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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
ウェヌス編

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365/373

365話 6月24日#04〜プレゼント〜

 予定どおり、昼すぎにピエール号の準備が終わり、いよいよ出発することになった。



 『『ジャイロコンパス』も、正常に動いていますね!』ピエール号の張り切る声が聞こえてきた。『食料も積んで、みなさん全員を積んで……よし!出発です!』



 ピエール号は離陸し、西の方角へと飛び始めた。



 「へえ、速いね!」甲板にいるテンが、面白そうに目を細めた。「今までの倍ぐらいのスピードが出てるんじゃない?」


 「……風が強すぎて、ページがめくれる。全然本が読めん」



 ムスッとしているレイの様子を見て、テンは慌てて声をかけた。



 「……ほ、ほら、レイさん!見てみて!さっきまでいた空き地が、もうあんな遠くに……!」


 「……あー。こんなデカい体、みんなよく動かせるわよねー……」



 リアは、ほぼ一日中、身長と体重のことで悩んでいた。



 「……いい運動になる……」


 「……レオ。最近わかったけど、あんた運動オタクよね?」


 「運動は、いい習慣……」


 「何だ、貴様ら。こんなところにいたのか」



 甲板に、モルガンが現れた。



 「我は風に当たりに来た。貴様ら邪魔だ、全員今すぐ消えろ」


 「またまたー、そんなこと言ってー!」


 「あたしたちのことは、気にしなくていいわよ」


 「眠いなー。ここで寝るかなー」



 ――誰も、モルガンの命令に従わなかった。



 「……あ、モルガン」ソラは、虚空から黒い日傘を取り出した。「しばらく借りてた……これ……」


 「……貴様にやる」


 「……え?」


 「我からの賜り物として、受け取るがいい」


 「……ありがとう……」


 「そういえば、」俺はモルガンに話しかけた。「どうしてお前、日傘なんか持ち歩いてたんだ?」


 「……人間の体だと、日に焼ける」


 「あら?」リアがこちらを振り向いた。「あんた、意外と美肌とか気にするタイプ?」


 「『熱い』という意味だ」モルガンはふんと鼻を鳴らした。「今はドラゴンになれるからな。日が熱くても鱗が守ってくれる」


 「へー」



 リアは、顔を背けながら、ニヤニヤ笑っていた。



 「……私、そろそろ部屋に帰って寝ようかな……」



 レイがあくびをしながらベンチから立ち上がると、テンが慌ててすぐそばまでやって来た。


 「レイさん、ちょっと待って!」


 「……何?」


 「ちょっと君に渡したいものがあるんだ」



 テンは、帽子から何かを取り出した。



 「じゃーん!見て!」


 「ワラビー……の、ぬいぐるみ?」



 ――いつの間にか、完成してたらしい。



 「うんうん」テンは、とてもうれしそうに微笑んだ。「ワラビー作れたから、これを土台にクアッカを……」


 「うん。かわいいぬいぐるみありがとう」レイが、ほぼ棒読みで答えた。「……あと、そんなにクアッカにこだわらなくてもいいぞ」


 「……え?」


 「もらえるなら、何でも嬉しい」


 「ほ、ホントーー!?」テンが喜んでいる。


 「うん。テンからの贈り物は、みんなかわいい」


 「……やー!やっぱりレイさん、優しくて心が広いねー!僕そういうところ、好きだなー!」


 「……そうか?」


 「うんうん!レイさんは、素直だし、かわいいし、素敵だなと思ってるよ!」


 「……そうか、ありがとう」



 レイは、少しめんどくさそうな顔をしていた。



 「……そろそろ部屋に戻ってもいいか?」


 「あ、うん。時間とって、ごめんね!」



 テンはそう言って、船内へ入る扉を開けた。



 レイがいなくなり、扉を閉じてこちらを振り返った時、ようやくテンは、俺たち全員が唖然として自分を見つめていることに気づいた。



 「……え?みんなどうしたの?」


 「……何、今の『悩殺ワード』のオンパレード……」


 「しかもレイとの会話が、ちゃんと噛み合ってる……」


 「貴様らは2人でいる時、そんな会話をしていたのか……?」


 「な、何か変だった……?」



 ――自覚なかった。



 「……あなたのやってること……完全に、ナンパ……」


 「え……?」



 ソラの言ったひとことに、テンは驚愕した。



 「ぼ……僕、そんなことしてた……?」


 「……まあ、そうやって振り向いてもらえてるなら、それでいいとは思うが」


 「い、いや!普段は、もっと落ち着いて話してるよ?」


 「……絶対ヤバいこと言ってる」


 「え?リアちゃん……『ヤバい』って、具体的に何が?」


 「……あんたも、アリエス並みに鈍感ね」


 「へ?」


 「……でも、謎が1つ解けた……」


 「へ?」



 ――テンは、無自覚のまま、レイを口説き続けている。


 でも、それとは別に、ちゃんとした『信頼関係』ができつつあるんだと思う。たぶん。


 俺たちの想像以上に、テンの想いはレイに届いている……のかもしれない。

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