353話 6月23日#30〜仲間と孤独①〜
わたくしたち、代々の『かに座の星霊使い』には、未来を視る力があります。
『やぎ座の星霊使い』たちも予知能力はあるのですが、どうやらわたくしたちとは少し異なるところがあるようです。
少なくとも、ミライさんを見ている限り、『未来が多角的に見え、どの道を歩むべきか』ということを考えることはできないようです。
――というか、彼は完全に趣味のために使っていますね。
『未来を予知し、情報を整理して、より良い未来を切り拓くのに使う』というのは、とても大変で、エネルギーが必要です。
ですから、代々カンケルになった者は、『水の塔』の上に閉じ込もっているのです。
――ちなみにカイトさんたちには言いませんでしたが、ディアナの地下には5年分くらいの水が蓄えられています。なので、わたくしが『水の塔』にいなくても、しばらくは住人たちは水に困ることなく生活できます。
――それはさておき。
今回わたくしが取るべき行動について、未来予知でわかったことは、ほとんどありません。
『うお座の星霊使い』が、『石』を盗み出すこと。
わたくしが『石』を取り返しに行くこと。
そして、その同伴者として、月のか……あ、いえ、ピエールネックレスさんが必要だということだけ。
わたくしはとりあえず、『星霊界』にいるわたくしの先生に、協力を仰ぐことにしました。
でも、ピエールネックレスさんは『星霊界』へ行くことができないので、わたくしはある方法を使うことにしました。
『……『武器』を通して星霊と話をする!?』ピエールネックレスさんは驚いて言いました。『そんな方法があったんですか!?』
「ええ」わたくしは、学校の会議室を借りて、そこにある長テーブルにわたくしの『武器』、つまり『盾』を置きました。
『えー。でも、そんな便利な使い方をしているカンケルさんを見たことは……』
「本当は、星霊使いなら誰でもできるはずなんですが、たぶんもう忘れられた使い方なんでしょうね」
わたくしが、祈るように手を合わせていると、やがてわたくしの『先生』――かに座の星霊『カンケル』が、わたくしの声に応答してくれました。
「……カヤよね?」
「はい、先生」声が聞こえてきたので、私は盾に向かって話しかけました。「少し困っていることがありまして、そのことについて先生の意見をお聞きしたいと思ったもので……」
『……あー、ワタクシの声も聞こえますか?』
「どなた?」
『ピエールネックレスこと月の神です!』
「月の……カヤと一緒にいるの、ですか……?」
「はい」
わたくしがしっかりと答えると、先生は「なるほど」と相槌を打ちました。
それから10分くらいかかって、今の状況について、少し詳しく先生に教えました。先生は「なるほど」と何度も相槌を打って聞いていました。
「……月の神様の力を借りても、そこまでの情報しか手に入りませんでした。わたくしはこれから、どうしたらいいのでしょう?何かアイディアはありますか?」
「んー、そうねえ……」
先生はしばらく考え、こう言いました。
「……月の神様がいてわからないとなると、どんなに頑張っても未来を視ることはできないと思う……でも、ストレートに『ピスケスの家』に突撃するのも、違う気がするわね」
『おそらくワタクシと一緒に探すということなら、こちらの世界で探すことになります……ワタクシ、『星霊界』へ行けませんから!』
「……では、まずは相手のいる場所を突き止めますか」先生は言いました。「その方が今、どなたと一番会っていそうかわかる?」
「『てんびん座の星霊使い』でしょうか?」
『可能性は、なかなか高いですねー』ピエールネックレスさんは、私の首元で静かに紫色に光っていました。
「……と、言いますか、他にいない気がします」
『……ですね』
「そうですか」先生は、未来を視ているようです。「リブラは、数日間はおとなしくしているみたいですね」
『ワタクシの呪いが効いているんでしょうかね?』
「……そうですね……でも、その間に星霊使いに会っている様子はありませんね……」
――では、ピスケスは、1人で何かをしようとしているんでしょうか……?




