368話 6月24日#07
ピエール号は、ユピテルより南のとある草地で、しばらく休んでいた。
空賊たちは、少し離れたところにキャンプを置いた。そのため、俺たちは自分たちで見張りをする必要があった。
俺たちは、見張り役の割り振りを行っていた。
「10人いるから、3、3、4で分けるのはどうだ?」
ソフィアの意見に、異論はなかった。
「じゃぁ、決め方はくじでぇ……」
「……あー!ちょっと待って!!」
ミィの言葉に、慌ててテンが割り込んだ。
俺は、すぐに理由を察した。
「……レイと一緒がいいのか……」
それを聞いたリアが、ため息混じりでテンに言った。
「あんた……アリエスといたがるのはいいんだけど、ちょっとベタベタしすぎじゃない?」
「そ、そんなことないよ……ね、レイさん?」
「……ん?」レイは首を傾げた。
「ぼ、僕と一緒にいるの、嫌じゃないよね……?」
「別に」レイは淡白に言った。「私は読書ができれば、何だっていいんだが」
「……夜の見張り中に、読書するなよ……」
テンも若干、傷ついたようだ。
「僕がいてもいなくても、どっちでもいいってことかな……」
見かねたソフィアが、口を開いた。
「……じゃあ、こうしよう」
――その後の話し合いの結果。
午後10時まで:俺、モルガン、ソフィア
午前2時まで:リア、ソラ、ミィ、ミライ
午前6時まで:レイ、テン、カヤ
――5人でやる見張りより、はるかに気楽で賑やかになりそうだ。
何か事件|(?)が起こりそうでもあるが。
『みなさーん!夜ごはんですよー!!』
ピエール号の外に置いたテーブルには、野菜や肉が大量に置かれていた。その脇に、ピエール号が用意した焼き網セットが置かれており、一部の具材が既に焼かれていた。
『さあ!みんなで!!楽しい『BBQパーティー』をしましょう!!!』
「……これ、完全に遊んでねえか?」
「まあまあ。楽しくやった方が、『乗り越える苦しさ』が軽くなるでしょ?」
不満そうなミライに、テンが楽しそうに話しかけた。
「あらまあ。このタレ美味しいです」
「……リア、好き嫌いはダメ……」
「い、いや!あたしは食べられないわけじゃないのよ!ただ、今はピーマン食べる気分じゃなくて……!」
「……うまうま」
リアはともかく、カヤ、ソラ、レイも満足そうに食べている。
「……屋台食に飽きていたが、ただ焼くだけでこれほど美味しいとは……自宅でやってみるか……?」
「……ま。確かに、かような会も悪くないな」
「いぇーい!何かテンション上がっちゃうぅ!」
ソフィア、モルガン、ミィも、彼女たちなりに楽しんでいるようだ。
「ねえねえ、カイト!」リアが、ピーマンが残っている皿を差し出してきた。「このピーマン、食べていいわよ♪」
「……俺もピーマンは嫌いだ」
「……あんた、さっき食べてたでしょ?」リアは頬を膨らませた。
「そうだっけか?」
「ごまかさないで!」
「ねえねえ、レイさん!」すぐそばで、テンの声が聞こえてきた。「2人で一緒に記念写真撮らない?」
「……どうやって自分を撮るんだ?」
「あのね!いつもは指を、こういう形にして撮るでしょ?でもそうじゃなくて、こうすると……ほら!自分たちを撮れるんだよ!」
「ほお、なるほど」
「ありがと!かわいい君との写真が撮れて、僕嬉しいよ!」
「……あれ?」
――写真の撮り方の説明を聞いているうちに、いつの間にかレイはテンとのツーショットを撮られていた。
「ねえねえ、モルガンさん!」ミィがモルガンに話しかけている。
「何だ、タウルス?」
「ドラゴンってぇ肉食のイメージが強いけどぉ、あなたはキャベツとかも食べるんだねぇ」
「……先ほどレオが言っていたであろう。好き嫌いをしてはダメだ」
「なるほど、『レジェンダリ』さんは他のドラゴンとは違って、好き嫌いをしないんですね!」
カヤの関心する声を聞いて、ミィは「そういうことじゃないと思うんだけどぉ……」と、つぶやいた。
「……な、なあ、レオ……」ミライが、少し緊張してソラに訊ねた。「いつもそんな格好してるが、給仕とかやったことあるのか?」
「……ない……」ソラは首を振った。
「じゃあ、何でそんな……?」
「……あたしに、似合うから……」
「……は?」
――ミライは呆けた顔をしていた。
「みんな楽しそうで、何よりだな、カイト!」ソフィアが俺に話しかけた。
「……そうだな」俺はにっと笑った。「明日の戦いの英気を養えるだろうな」
「あまり気負うな。私たちなら、絶対に勝てる」
「ソフィアもな」
これからが、一番の難関だろう。
――でもきっと、何とかなる。
こんな頼もしい仲間たちと、一緒だから。




