363話 6月24日#02
その後もみんなでいろいろ話をしたが、ピエール号が飛び立てるまでにはまだ時間が余っていた。
――というわけで、俺は外で模擬戦をすることにした。相手は、魔法を久しく使っていない、やる気満々のレイ。審判役は、ソラ。
「うふふ、楽しみだなー!」
すぐ脇の木陰に座りながら、テンが笑う声が聞こえてきた。
「頑張ってー!レイさーん!!」
「……これ、一応『脳筋』のためにやってるんでしょ?」
横でリアが、はあとため息をついた。
「……ああ。そうだ、レイ」
俺は、レイに話しかけた。
「……ん?」
「少しなら、魔法で攻撃してもいいぞ……俺が死なない程度に」
「……了解」
「では……用意、始め……!!」
やはりレイは、『スピード』より『力』を重視した戦い方をした。
俺が剣の動きを切り替える時の間とか、動きのあちこちでどうしてもできてしまう隙とか、そういうものは一切無視して、とにかく大剣を叩きつけてくる。
――言い換えると、テンとは真逆の攻撃の組み立て方だった。
問題は、俺が力で押し負けていること。
思えば、俺はオールラウンダーに近いが、どちらかというとスピードの方を重視しているから、当たり前といえば当たり前だ。
レイは基本的に、自分に当たりそうな攻撃は、避けずに大剣で防いで対応しているので、それが間に合わなかった時を狙って攻撃する以外、俺に勝機はない。
レイの、相手からの攻撃を防ぐときの素早い対応は、目を見張るものがある。だが、何度も何度も隙をついていくと、そのうちの何回かはレイに当たりそうになる。
敵の一撃必殺の攻撃を避けながら、そういう隙を狙う……一歩間違えば、俺の方がやられそうな戦い方だ。
「……あー。魔法も使った方がいいよなー……?」
「……どうぞ」
俺が許可を出すと、突然レイは、知らない言語で何かをつぶやいた。
「え?……まさか……!?」
俺は、咄嗟に剣を、横向きに構えた。
俺とレイの間に、大きな光る円が現れた――魔法陣だ。
レイがふうと何かを吹き出すような仕草をした時、魔法陣から大きな火炎が噴き出し、俺の剣に直撃した。
俺の剣の魔法陣が発動し、炎そのものは俺には当たらなかったが、勢いで10メートルくらい吹っ飛ばされた。
「……え!?」テンも驚いていた。「レイさん……普通の『魔法陣魔法』も使えるの!?」
「……何か、本読んでたら覚えた」
「覚えただけで使えるようになったの……?」
――テンが、めっちゃ引いていた。
俺は立ち上がって、レイの方を見た。
――確かに、レイが呪文を覚えて魔法が使えるということもすごいが、問題は火力だ。『星霊魔法』と同じくらい強い。
「……レイ」
「ほいほい?」
「呪文使う魔法、あといくつ覚えてる?」
「えーっと……今の入れて5つ」
「……じゃあ、全部やってみてくれ」
「りょーかーい!」
「「……え?」」最後に、ギャラリーたちの戸惑いの声が聞こえてきた。
炎の魔法は厄介だ。
不定形で、重力の影響を受けない代わりに、その時の風向きなどの影響を受ける。いろいろある魔法の中で、どういう避け方をしたらいいか予測するのが一番難しい。
それに、炎に伴って、熱風が吹き上がったり、離れたところにいても熱気で熱くなったりする。
――何かいい対策法はないのだろうか?
「レイ。火の魔法使っていて、一番やりにくいと感じた相手は、どういうやつだ?」
「んー……」レイは少し考え込んだ。「ちょこまか動き回り続ける相手は、苦手かも……」
「……どして?」
「火でダメージが通る範囲は限定的だから、逃げる相手には、どうしても高火力の魔法を使って、全体を焼く必要があるから……かな……?」
「……なるほど」
その特徴は、ミィの地面技と同じ対策方法で、真逆の欠点かもしれない。
「……じゃあ、『ちょこまか動き回り続ける』から、どんどん魔法使ってこい!」
――と言ったものの、避けるのは結構難しかった。
火が地面から噴き出てきたり、雨みたいに上から降ってきたり、銃弾みたいな火が追尾してきたり――てか、何で今までこういう魔法を使わなかったんだ?
「……呪文を唱えるのが面倒くさい」
「わー。レイさんらしいー」
なぜかテンが喜んでいた。
レイが呪文を唱えて、俺の目の前に魔法陣が現れた。俺は避けようと右へかわして……
「……え?」
――俺の進行方向にも、魔法陣が現れた。あと、真後ろにも。
俺は避ける間もなく、三方向にある魔法陣から噴き出した炎に、黒焦げになるまで焼かれてしまった……




