351話 6月23日#28〜乙女VS水瓶②〜
「……あ、メェはレイの元へ行くから、あとはよろしく」
戦いの輪から外れ、私たちの様子を傍観していたおひつじ座の星霊は、そう言って勝手に走って行ってしまった。
「「………………」」
私とアクアリウス――スターリア――は、互いにじっと睨んだ。
「「…………熱い」」
私もスターリアも、それぞれ防御魔法を展開しているはずなのだが、やはり星霊たちの力には及ばない。特に、アリエスには。
「……となれば、勝負をさっさとつけるか」
「……同意見だ」
――それから数分が経ち、勝負の行方は……
「『ノイズ・シャットアウト』!」
さっきから、スターリアはこの魔法しか出していない。
どうも、私のハチェット裁きの方が、彼女の『音』の攻撃の早さを上回っているようだ。私が一方的に攻撃している形になった。
「……くっ!」
魔法盾を張っても張っても私に壊されるため、スターリアはイライラしているらしい。
「……『モレンド』!」
足元に、紫色の煙のようなものが広がった。
――だが、私が高いところへ移動すれば、問題なかった。植物には効かないようだった。
しかも、私はスターリアの上を取れた。
「『グルーヴランス』!」
「『アイヴィクラッシュ』!」
見えない槍の突きと巨大な植物の蔓の一撃。2つの魔法がぶつかり合い、「バチン!」と大きな音がした。
「……チ!」
舌打ちをしたスターリアは、変わった魔法を使った。
「『エンドレス』!」
――そして、なぜかギターで演奏を始めた。
「……ん?」
演奏は10秒くらいで終わった。
私は身構えたが、何かが起こる気配はない。
「………………?」
――すると、突然あたりに音楽が鳴り響き始めた。
先ほどの10秒の即興演奏が、大音量で聞こえてきた。しかも、何回でも繰り返される。
しかし、あまりのうるささに耳を塞ごうとしたが、腕が動かなかった。
「………………?」口も動かない。
やがて私は、あることに気づいた。
――体が、音楽に『乗っ取られて』いる……
先ほどの『10秒の演奏』。
その間に起こした私の行動は、斧を受け取ったことと、スターリアの方を振り向いたこと。
――その動作が、体が勝手に、何度も動いて『永久に』続いていく。
その間は、スターリアのやりたい放題……になるかと思ったが、どうも大技をかけるだけにしたようだ。
「『フィーネクラッシュ』!!」
頭上の逆さの水瓶から高圧の音波が放たれ、私は地面に叩きつけられた。
「…………くっ!」
起き上がると、横で義母も地面に突き落とされていたことに気づいた。
私はよろけながら、スターリアの様子を見つめた。
先ほどの演奏は、もう止まっていた。たぶん、私がもう、行動を繰り返せる体勢になっていないから、自動的に止んだのだと思う。
「……なるほど」私はスターリアに向き直った。「だが、同じ手は、二度と食わないぞ」
「……知ってる」スターリアは、ギターを構えた。「元々、この魔法は『1回』しか使えねえ。2度目は対策を取られるからな……」
「では、なぜ今使った?」
「……水瓶が、攻撃できるように」
ふと上を見ると、真下を向いていたはずの水瓶が、斜めの方を向いている。
その方向を見ると、金の毛で覆われた羊が、女性を背中へ乗せて運ぼうとしている姿があった。
「「この……!!」」
私と義母は同時に蔓を伸ばし、水瓶を下方向へ引っ張った。
水瓶は、再び真下を向いた。
「『フィーネクラッシュ』!」
そして再び、高圧力の音波が私たちを襲った。
――ドーーーーン!!!!




