359話 6月23日#36〜ついに起きたけど……?〜
何がどうなってそうなったのかわからないが、とりあえず私は闇の中にいた。
でも、怖くはない。誰かが近くにいてくれているのはわかっていた。
何か温かいものがそばにあり、体と心をじんわりと温めてくれていた。
「……んー……」
――あ、目が覚めた。夢だったらしい。
でも、周囲は相変わらず真っ暗で、何も見えない。
「……んー……」
寝ぼけながら手を横にやると、何かが手に触れた。
「あ……ピアス……」
2つともあったので、2つとも火を灯した。
ランプが小さいので遠くまでは見えないが、何か見覚えのある部屋だった。
「ピエール号の……私の部屋……?」
サイドテーブルに置いてある本も、今寝ているベッドも、見覚えのあるものばかり。
「でも確か、変身できないとか言ってたような……?」
――何でだっけ?
その時、脚に何かが触れた。
――帽子だった。シルクハット。
「……んー……帽子……」
――何となく、見覚えがあるような、ないような……
寝ぼけながら帽子を取ったら、そこに人の顔があった。
白い髪で、きれいな顔の男の人がベッド脇の椅子に座り、ベッドに顔を埋めて気持ちよさそうに眠っている。
私はランプを近づけて、何となくその顔を見ていた。
「……んー……」
――あ。起きた。
「……何かまぶし……あれ?」
男の人が、こちらを見て固まっている。
「……レイさん……?」
今度はこちらに手を伸ばし、私の頬を軽く触った。
「……レイさん……レイさ……」
――突然、男の人が、飛び跳ねるようにして椅子から立ち上がった。
「やったーーーー!!!レイさんが、目を覚ましたーーーー!!!」
ものすごーーく大きな声で叫んで、飛んで、喜んでいた。
「やった、やったーー!!」
男の人は、はしゃいでその場でくるっと回ると、また私のところへ戻ってきた。
「よかったーー!またレイさんの元気な顔が見られるなんて……!!」
「……うるせえなあ」誰かが扉のところに立っている。「反対の端の部屋まで響いてたぞ」
「まあ、仕方がないんじゃないか?」別の誰かも顔を出した。「それだけ想い入れのある人なんだから……」
「……あんまりそういうこと、本人たちの許可なく言ってはいけないと思いますが……」
「へぇ?もしかして起きたのぉ?」
――続々と、人が集まってきた。
一部の人が持っているランプで何となく顔は見えるが、誰なのか思い出せない。
「……ま。これで『野菜男』の精神も安定するだろうな」
「……よかったね……」
「これで、全員揃ったわね!」
「おい、みんな!そこで突っ立ってんなら、中へ入ったらどうだ?」
最後に、精悍な顔の男の人が顔を出した。
「……な、いいだろ?」
「そうだね」白い髪の男の人はそう言って、椅子に座って私の顔を見つめた。「レイさん、よかった……僕、また会えて嬉しいよ……!!」
「………………」
私はぼーっと、男の人を見つめた。
「……レイさん?」
男の人も、私を見つめる。
「………………」
「………………」
「……………………誰?」
男の人は、あまりの衝撃で、椅子から転げ落ちた。
ピエール号には船室が12部屋あり、10人の仲間たちは1人1部屋ずつ割り当ててもらっています。




