361話 6月23日#38
俺やテンがピエール号に戻る前に、リアとソラは目を覚まして、自分の部屋で休んでいたらしい。
――ということで、全員揃った元々のメンバーに、モルガン、ソフィア、ミライ、カヤ、ミィが加わり、総勢10名の食事は、夜食とは思えないほど賑やかだった。
レイは、仲間たちの名前を順番に呼んだ。
「えっと、リアで……」
――リアは、機嫌が悪かった。目が覚めると自分が元の大きさ|(身長180センチくらい)に戻っていたショックで、すぐに魔法で体を小さくしようとした。
ところがそれをみんなに止められて|(そんなことで魔力使っている場合じゃない!)、今は拗ねていた。
「ソラで……」
――そういえば、なぜかミライが献身的にソラの世話をしていたようだ。愛想のないミライにしては珍しい行動だと、ソフィアは話していた。
「ミィ……」
――ミィとレイは初対面だ。レイは1トンのハンマーを使うと聞いても、「ふーん……」と反応が薄かった。
レイも魔法で、わりと重いものも持ち上げることができるから、なのかもしれない。
「カヤ……」
――まだそこまで親しい間柄ではなかったからか、レイの記憶からカヤの顔と名前は吹っ飛んでいた。
カヤは特に気にする風もなく、もう一度しっかり自己紹介をした。
「ソフィア……」
――ソフィアと出会ったのは少し前のことだったが、その時戦ったこともあり、『斧先生』と呼んでいた。
「モルガン……」
――モルガンは夜食に夢中で|(『月見そば』とかいう料理らしい)、レイの言葉を全然聞いてなかった。
「ミライ……」
――やはり、ミライのこともレイの頭からは吹っ飛んでいた。ミライに「今度は真面目に俺と戦え」と言われても、「ほーい……」と言っただけで終わった。
「『のうき……』、カイト……」
「……俺よりデュカの方が『脳筋』な気がするけどな……」
「……あと……」
レイは隣の席にいる、いつ名前を呼んでくれるかと期待の眼差しで自分を見つめている男を見た。
「……誰だっけ?」
「君……僕で遊んでない?」
テンはそう言って、レイの頬をむにっとつまんだ。
しかし先ほどとは異なり、テンに動揺している様子はない。
「……むう」レイはそう唸ると、テンの頬をつついて逆襲した。
テンは笑って手を離し、優しくレイの頬を叩くと、「そば食べよ♪」と言って、テーブルに向き直った。
「な、何、今の……!?」リアが衝撃を受けていた。「あ、あのアリエスと『野菜男』が、いちゃついてる……!!」
「……そういえば、リアちゃん少食だったよね?レイさんにちょっとわけてあげてよ」
「話、逸らさないで!」
「……何でもいいが、この『そば』という料理、卵をかけると美味いな」
「……ああ。モルガンさんにあげてもいいよ」
「あ、あたしだって、少しは食べるわよ!!」
俺はそばを食いながら、気になってちらっとテンの方を見た。意外にも、テンはレイの方ばかりを見ることなく、普通にそばを美味そうに食っていた。
でも、時々レイに話を振って、レイを『笑わせようと|(少なくとも、瞬きさせようと)』画策していた。そしてレイに「つまんない」と言われて落胆していた。
――とはいえ、どうもそれが2人の間でしか通じない『冗談』のようだった。テンがそこまで深刻に考えている様子はないし、レイもがっかりしているテンをフォローするつもりはないようだ。
――うわ。夫婦みたいになってる……?
「……むー。フォークだと食べにくいなあ……」
『今度どこかで『箸』を探して買ってきます!』
「……で、こんな食べ物、どこで手に入れたの?」
『セメレの市場で売ってました!』
「買い物するヒマがあったんだ……」
「お金はわたくしが払いましたので、心配なさらないでください」
「しかし、麺が淡白だから、しょっぱいつゆと合って美味だ」
「俺、そろそろ寝ていいか……?」
「……じゃ、残りはあたしが食べるぅ」
「やだ」
「……馳走になった」
「……何だか、真夜中でも騒がしい奴らだな……」
俺は、苦笑いをした。




