350話 6月23日#27〜乙女VS水瓶①〜
「「『ハーバルチューブ』!!」」
私と義母が同時に叫ぶと、目の前に蔓を編み込んだようなチューブ状のものが出来上がった。人は楽々通れるし、母上でも、四つんばいになれば中に入れる。
――あと、いい香りがする。
私はさっさと通り抜けようと、『チューブ』に近づき……
「『ビーンストーク』!」
義母が叫ぶ声に振り返ると、何かが私にぶつかり、そのままチューブの中へ押し込んだ。
しかもその『何か』は、先端に張り付いている私をぐんぐんチューブの奥へと押し込んでいく。
「……義母……」私は『何か』の上に登りながら、つぶやいた。「ひとこと言ってから魔法を使ってくれ……」
「ごめんなさい」義母は、このどこまでも伸びる『豆の茎』に、抱えるようにしがみついていた。「でも歩いていたら、たどり着く前に焼けそうで」
『ビーンストーク』に掴まりながら『ハーバルチューブ』の中を進んでいくと、やがて大きなもこもこした動物の毛が見えてきた。
「あれが『おひつじ座の星霊』か……?」
「……うーん」義母は首を傾げた。「ちょっと違う気がする……あれは……」
――『ウールプロテクション』。
レイが使っていた魔法だ。
「ちょっと、羊毛の先へ進んでみましょう」
義母はそう言うと、『ハーバルチューブ』と『ビーンストーク』の向きを変えた。
そして、羊毛に沿って進んでいくと、その先で戦いが起こっていた。
「『フィーネクラッシュ』!!」
戦いの中心にいる人間の女がそう叫ぶと、上空に水瓶の姿が見えた。
「わたくしは水瓶を何とかします」
「……私は人を何とかする」
『ハーバルチューブ』は、女の周りを取り囲んだ。
私と義母は『チューブ』の中から飛び出し、それぞれ下方向と上方向に向かっていった。
直後、
――ズドーーーン!!
何か強い力が、私を襲った。
私は地面に落ちた。
「くっ……!」
私は何とか立ち上がり、ちらりと上を見上げた。
水瓶が空中で逆さになって、真下にいる私の方に口を向けていた。そして、私の義母がその水瓶を抱えて、何かをしようとしていた。
ふと前を見ると、アクアリウスの星霊使いも、上を見上げていた。
「あれ、誰だ?」
「あれは、私の『義母』だ」私は星霊使いに近づいた。「貴様の度重なる妨害を裁きに、ここまで来た」
「……てめえは?」
「おとめ座の星霊使いのソフィアだ」
「ふーん……」訊いておきながら、あんまり興味なさそうだな。「……ま、てめえが何をしても、アタシに当たることは……」
アクアリウスの周囲を、私の植物が取り囲んだ。絡みついた蔓が上に向かってたくさん伸びているが、そのうちの6本の蔓は、それぞれが小斧に巻き付いている。
その6本の蔓を動かしてハチェットで斬るような動作をすると、アクアリウスは驚いて飛び退いた。
――水瓶の星霊の魔法で守られているはずの自分が、危うくハチェットに斬られそうになっている。
たぶん、そんなふうに驚いているのだろう。アクアリウスは空に向かって怒鳴った。
「……てめえ!なぜアタシを守ら……!」
「……自分を育ててくれた恩人に向かって『てめえ』はないだろ」
私は、2本の蔓にハチェットを投げさせ、それを掴まえて両手で構えた。
「……私は、恩知らずは嫌いだ」
アクアリウスは、キッとこちらを睨みつけた。




