゾンビの相手するよりずっと楽なはず!」
「……決まったな」
俺の言葉に、全員が頷いた。
「みんな、ここが正念場だ。絶対に負けられない、過酷な戦いが待ってる」
「だが、気負うな。冷静に対応すれば、必ず勝てる!」
今度は俺がソフィアに頷き、全員で円陣を組んだ。
「全員、無事に神殿で会おう!そして、」
――月の神が真の姿を取り戻した様子を見届けよう!
「……いくぞ!」
『「「「おーーー!!!」」」』
その後で、ピエール号が叫んだ。
『ホントにみなさん、ありがとうございます!ワタクシも本来の姿を取り戻したら、全身全霊をかけ戦い抜いてみせます!!』
「おお!何だか気合が入ってるなあ!」
いつの間にか、ピエール号を取り囲むように空賊たちが飛んでおり、デュカたちが温かい目で俺たちを見ていた。
「てめえらも、後れを取るなよ!」
デュカの号令に、空賊たちがはっきりと返事をした。
「「「おう!!!」」」




