357話 6月23日#34
「え、えっと……ど、どういうことですか……?」
「約束が違う……」
俺とテンは、そろそろ帰らないと時間に間に合わないと焦っていたが、空賊のキャプテン、キーラに『石』を渡さないと言われてしまった。
――が。
「……あ、悪い」キーラは手を振った。「言い方がまずかった。『ここで直接は渡さない』という意味だ」
「「え?」」
俺とテンの声がハモった。
「……私たちが、君たちと一緒に行く」
「「「え?」」」
デュカの声もハモった。
「……デュカ。お前の隊を先行させて彼らの後ろにつかせる。すぐに準備しろ」
「え、でも……あ、はい、キャプテン!」
デュカはキーラの顔を見ると、すぐにいなくなってしまった。
「……ちょっと待って」俺は混乱していた。「なぜ、そういうことに……?」
「……シーラに、一泡吹かせたい」
「シーラに……?」
「シーラは私の双子の姉だ……といっても、互いに思い入れはない。むしろ、敵視しているくらいだ」
――双子……それで、こんなに雰囲気が似てるのか……
「そもそもの原因は、私とシーラの魔力量が極端に差があることなんだが」
「もしかして、あんたは魔法が使えないのか……?」
「……まあな」
キーラは俺の質問に頷くと、モルガンの方へ向き直った。
「……どうだ?ここの女王になるか?」
「悪い提案ではないが、ずっとここにいても、つまらなそうだな」
モルガンは、身につけていたネックレスを外し、テーブルに投げつけた。
「……我も、着替えたら行く」
「……おう。ありがとな」
俺はモルガンの後ろ姿を見送った。
「『うお座の石』は、すぐに使うわけではないんだろう?」と、キーラは言った。「後で、私を含めた本隊が追いかける。私らが、あの『ゾンビ製造機』を黙らせる」
「『ゾンビ製造機』……」テンが、ツボに嵌ってニヤニヤしている。
「……そういうことなら、わかった」俺は椅子から立ち上がった。「協力を頼む」
「私についてきな。この島の出口まで案内する」
椅子から立ち上がりながら、テンはこそっと俺に耳打ちをした。
「……何か、すごいことになってきたね」
俺も、思わずニヤけた。
「ああ、そうだな」
――そんなわけで。
俺とテンはモルガン(ドラゴン)の背に乗り、空賊たちを乗せたドラゴンを後ろに連れて、ネプトゥヌス島から飛び立った。
太陽の位置を確認しながら、テンは言った。
「時間ないから、超特急で行こう!何か障害があっても、デュカさんの部下たちが対応してくれるって言うし」
「……あの後ろのドラゴンどもが、ついてこれない気がするが」
「……何言ってる」モルガンの隣に、デュカを乗せたドラゴンがやって来た。「俺たちは精鋭隊だ。レジェンダリのスピードに遅れをとることはない!」
「……その言葉、証明してみせろ!」
――モルガンがスピードを上げた。
俺とテンは煽られないよう、身を低くして鞍に掴まった。
「モルガンも、本気出せばすごいんだな!」
「当たり前だ!我を何だと思っている!?」
「伝説のドラゴン『レジェンダリ』でーす!」
テンの陽気な声を後ろで聞きながら、「きっとレイたちは、俺たちの元へ帰ってきてくれる」と、テンと同じように期待を寄せていた。
空賊たちを後ろに引き連れ飛んでいくモルガンと、その背中の鞍に乗っているカイトとテン……このシーンも結構好きです!本当に「何か、すごいことになってきた」感じがします。




