358話 6月23日#35
太陽が地平線の下へ全部隠れるぎりぎり前に、俺たちは集合場所|(セメレの北の外れ)までたどり着いた。
そこには飛空艇『ピエール号』があり、甲板にミィの姿があった。
俺とテンが、モルガンの背中から甲板に下りると、ミィがこちらに駆け寄ってきた。
ミィは、俺たちの後ろを飛ぶ空賊とドラゴンの集団をぽかんと見つめた。
「無事帰ってきてよかったけど……あの人たちは誰ぇ?」
「説明は後でする!」
「デュカさん!『おひつじ座の石』を貸して!」
「あらよっと」
テンは、投げ渡された赤い『石』を器用に受け取り、船内へ通じる扉へと走り出した。
俺とミィも後を追った。
『テンさん!レイさんはリビングにいます!』
「わかった!」
テンはピエール号に返事をして階段を駆け下り、ほとんど扉を体当たりするようにして開けた。
「レイさん!!」
俺とミィは遅れて扉までたどり着き、中を覗いた。
ソファに寝ているレイの前で、テンが床に座っていた。
「レイさん!大丈夫だよ!『石』持ってきた!!」
「……あの、落ち着いてください」後ろの方にいたカヤが、恐る恐るテンに話しかけた。「あなたが『石』を持ってるんですよね?その状態でレイさんに触れればいいだけ……なんですけど……」
――テンは、説明を聞く前に、レイの手を掴んでいた。
「……あ。じゃあ、これでいいの?」
「ええ……あの、もう手を離しても……」
「待って!もう少し握っていたい!」
テンは、両手でぎゅっとレイの手を握った。
「レイさん……僕帰ってきたよ……お願い。早く目を覚まして……」
「……ウザ」何か、心ないことを言った人がいた。
ミィがミライを殴ろうと、ダイニングへ近づいていくのをちらっと見てから、俺は再びレイとテンの方を見た。
「……ねえ。いつ目を覚ますの?」テンはカヤの方を振り返った。
「わりとすぐ……のはずなんですけど……」
――目を覚ます様子がない。
『……あ。今、魔法の効果が切れちゃいました……』
ピエール号が、悲しそうに言った。
「……レイさん……」
テンが落ち込んでいるのを見ながら、俺は「あれ?」と首を傾げた。
「……なあ、テン」
「何……?」テンは、今にも泣きそうな顔で、ギロッとこちらを睨んだ。
「レイ……寝てるんじゃね?」
「寝てる……?」
「ああ。普通に眠っている」
俺はそう言いながら近づき、レイの頭を軽く小突いた。
――レイが小さく「うーん」と唸った。
それを見て、テンは少し落ち着いたようで、レイが息をしているのを確認すると、レイの頬を優しくつついた。
レイはまた「うーん」と唸った。
「……ホントだ」
リビングにいた一同が、安堵のため息をついたのが聞こえた。
「生きてる、息してる……よかった……!」
レイの手の甲を自分の頬に当てながら、テンは涙を流していた。
間に合ってよかったね、テン!




