372話 6月25日#01
翌朝。
俺たちはピエール号のダイニングで、普通に食事をとっていた。
その輪の中に、デュカもいた。
「キャプテン率いる本隊が、島から離れて本土に上陸したと、連絡があった」
「いよいよですね」
カヤはすっと目を閉じた。
「『計画』どおり、お前たちが『月の神殿』へ向かう時に、俺とキャプテンの『石』を渡す」と、デュカは言った。「その後のウェヌスのことは、俺たちに任せてくれ!」
「余計なお世話かもしれないが……軍も何してくるかわかんねえから、気をつけてな」
俺がそう言うと、デュカはニカッと笑った。
「おう!お前らも気をつけろよ!」
そしてデュカは、大きな声で笑いながら、ダイニングから去っていった。
デュカがいなくなった後、カヤはゆっくりと目を開けて言った。
「……わたくしたちは、『石』を全て揃えました。しかもみなさん全員、無事にここまでたどり着きました」
『そうですよね!みなさん、よく戦い抜きました!』
ピエール号が、喜んでいた。
『きっと、ワタクシたちが勝ちます!』
「ええ……ですが、少しだけ注意する点がありそうです」
俺は、カヤの方を見た。
「『誰が月の神様を復活させるか』です」
「……それって、どういう意味?」
「おそらく、月の神様と共に旅をしてきた方は知っていると思いますが、月の神様の力を取り戻すには、『石』と『言葉』が必要なんです」
「『言葉』……」ミィは、首を傾げた。「……『呪文』ってことぉ?」
「まあ、そのようなものです……わたくしの予想では、その文は『魔法言語』で読む必要があります」
『……あれ?』ピエール号の不思議そうな声が聞こえてきた。『確か『現代語』でもいいはずなんですが……』
「ええ。普段ならそうです」カヤは首を振った。「ですが、今回は『言語解析』に長けた『てんびん座の星霊使い』が相手ですので、文法的にずっと簡単な『現代語』では、簡単に邪魔されてしまいます」
「……つまり、あの『文章』を『古代言語』で読まないといけない……?」
「あんな長い文章を!?そんなことできる奴が、どこにいるのよ!?」
ソラとリアは、互いに顔を見合わせた。
「……いえ。います」
カヤはきっぱり言いきった。
「カイトさんならできます」
「……え?俺?」
みんなの注目が、今度は俺に集まった。
「カイトさんには、ドゥファンと同じだけの『言語解析能力』があります。あなたが適切なタイミングでその力を使えば、『文章』そのままの言葉を話すことができ、月の神様も復活します」
「え、ど、どうやってやるの?」
――俺は、今まで『呪文』を聞き取ったり、『魔法陣』の文章を読んだりといった使い方で、『石』を利用する――つまり、『現代語』に翻訳することはできた。
だが、『古代言語』そのものを声に出すなんてことは、一度もしたことがない。
「簡単に言うと、カイトさんが能動的に魔法を使えばよいのです」
――すると、カヤは少し言い淀んだ。
「……ですがカイトさんは、そもそも魔法を使ったことがないんですよね……?」
「……あ!で、でも!大丈夫!!」テンはそう言って、俺の肩を叩いた。「簡単なやり方はレクチャーしたから!練習すればできると思うよ!」
「……つってもだな……」
テンが教えてくれた『魔力の流れ』とか、『呼吸の仕方』とかは、全て『想像』の範囲でしか理解していない。
――そしておそらく、俺がその意味を真に理解する日は、永遠に訪れない。
「……じゃあ、練習してみれば?今から♪」
「……みんなで一緒にやれば、楽しいかも……?」
「同じ『星霊魔法』だし、私たちの意見が役に立つかもな!」
「レイさんには悪いけど、僕が一番役に立つと思うよ!何しろ、カイト君と同じで、『一般人』で『星霊魔法』を借りてる人だから!」
一緒に旅してきた仲間たちが、みんなそう言ってくれた。
「カヤ……」俺は戸惑いながら言った。「それ、今から特訓して、できるようなことなのか?」
「……ええ」カヤは頷いた。「わたくしには、そういう未来が視えています」
「……特訓に付き合ってくれるか?」俺は、4人に訊ねた。
4人――レイ、リア、テン、ソラ――は互いに顔を見合わせて、こくんと頷いた。
「「「「もちろん!!」」」」




