362話 6月24日#01
翌日。
少し遅めの時刻に起きた俺たちは、朝食を食べながらデュカの話を聞いていた。
「……というふうに、俺たちはそれとなくこの飛空艇の周りを飛んで警戒するから、お前たちは好きなルートで目的地へ移動するといい」
「あたしたちの目的地ってぇ、『ウェヌス』でいいんだよねぇ?」
ミィがそう訊ねると、ソフィアはこくんと頷いた。
「ここから西に行くと、『イカリオス』経由で王都『ユピテル』まで行ける。そこの南西方向へ向かうと、いくつかの街を経て『ウェヌス』に着く……が、」
ソフィアは、頭を掻いた。
「『飛空艇』でいくと、夜通しで飛び続けないと、数日はかかるな……」
「……あ、じゃあ、『アレ』使うか?」
デュカは、俺たちの顔を見回した。
「……『アレ』?」
「この飛空艇が『普通の飛空艇』と同じ推進装置を使ってるなら、『アレ』使えるぞ!」
『えっと、『推進装置』は普通の飛空艇と全く同じです』と、ピエール号は答えた。『『魔力供給』の仕組みとかはアレンジしてますけど』
「……じゃ、『アレ』つけてやろう」
「『アレ』って何だ?」
「『アレ』は、『アレ』だよ」
「「「………………」」」
――これは、専門の空賊に訊いた方が早いパターンだ。
訊いた結果、判明した『アレ』の正体は……
「……『加速装置』?」
「へい、そのとおりで」専門の空賊はそう言って、仕組みを簡単に解説した図を見せた。「要するに、普通の推進装置より燃費は悪いけど、速く進むことができやす」
「そんなのがあるんだ……」
「これは、ウチの空賊団で独自開発したものなんで……必要なくなったら、回収させていただきやす」
「わかった……ピエール号、どう思う?」
『ぜ……ぜひ、その装置をつけてください!ワタクシ、その装置を、外観だけでも見てみたいです!』
――どうやら、全く抵抗がないらしい。
「……じゃあ、つけてもらおう」俺は、再び空賊に目を向けた。「取り付けには、どのくらい時間かかる?」
「今から作業に入れば、昼すぎには完了しやすね」
「では、今すぐ取りかかってくれ」
ソフィアの言葉を聞き、空賊は「へい」と言って、その場を去っていった。
「……な?ウチの空賊どもはすごいんだぞ?」
デュカが自慢している。
「……まあ、あれだけいりゃ、優秀な人材も何人かいるだろうな」
「他に何か、憂慮する点はあるか?」
モルガンがそう訊ねると、ずっと目を閉じていたカヤが、目を開いて反応した。
「彼らは、空賊は空賊なので……例えこちらに戦う意思がなくとも、軍や他の空賊が攻撃してくる可能性はあります」
「だよねぇ」と、ミィは頷いた。「まぁ、あの人たち、たぶんそれも自分たちで何とか解決できるような人たちだと思うけどぉ……」
「……それ、俺たちまで巻き込まれたりしないよな?」
ミライの言葉に、カヤは少し困った顔をした。
「20%くらいの確率で……『強行突破』しなければならない可能性はあります」
「あるんだ……」
「ですが、基本的には彼らが対応してくださるようなので、わたくしたちは『できるだけ早く月の神殿へ向かう』ことを優先して参りましょう」
――あと、心配なのが……
「……『ウェヌスでの妨害』か……」
どうやらスターリア、スカーレット、ファールの3人は、もう懲りて邪魔はしたくなくなっているのだが、シーラはまだ諦めてないらしく、ゾンビ軍団をウェヌスに放ち、街を大混乱に陥れようとする……という未来が視えていた。
「しかも、あの4人の中でシーラが一番強いリーダーですから、他の3人も命令されて、戦いに参戦する可能性もあります」
「……何か、かわいそう」
「星霊使いが出てきたらどうなるかわからんが、ゾンビ相手なら俺たちに任せてくれ!」
デュカはそう言って、胸を張った。
「何だかんだで、空賊たちに頼り切りになりそう」
「……ハハハ!」テンの言葉を聞いたデュカは、テンの肩を叩きながら言った。「いつか借りを返してくれる日を待ってるからな!」
テンが「いたーい……」と言いながら肩を押さえているのを横目で見つつ、デュカはダイニングから去っていった。




