366話 6月24日#05〜3人の故郷〜
現在、ピエール号には10人が乗っている。
闘技士の俺と、ドラゴンのモルガンと、未だに謎多き男テン以外の7人は、みんな星霊使いだ。
みんなで昼食を食べながら話をしていると、星霊使いたちの出身地の話になった。
「ミライの『サトゥルヌス』、リアの『ユピテル』、ソラの『アポロ』、カヤの『ディアナ』には行ったんだけどな」と、俺は言った。「他の3人の故郷へは行ったことないな」
「ねえねえ、どんな場所なの?」
そう訊ねたリアに一番近い席にいたレイが「うーん」と言いながら話をしてくれた。
「修行終えて帰ってきた時が、確か2月くらいで、その時マルス村は雪が積もってたな」
「まっ!そ、そんなに寒いの!?」
「うちの里も降るよ、雪……」
「うそ!あたし、一度も雪見たことないんだけど!」
ソラの追加の説明に、リアは驚愕していた。
レイはその様子を見ながら、また「うーん」と唸った。
「……でも、なぜか村には誰もいなかったんだよな」
「どうしたのぉ?」
ミィの言葉に、レイは「わからん」と首を傾げた。
「なぜか、村の一角にたくさん墓があって、私の墓もなぜかあった」
「……いや、何で!?」
「『遺体』を確認していないのに、死亡したってことになっていたのですか?」
カヤにそう訊ねられ、レイは「うむ。そのようだ」と言った。
「……てことは、レイが修行している間に、村で何かが起こったってことだよな?」
「そうだろうな」レイは、俺の言葉にも頷いた。
「ねえ、レイさん」テンは、隣に座っているレイに地図を渡した。「『マルス村』って、どのあたりにあるの?」
「んー、えーっと……」
レイは、しばらく地図とにらめっこした後、地図のある場所を指さした。
「村の詳しい位置はわからんが、確か下山したら、この街にたどり着いた」
「……『ハルモニア』?」
「川も流れているし、間違いない」
「んー、えーっと、」テンは急に独り言をつぶやき始めた。「何か思い出しそう……えっと……あ!」
指をパチンと鳴らすと、テンは「あれだ!」と叫んだ。
「確か、モンスターの群れが、そのあたりのいくつかの村を壊滅させたってニュース、あったよ!」
「……いつ?」
「5、6年前」
「ど、どんなモンスターなの……?」
リアは不安そうに言った。
「あー。僕もよくわかんないけど、確か……『シャドウ……何とか』みたいな、名前はかっこいいやつ」
「『群れ』……『シャドウ』……」ソラはつぶやくように言った。「『シャドウファング』……?」
「……だったかも!」
「それ……危険なモンスター……影が狼みたいな形になる……人を狩って満足したら、また影に戻る……退治が難しい……」
「……そんなの、絶対会いたくないっ!」
「燃やしたら、どうなる?」
レイの真顔の質問に、ソラは答えた。
「わからない……やってみて……」
「「「……何言ってんの!?」」」
――それから、今度はソフィアの故郷についての話になった。
「私の故郷か……」ソフィアは顎に手を当てて考えた。「『メルクリウス』……あそこはまた、変わった街だったな」
「どのあたりが?」
「街の建物の外壁の色が決まっていて……正確には使う塗料が決められていて……あそこの建物は、みんな空色なんだ」
「何か意味あんのか?」俺は、全てが空色で鮮やかな街並みを想像しながら訊ねた。
「あるとは思うが、一般に知られているのはほぼ都市伝説だな。『ある種のモンスターが嫌がるにおいがついている』とか、『秘密組織が本部を隠すために、街の全ての建物の色を統一しろと強制した』とか」
「ふーん」ミィは首を傾げた。「ふたご座の星霊使いも、同じ街の出身よねぇ?」
「ああ。だが、ほとんど面識はないから、彼がどんな人なのかは、本格的に調べるようになった時に、初めて知った」
「……その点は、あたしとぉ、ドゥファンとは違うわねぇ」
「「「……え?」」」みんなの顔が、ミィに集中した。
「あたし、ドゥファンと同い年なんだけどさぁ。同郷のあの人がどういう子ども時代を過ごしていたか、ちょっと知ってるんだぁ」
「……へえ」ミライが目を細めた。「あんた、見た目としゃべり方の割には、年増なんだな」
「……後で殴る」
「でも、ドゥファンの子ども時代って気になるな」
俺が話を続けるよう促すと、ミィは話し始めた。
「……そもそもあたしたちの故郷のウェヌスはぁ、2つの貴族が土地を分割して、お互いに相手を敵対視してるところでぇ」
「へえ。領主が1人いるわけじゃないんだ」
「そうだねぇ……その貴族たちは、どっちも自分たちこそが正しい『領主』だと思っていて……ドゥファンはそのうちの片方の家に生まれたのぉ……」
――つまり、『領主』の子どもだったのか。
「そのせいか、随分厳しく育てられたみたいでぇ……しかも要領が悪いというかぁ、覚えるのに時間のかかる子で……しかも、『もう1つの『領主』の子』がすごーく優秀だったんで、よく比較されて、すごくその子を恨んでいたんだぁ」
「『もう1つの『領主』の子』?」
「……あたしのこと」
ミィは胸を張った。
「ふふん。あたしぃ、優秀なんだよぉ?」
「……どうりで偉そうだと思った」
「……後で2発目殴る」
しかし、ミィは、「んー」と天井を見上げた。
「修行が始まる前に、あたしはいくつか魔法を覚えていてぇ……ドゥファンに何回勝負しかけられても勝ってたから……まぁ、子どもだったし、手加減なくやってたしぃ……でもぉ、」
「『でも』?」
「他にもいろいろあったみたいでぇ……あたしの師匠の話だとぉ、『てんびん座の星霊』も結構厳しい人らしくてぇ……あと、あたしも驚いたんだけどぉ、『修行』が終わって帰ってきた時に、ドゥファンに弟ができていてぇ……」
「「「え?弟!?」」」
「しかも、その子は物覚えがよかったからか、両親からかわいがられていて、それを知った時のドゥファンの顔が……」
ミィは目を伏せた。
「あたしが知ってるのは、このへんかなぁ。あとは何があったか、あたしもよくわかんない」
それからミィは、「ウェヌスはきれいなトコだよぉ。観光するぶんにはぁ、すごくいい街だからぁ!」と、付け加えた。




